新国立劇場演劇の新シーズンラインナップ発表、小川絵梨子演出「ピローマン」ほか

37

386

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

  • 179 183
  • 24 シェア

「新国立劇場 2024 / 2025シーズン 演劇 ラインアップ」発表会が、本日2月28日に東京・新国立劇場にて行われ、演劇芸術監督の小川絵梨子が登壇した。

「2024 / 2025シーズン 演劇 ラインアップ」より、演劇芸術監督の小川絵梨子。

「2024 / 2025シーズン 演劇 ラインアップ」より、演劇芸術監督の小川絵梨子。

大きなサイズで見る(全4件)

「2024 / 2025シーズン 演劇 ラインアップ」より、演劇芸術監督の小川絵梨子。

「2024 / 2025シーズン 演劇 ラインアップ」より、演劇芸術監督の小川絵梨子。[拡大]

「2024 / 2025シーズン 演劇」には小川演出の「ピローマン」、船岩祐太が構成・上演台本・演出を手がける「テーバイ」、上村聡史演出「白衛軍 The White Guard」、柳沼昭徳が演出するこつこつプロジェクト Studio公演「夜の道づれ」、さらにシリーズ「光景-ここから先へと-」にはVol.1にブルノ国立劇場ドラマ・カンパニーによる「母」、Vol.2に桑原裕子演出「ザ・ヒューマンズ-人間たち」、Vol.3に蓬莱竜太作・演出「消えていくなら朝」がラインナップされた。

「ピローマン」について小川は「新国立劇場ではない劇場で、実は10年ほど前に一度演出したことがあります。今回はコンセプトなどを一新した形で上演します」と説明。「コロナ禍で演劇が止まったときに、個人的な勉強会の場で『ピローマン』を取り上げました。その際、なぜ物語が必要なのか、物語の意義について考えたんです。今回の上演ではその点に重きを置いた上演になると思います」と語った。

「2024 / 2025シーズン 演劇 ラインアップ」より、演劇芸術監督の小川絵梨子。

「2024 / 2025シーズン 演劇 ラインアップ」より、演劇芸術監督の小川絵梨子。[拡大]

「テーバイ」は新シーズン唯一の新作で、演出の船岩は新国立劇場に初登場となる。本作について小川は「私が芸術監督に就任して以来続けている、『こつこつプロジェクト』から上がってきた作品です。1年以上の“こつこつ”を続けてきた作品を、さらに稽古を重ねて上演します」と説明した。

「白衛軍 The White Guard」は20世紀ロシアの作家ブルガーコフの作品。「キーウを舞台に、ある一家の物語が描かれます。戦争や侵略などあらゆる名のもとで行われている破壊活動が、個人の思いや命を潰していくということを描いており、昔の作品ではありますが現代につながっていく作品です」と小川は真摯に語る。

「こつこつプロジェクト Studio公演」と銘打たれた「夜の道づれ」については「戦後日本で甲州街道を歩く、この歩みということがキーワードになっている作品です。演出は新国立劇場で初演出の柳沼さん。このStudio公演も、第2期の『こつこつプロジェクト』の延長線上にある公演となり、普段の公演よりもやや小規模に、デザインや舞台美術は少し簡素になる代わりに、少し格安なチケットでご覧いただける作品となります」と話した。

「2024 / 2025シーズン 演劇 ラインアップ」より、演劇芸術監督の小川絵梨子。

「2024 / 2025シーズン 演劇 ラインアップ」より、演劇芸術監督の小川絵梨子。[拡大]

シリーズ「光景-ここから先へと-」は、登場人物がほぼ家族だけという作品群となる。小川は「家族を描いた作品はたくさんありますが、登場人物が家族のみというのは珍しく、それが切り口の1つではあります。ただ、家族がテーマというよりも、家族を通して社会の世相や問題と向き合い、未来に向けて何を考えていったら良いかということをテーマにしたいと考えています」とシリーズに込めた思いを語る。

1作目の「母」はチェコのブルノ劇場からの招聘公演となる。小川は先日、ブルノ劇場を訪れたことを振り返り、「もともとチェコの演劇が大好きで、現地ではブルノ劇場の芸術監督たちとお話しさせていただきました。チェコは政治的、歴史的にもさまざまな変遷を経てきましたが、今後はチェコの作品を大事にしていきたいというお話を聞き、刺激を受けました。公演の際には芸術監督もいらっしゃる予定なので、そういったお話もぜひ改めて伺いたいと思っています」と意欲をのぞかせた。

2作目の「ザ・ヒューマンズ-人間たち」については、その魅力を「とても不思議な作品」と表現。「家族であろうと共有し得ない、打ち明けられない個人のそこはかとない不安がこぼれ出すような作品となっています。アメリカなどでは評価が高い作品で、作者のスティーヴン・キャラムさんご自身の脚本・監督により映画化もされています」と続けた。

3作目の「消えていくなら朝」は2018年に新国立劇場に書き下ろされ、当時の宮田慶子演劇芸術監督が演出し、高い評価を得た作品。今回は蓬莱自身の演出で立ち上げられる。なお本作のフルオーディションは現在進行中で、今後キャストが決定する。

プログラム全体について、小川は「来シーズンも新国立劇場に初登場の演出家がいらっしゃいますが、今後も若手の作り手の積極的な登用を積み重ねていきたいと思っています。また今回Studio公演を新たに実施するように、『こつこつプロジェクト』やフルオーディション企画、またプレビュー公演などにも引き続き取り組んでいきたいと思います」と抱負を語った。

この記事の画像(全4件)

2024 / 2025シーズン 演劇 ラインアップ

「ピローマン」

2024年10月8日(火)~27日(日)
新国立劇場 小劇場

作:マーティン・マクドナー
翻訳・演出:小川絵梨子
出演:成河亀田佳明斉藤直樹松田慎也大滝寛那須佐代子

「テーバイ」

2024年11月7日(木)~24日(日)
東京都 新国立劇場 小劇場

原作:ソポクレス「オイディプス王」「コロノスのオイディプス」「アンティゴネ」
翻訳:高津春繁
構成・上演台本・演出:船岩祐太
出演:植本純米加藤理恵久保酎吉池田有希子木戸邑弥高川裕也藤波瞬平、國松卓、小山あずさ、今井朋彦

「白衛軍 The White Guard」

2024年12月3日(火)~22日(日)
東京都 新国立劇場 中劇場

作:ミハイル・ブルガーコフ
英語台本:アンドリュー・アプトン
翻訳:小田島創志
演出:上村聡史
出演:村井良大前田亜季上山竜治池岡亮介石橋徹郎内田健介、前田一世、小林大介大場泰正大鷹明良 / 今國雅彦、山森大輔、西原やすあき、釆澤靖起駒井健介武田知久、草なぎ智文、笹原翔太、松尾諒

こつこつプロジェクト Studio公演「夜の道づれ」

2025年4月
東京都 新国立劇場 小劇場

作:三好十郎
演出:柳沼昭徳
出演:石橋徹郎、金子岳憲林田航平、峰一作、滝沢花野

シリーズ「光景-ここから先へと-」Vol.1「母」

2025年5~6月
東京都 新国立劇場 小劇場

作:カレル・チャペック
演出・上演台本:シュチェパーン・パーツル
字幕翻訳:広田敦郎
出演:ブルノ国立劇場ドラマ・カンパニー

シリーズ「光景-ここから先へと-」Vol.2「ザ・ヒューマンズ-人間たち」

2025年6月
東京都 新国立劇場 小劇場

作:スティーヴン・キャラム
翻訳:広田敦郎
演出:桑原裕子

シリーズ「光景-ここから先へと-」Vol.3「消えていくなら朝」

2025年7月
東京都 新国立劇場 小劇場

作・演出:蓬莱竜太
出演:2024年2・3月実施予定のオーディション合格者

「こつこつプロジェクト-ディベロップメント-」第3期

参加演出家:栗原崇、鈴木アツト、柳沼昭徳

ギャラリープロジェクト

  • トークセッション
  • ワークショップ
  • 公演ガイドツアー
全文を表示

※初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

読者の反応

Lie Kato @vi729

数年かけて稽古を重ねてきた『テーバイ』、2024年11月ついに新国立劇場にて上演です。みなさま予定に入れておいてくださいませ。 https://t.co/ygwP4JbH0Y

コメントを読む(37件)

関連記事

小川絵梨子のほかの記事

リンク

あなたにおすすめの記事

このページは株式会社ナターシャのステージナタリー編集部が作成・配信しています。 小川絵梨子 / マーティン・マクドナー / 成河 / 亀田佳明 / 斉藤直樹 / 松田慎也 / 大滝寛 / 那須佐代子 / 船岩祐太 / 植本純米 の最新情報はリンク先をご覧ください。

ステージナタリーでは演劇・ダンス・ミュージカルなどの舞台芸術のニュースを毎日配信!上演情報や公演レポート、記者会見など舞台に関する幅広い情報をお届けします