尾崎世界観「二度とないからこそ、またやりたい」柳美里と届けた野外公演「JR常磐線夜ノ森駅」

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2015

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「『JR常磐線夜ノ森駅』柳美里×尾崎世界観」が、昨日8月7日に福島・富岡町 夜の森公園周辺で開催された。

「Voice on Voice『JR常磐線夜ノ森駅』柳美里×尾崎世界観」より。(撮影:鈴木竜一朗)

「Voice on Voice『JR常磐線夜ノ森駅』柳美里×尾崎世界観」より。(撮影:鈴木竜一朗)

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左から柳美里、尾崎世界観。(撮影:鈴木竜一朗)

左から柳美里、尾崎世界観。(撮影:鈴木竜一朗)[拡大]

これは、現在開催中の「常磐線舞台芸術祭 2023」の一環で、常磐線沿線の駅舎周辺でアーティスト同士がコラボレートする「Voice on Voice」の1プログラム。常磐線夜ノ森駅をテーマにした「JR常磐線夜ノ森駅」には、同芸術祭のプログラムディレクターを務める柳美里と、クリープハイプ尾崎世界観が出演し、柳の朗読と尾崎の弾き語りによる一夜限りの公演が披露された。

「Voice on Voice『JR常磐線夜ノ森駅』柳美里×尾崎世界観」より。(撮影:鈴木竜一朗)

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尾崎は、開催を終えて「野外の演奏では、雑音が混ざると音が壊れていく感覚があるが、今日はいろいろなものがこのイベントに溶け合っていくようだった。もう二度とないからこそ、またやりたいと思う。ここで演奏できたことをとても嬉しく思う」とコメント。

「Voice on Voice『JR常磐線夜ノ森駅』柳美里×尾崎世界観」より。(撮影:鈴木竜一朗)

「Voice on Voice『JR常磐線夜ノ森駅』柳美里×尾崎世界観」より。(撮影:鈴木竜一朗)[拡大]

「Voice on Voice『JR常磐線夜ノ森駅』柳美里×尾崎世界観」より。(撮影:鈴木竜一朗)

「Voice on Voice『JR常磐線夜ノ森駅』柳美里×尾崎世界観」より。(撮影:鈴木竜一朗)[拡大]

柳は、東日本大震災で被害を受けた福島県相双地区に訪れた際に、最初に降り立った場所が夜ノ森であると述べつつ、「夜ノ森地区の帰還者は、8月1日現在71人で、震災前の3886人の2%です。帰還された方、帰還が叶わない方、帰還を諦め避難先で生きていくことを決断された方、帰還を願いながら避難先で亡くなってしまった方──、夜ノ森の住民の方々の傷ついた心を感じながら、『復興』『絆』『がんばろう』『応援』『3.11を忘れない』というような言葉から限りなく遠ざかり、声を発し、声を聴くという行為だけで束の間の関係を結ぶ、そこから生まれるかもしれない何かを大切にしてくれる人はいないだろうか、と考えた時、尾崎世界観さんが浮かびました。尾崎さんの小説や詩は、発した途端に嘘に近づく言葉を疑い抜きながら、時には自分の言葉に舌打ちし、唾を吐き、握り潰しながら、言葉に裏打ちされている沈黙の圧を感じながら、それでも言葉で呼びかける言葉への信があるからです」と経緯を明かす。「夜ノ森の桜の木々に見守られながら、12年後の夜ノ森公園に、尾崎世界観さんと2人で立ち、2人の声が溶け出して夜ノ森の風景となるような瞬間を感じることが出来た、特別な時間でした。夜ノ森の桜との約束を果たすことが出来て、うれしいです」と思いをつづっている。

「常磐線舞台芸術祭 2023」は8月13日まで。

なおステージナタリーでは、「常磐線舞台芸術祭 2023」の特集記事を展開中。フェスティバルコーディネーターの平田オリザ、実行委員の小松理虔、プロデューサーの鄭慶一が芸術祭への思いを語っている。

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尾崎世界観コメント

今日は演者でもあったが、お客さんでもあった。

自分でも見ていたというか、普段ではあまりない感覚で、お客さんにも満足してもらえたという実感がある。

野外の演奏では、雑音が混ざると音が壊れていく感覚があるが、今日はいろいろなものがこのイベントに溶け合っていくようだった。

もう二度とないからこそ、またやりたいと思う。ここで演奏できたことをとても嬉しく思う。

柳美里コメント

福島県の相双地区に、わたしは震災以前には訪れたことはありませんでした。2011年4月21日の朝、当時暮らしていた神奈川県鎌倉市でテレビのニュースを観ていたら、官房長官が、翌22日零時をもって原発から半径20km圏内を「警戒区域」に指定し、立ち入りを禁止すると発表しました。わたしは、全ての考えや不安を脇に置いて、相双地区に向かうことにしました。

いったん「警戒区域」として閉ざされたら、30年、40年は圏内に入れないかもしれない。自分の目で見て、自分の足で歩かなければ、この地域やこの地域の方々と関わることは出来ないと思ったからです。どこに向かおうかと考えた時、桜の名所で有名な夜ノ森が浮かび、桜に会いに、わたしは車で富岡町へと向かいました。

わたしが相双地区でいちばん最初に降り立った場所が、夜ノ森です。満開の桜並木の下を歩き、夜ノ森公園を一周し、桜を全身で感じました。今回最後に朗読したのは、2011年4月に書いた夜ノ森の桜についての文章です。

夜ノ森地区の帰還者は、8月1日現在71人で、震災前の3886人の2%です。

帰還された方、帰還が叶わない方、帰還を諦め避難先で生きていくことを決断された方、帰還を願いながら避難先で亡くなってしまった方──、夜ノ森の住民の方々の傷ついた心を感じながら、「復興」「絆」「がんばろう」「応援」「3.11を忘れない」というような言葉から限りなく遠ざかり、声を発し、声を聴くという行為だけで束の間の関係を結ぶ、そこから生まれるかもしれない何かを大切にしてくれる人はいないだろうか、と考えた時、尾崎世界観さんが浮かびました。

尾崎さんの小説や詩は、発した途端に嘘に近づく言葉を疑い抜きながら、時には自分の言葉に舌打ちし、唾を吐き、握り潰しながら、言葉に裏打ちされている沈黙の圧を感じながら、それでも言葉で呼びかける言葉への信があるからです。

夜ノ森の桜の木々に見守られながら、12年後の夜ノ森公園に、尾崎世界観さんと2人で立ち、2人の声が溶け出して夜ノ森の風景となるような瞬間を感じることが出来た、特別な時間でした。

夜ノ森の桜との約束を果たすことが出来て、うれしいです。

「『JR常磐線夜ノ森駅』柳美里×尾崎世界観」

2023年8月7日(月)※公演終了
福島県 富岡町 夜の森公園周辺

出演:柳美里尾崎世界観

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けんちゃんママ @fukushima_akita

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