題名の由来は愛猫のあくび?KERA・緒川たまきらが次回作「眠くなっちゃった」を語る

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ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)と緒川たまきによるケムリ研究室の次回作「眠くなっちゃった」に向けた取材会が、5月下旬に東京都内で行われた。

左からケラリーノ・サンドロヴィッチ、水野美紀、野間口徹、緒川たまき。

左からケラリーノ・サンドロヴィッチ、水野美紀、野間口徹、緒川たまき。

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これは、今年10・11月に東京・世田谷パブリックシアターほかで上演される、ケムリ研究室の第3弾。取材会にはKERAと緒川のほか、出演者の水野美紀野間口徹が出席した。

ケムリ研究室no.3「眠くなっちゃった」ビジュアル

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「眠くなっちゃった」では“近未来を舞台にした大人のための寓話”が展開。KERAは本作の内容について「ジャンルは近未来SFですが、寓話的という意味ではケムリ研究室の『ベイジルタウンの女神』と共通します。でもあのときはコロナ禍で『つらい話を作りたくない』という気持ちがあった。コロナ禍で揉まれた3年間は演劇人にとって大きな出来事でしたし、自分もこの期間を経てものの見方が変わりました。今は『ベイジルタウンの女神』ほど甘く優しい物語を提示しようとは思っていません」と話す。緒川も「公演の規模感は『ベイジルタウンの女神』と近いですが、目指すトーンは真逆」「レトロフューチャーというか、少し前の時代の人が考えた未来像がベースになりそう。人生には酸いも甘いもありますが、今回は酸っぱい部分が多くなると思います」と構想を述べた。

「眠くなっちゃった」というタイトルの由来は、KERAと緒川の愛猫・ごみちゃんがあくびをしたときに、2人がごみちゃんに「あ、眠くなっちゃった?」と声をかけたことだという。緒川は「猫は寝ることを大切に生きていますし、我々人間もまた眠くなります。だから『寝ていいよ、大事なことだから』と肯定する意味で、私たちは1日に何回も『眠くなっちゃった』と口に出しています」と話し、「一見するとSFから遠いフレーズですが、いろいろな意味に取れるし、このシンプルさは良いと思いました」と、タイトル決定の経緯を説明した。

左からケラリーノ・サンドロヴィッチ、水野美紀、野間口徹、緒川たまき。

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KERA作品に参加して以来、不条理演劇に興味を持つようになったと言う水野は「KERAさんと同時代に生まれ、KERAさんが書いた掛け合いを演じられるのが幸せ。KERAさんとの出会いがなければ今の自分はないし、勝手に師匠だと思っています」と言葉に力を込める。野間口は「水野さんにマウントを取るわけじゃないんですが……」と記者の笑いを誘いつつ、オーディション形式の舞台「ラフカット」でKERAが作・演出をするという情報をキャッチした際、そのとき決まっていたほかの企画をキャンセルして参加したというエピソードを披露し、「僕にとってもKERAさんは師匠です!」と熱く語った。

ケムリ研究室の作品の魅力を尋ねられると、野間口は「総合芸術だなと思います。『砂の女』は開始5秒で『やられた』という衝撃があった」と述べ、「今回オファーをいただいて『自分に応えられるのかな』という不安はありましたが、それよりも出演したい気持ちが勝りました」と改めて出演の喜びを口にした。

水野はKERAと緒川の関係について「信頼関係がすごい。緒川さんは『ベイジルタウンの女神』で膨大なセリフ量の稽古をこなしながらKERAさんと台本を考え、美術や衣裳の打ち合わせにも参加していましたが、ピリピリした姿を見たことがない。KERAさんとタッグを組めるなんて、やはりとてつもない人」と言及し、「うちの場合、夫婦でもの作りなんて考えただけで無理!(笑) うらやましいくらい感覚が合うお二人の作品に出られてうれしい」と笑顔を浮かべた。

KERAは「って言ってるよ」、緒川は「恥ずかしい(笑)」と、少しはにかんだ様子で水野の言葉を受け止める。KERAは「1人ならやらない作品や、『踏み込むべきではない』と勝手に自制していた領域にも、緒川さんが背中を押してくれるおかげで踏み出せています。『砂の女』は特に顕著でした。ケムリ研究室では守りに入らず『まあ良いからやってみよう』と思えています」と緒川に視線を送る。

左からケラリーノ・サンドロヴィッチ、水野美紀、野間口徹、緒川たまき。

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緒川も「KERAさんは、ケムリ研究室を始めた当初と比べると、苦手要素への取り組み方が変わってきている」と話し、「『ベイジルタウンの女神』やKERA・MAP『しびれ雲』は幸せな話でしたが、結末で物語をひっくり返さずに幸せなまま終わらせるのは、KERAさんなりの冒険だったと思う」と分析。続けて「KERAさんは、苦手なものをあえてやるという楽じゃない状態を面白がっていることがある。(出演者の)皆さんにとってもそんなKERAさんは新鮮だと思うし、そこで生まれたエネルギーが渦になって舞台で結実すれば素敵ですよね。だから“研究”という言葉が似合うと思います」と思いを口にした。

KERAと緒川のコメントを聞いた水野からは「良いなあ……私も緒川さんに人生をプロデュースしてもらいたい」と感嘆のため息が漏れ、取材会場は和やかな笑いで包まれる。これに対してKERAは「切羽詰まったときは(緒川の)『絶対大丈夫』という言葉が、やっぱり力になるんですよね」と微笑みを浮かべた。

公演は10月1日から15日まで東京・世田谷パブリックシアター、20日から22日まで福岡・J:COM北九州芸術劇場 中劇場、26日から29日まで兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、11月4・5日に新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場で行われる。

なお、ケムリ研究室のKERAと緒川、武谷公雄によるイベント「ケムリ研究室・研究見学会2023~新作のためのキーワード『未来・喪失・革命』をなんとなく巡ってのリーディング&トーク~」が7月7・8日に東京・LOFT HEAVENにて開催される。

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ケムリ研究室no.3「眠くなっちゃった」

2023年10月1日(日)~15日(日)
東京都 世田谷パブリックシアター

2023年10月20日(金)~22日(日)
福岡県 J:COM北九州芸術劇場 中劇場

2023年10月26日(木)~29日(日)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

2023年11月4日(土)・5日(日)
新潟県 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:緒川たまき、北村有起哉、音尾琢真、奈緒、水野美紀、近藤公園、松永玲子、福田転球、平田敦子、永田崇人、小野寺修二、斉藤悠、藤田桃子、依田朋子 / 山内圭哉、野間口徹、犬山イヌコ、篠井英介、木野花

「ケムリ研究室・研究見学会2023~新作のためのキーワード『未来・喪失・革命』をなんとなく巡ってのリーディング&トーク~」

2023年7月7日(金)・8日(土)
東京都 LOFT HEAVEN

出演:ケムリ研究室(ケラリーノ・サンドロヴィッチ、緒川たまき)、武谷公雄

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※2023年9月30日追記:10月1・2日の公演は中止になりました。

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Keisuke Odagiri @harasu_onigiri

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