「透き間」は、アルバニアの代表的な作家イスマイル・カダレの小説「砕かれた四月」を出発点とした
開幕に際し山口は「上演時間は休憩なしの2時間半と長めですが、集中してみていただけるように工夫を凝らしてありますので、楽しんでもらえると思います。そして一度見ると、二度、三度と観たくなるのではないかと思います。そうやって見ていくうちに、どうすれば私たちは殺し合わずに、しかしクリティカルシンキングで生きていけるのか、ということに、思いを馳せてもらえるかもしれません」とコメントした。
愛知公演は本日5月14日のみ。その後、20日から22日までin→dependent theatre 2ndでも上演される。
山口茜コメント
「透き間」は、現代もアルバニアの山岳地帯に残る「しきたり」をめぐる人間ドラマです。家族のものが殺されたら、必ず殺し返さなくてはならず、拒むと村八分にされてしまいます。劇には出てきませんが、村八分になると、葬式、婚礼の出席禁止、小麦粉の貸し出し禁止、土地の耕作、木の伐採の禁止、断食を家庭内で課す、家の中に繋がれて自由に動けなくなる、武器の所持、外出の禁止などが言い渡されます。そういうしきたりが今もなお残っているということで、数年前の私は非常に驚いて、このしきたりをテーマにした小説「砕かれた四月」(イスマイル・カダレ著・平岡敦訳)に取り組み始めたわけですが、残念ながら昨今のニュースを見ていると、地球上では今もなお、たくさんの人が戦争や支配者による迫害、そしてその土地に根付いたルールによって、人権や命を奪われていることに気付かされます。もちろん日本でも。つまり過去の私には、そういった身近にある現実すら全く見えていなかっただけなのです。
人が殺されるのを見たこともないくせに、演劇の中で人を殺すなんて、という思いがずっとありました。でもそれは、私が、知らないだけでした。演劇を作る時にどうしても私が人を殺す表現を取り入れてしまうのは、やはり潜在的に、どこかで殺されている人と繋がっているからではないのかと最近よく思います。その声を拾いたいと思いました。
上演時間は休憩なしの2時間半と長めですが、集中してみていただけるように工夫を凝らしてありますので、楽しんでもらえると思います。そして一度見ると、二度、三度と観たくなるのではないかと思います。そうやって見ていくうちに、どうすれば私たちは殺し合わずに、しかしクリティカルシンキングで生きていけるのか、ということに、思いを馳せてもらえるかもしれません。
全てのスタッフ・キャスト、そして劇場の方々のおかげで、無事、開幕を迎えることができそうです。劇場でお待ちしております。
メニコン シアターAoi 芸術監督作品 名古屋・大阪二都市ツアー サファリ・P 第9回公演「透き間」
2023年5月14日(日)
愛知県 メニコン シアターAoi
2023年5月20日(土)~22日(月)
大阪府 in→dependent theatre 2nd
上演台本・演出:
作曲:増田真結
出演:芦谷康介、
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Miho Morioka 森岡実穂 @MoriokaM
前のと随分違うんだな、これも観たいがあとは大阪……ツイッターの下書きに消えた前回のメモよ(涙)。
サファリ・P「透き間」愛知で開幕、アルバニアに残る“しきたり”から命を考える(舞台写真 / コメントあり) https://t.co/J8L1uGHoo6