「誤解」が、10月4日から21日まで東京・新国立劇場 小劇場で上演される。
この9月に
ヨーロッパの田舎で小さなホテルを営むマルタとその母親。彼らは今の生活に辟易し、太陽と海に囲まれた国での生活を夢見て、客を殺し金品を奪っていた。ある日男性客が現れ、マルタと母親はいつも通り殺人計画を進めるが、彼には秘密があって……。なお新国立劇場のYouTube公式チャンネルでは、本作の顔合わせの様子が公開されている。
稲葉賀恵コメント
「誤解」はカミュが1942年から43年にかけて執筆した2作品目の戯曲です。カミュは本作を「暗い芝居」ではあるが「絶望的な芝居」ではないと述べました。私はこの作品を一読した時、「絶望的な運命」に対して抗おうとする登場人物達の力強いエネルギーを感じました。所謂「悲劇」と分類されるこの作品にはその他の作品を凌駕するエネルギーのぶつかり合いがあります。
「兄妹間の争い」「不条理な運命に対する抵抗」「殺人、自死に対する葛藤」「祖国からの逃亡と異国への憧憬」、一つ一つの素材がぶつかり合う力はなぜこんなにも激しいのか。それは、どちらか片方が善い、悪いという訳ではなく、互いに正しく筋道が通っているからです。そして互いの側から見ると善であり同時に悪でもある。今日、白か黒か二極化し線引きすることの安易さ、恐ろしさを感じざるを得ない社会の中で、善悪というものは言わずもがな表裏一体であること、そしてそれらが互いに衝突することで起こる混沌とした、しかし大きなエネルギーの塊を演劇という表現を介して想像してみることが、本作を上演することの大きな意味だと私は思っています。
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