松井周&村田沙耶香の初共作をリーディング試演「思い描いた島の風景が見えた」

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1月11日に兵庫・城崎国際アートセンターにて、「城崎 松井周×村田沙耶香 リーディング試演会」が行われた。

「城崎 松井周×村田沙耶香 リーディング試演会」より。青柳いづみ。 (c)igaki photo studio (写真提供:城崎国際アートセンター)

「城崎 松井周×村田沙耶香 リーディング試演会」より。青柳いづみ。 (c)igaki photo studio (写真提供:城崎国際アートセンター)

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「城崎 松井周×村田沙耶香 リーディング試演会」より。青柳いづみ。 (c)igaki photo studio (写真提供:城崎国際アートセンター)

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本プロジェクトは、サンプルの松井周と作家の村田沙耶香が共に城崎に滞在し、新作を共同執筆するというもの。リーディングには、松井と初タッグとなる青柳いづみが出演した。

物語の舞台は、ある小さな島。そこにはポピ原人やポーポーの神様、“海のもん”と“山のもん”の住み分け意識など、古くから伝わる伝説や慣習がいくつもあるが、陸と花蓮、高城の幼馴染3人は、それをある程度は受け入れながらも、どっぷり染まるわけでもなく、気楽な中学生活を送っている。島には伝統的な祭りがあって、祭りの最終日の夜には選ばれた14歳以上の人間しか参加できない秘祭“モドリ”があった。陸はその年、初めて“モドリ”に参加することになっているのだった。

「城崎 松井周×村田沙耶香 リーディング試演会」より。青柳いづみ。 (c)igaki photo studio (写真提供:城崎国際アートセンター)

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星座の柄が描かれた着物姿で現れた青柳は、舞台中央に置かれた瀟洒な椅子に、まずはすとんと腰を下ろし、淡々と物語を読み始める。作品は物語部分と、インタビューや伝説、神話をまとめた部分と、いくつかの要素で構成されており、青柳はそのブロックを1つ読み終えるとチラリと客席を一瞥し、体勢を変えてまた作品を読み進めていく。約50分間のリーディングで、島の隠された素顔が少しずつ明らかになり、青柳の声にも緊迫感が増していく。果たして陸が“モドリ”で目にしたものとは……。

「城崎 松井周×村田沙耶香 リーディング試演会」より。左から編集者の山本充、松井周、村田沙耶香。 (c)igaki photo studio (写真提供:城崎国際アートセンター)

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リーディングのあとには松井と村田によるトークも行われた。本プロジェクトについて松井は、「初めて村田さんとお話したときから双子の片割れのような感じと言うか、村田さんと僕は人間の捉え方が近い気がして、ぜひ一緒に作品を作ってみたいと思っていました」と思いを述べる。城崎で滞在制作する以前に、ある島で合宿も行っており、その体験から島を舞台にした物語にすることが決まったと説明した。具体的な作業としては、ある架空の島の縄文時代から未来までの年表と地図をそれぞれが作り、キーワードとなる言葉をピックアップして、城崎で一気に書き進めた。村田は「腱鞘炎になるまで書きました(笑)」とテープが巻かれた手を見せて、「書いたばかりの、まだ誤脱字もあるような原稿を人にお見せするなんて、こんな羞恥プレイはしたことがなかった!」と思いを明かすと、松井も「作家の“しぼりたて生”を見ることは普段ないので、本当に新鮮でしたね」と笑顔を見せた。

「城崎 松井周×村田沙耶香 リーディング試演会」より。左から編集者の山本充、松井周、村田沙耶香。 (c)igaki photo studio (写真提供:城崎国際アートセンター)

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終演後、松井と村田、青柳にそれぞれの手応えを聞いた。松井は「(共同創作は)賭けだったけれど、想像力のままに書いたものを作品として立ち上げるということが、この合宿だからこそできたんだと思います。そして今日青柳さんのリーディングを観て、自分たちが思い描いていた島の風景と同じものが、見える感じがしました」と自信をのぞかせる。村田も「最初は(作品の)融合は無理かも、と思ったけれど、青柳さんの力が本当に大きくて、1つのお話としてできたことに感動しました。また私は自分の言葉が舞台上で、まるで違うもののように存在することが初めての体験だったので、その意味でもものすごく感動がありましたね」と笑顔で語る。公演前日に城崎入りし、そこで初めて作品を読んだという青柳は「さっき村田さんが羞恥プレイだとおっしゃいましたが、人の生まれたての言葉とか文字にクラクラしちゃって、私もすごく恥ずかしい気持ちになりました(笑)」と実感を述べた。

「城崎 松井周×村田沙耶香 リーディング試演会」トークより。村田沙耶香。(c)igaki photo studio、写真提供:城崎国際アートセンター

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松井と青柳がクリエーションを共にするのは、今回が初めて。松井は「青柳さんがやってきた演出家はみんなすごい人ばかり(笑)。だから自分の言葉が青柳さんにどう伝わるのか、どう響くのか最初はわからなかった」と率直に語る。青柳も「松井さんが、自分が一番嫌いな拷問はどういうものかを具体的に教えてくれて、『例えば自分がそういう状態に陥ったとして、自分で自分をコントロールできない状態に持って行ってしまって構わない』っておっしゃったんですけど、稽古ではその状態では発語できなかったんです。それがどういう状態なのかを考えていたら本番がもう始まっていました」と思いを明かすと、「いや、バッチリでしたよ」と松井が太鼓判を押し、村田も大きく頷いた。

なお今回共同創作された作品をベースに、2019年には村田による小説と松井演出による舞台を同時期に発表する計画だ。今後の展開について松井は「今回村田さんが書いていたのは現代の部分だったので、それより前のお父さんお母さん、あるいはおじいちゃんおばあちゃんの世代の話やポピ原人の話など書き進めていきたい。古代から未来までつながる話になりそうだと思っています」と語り、村田も「私の中でもポピ原人はキーワードとしてあるので、松井さんとは違った形になるとは思いますが、それがお話の中に深く関わってくると思います」と展望を述べた。

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「城崎 松井周×村田沙耶香 リーディング試演会」

2018年1月11日(木)
兵庫県 城崎国際アートセンター

出演:青柳いづみ

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