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アニマルなキャスティングが実現!森新太郎演出「イニシュマン島のビリー」

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「イニシュマン島のビリー」会見より。左から鈴木杏、古川雄輝、柄本時生。

「イニシュマン島のビリー」会見より。左から鈴木杏、古川雄輝、柄本時生。

「ビューティ・クイーン・オブ・リーナン」「ロンサム・ウェスト」ほかで知られるアイルランドの作家マーティン・マクドナーの戯曲「イニシュマン島のビリー」が、これまでもマクドナー作品を手がけている演劇集団 円の森新太郎演出により、3月25日から4月10日まで世田谷パブリックシアターにて上演される。その制作発表が、本日2月21日に行われた。

「イニシュマン島のビリー」は、「ハリー・ポッター」シリーズで人気を博したダニエル・ラドクリフが、2013年にロンドン・ウエストエンド、2014年にNY・ブロードウェイで主演し話題となった作品。舞台は1930年代半ば、アイルランドのアラン諸島にある孤島、イニシュマン島。そこには、2人の老婆と身体が不自由な甥のビリー、そして強烈な個性の持ち主である島民たちが暮らしていた。ある時、近くのイニシュモア島にハリウッドの撮影隊がやって来るというニュースを聞きつけたヘレンとバートリーの姉弟は、出演のチャンスを得ようと島を飛び出すことに。その話を聞いたビリーは自分も一緒に連れて行ってくれと言い出し……。

このたびビリー役を演じるのは、舞台「エンロン」「家康と按針」「俺たちの明日」などに出演した期待の若手・古川雄輝。ビリーの幼馴染ヘレンを鈴木杏、その弟バートリーを柄本時生、島のゴシップ屋ジョニー・パティーンマイクを山西惇、その母マミーを江波杏子が演じる。会見には出演者5名と演出の森新太郎が登壇し、始まったばかりの稽古の手応えや意気込みを語った。

会見冒頭でまず森は「この作品はコメディ、といっても観た方の心に何かを残すダークコメディですね。全編暴力に満ちあふれていますが、マクドナーの作品らしく、とんでもなくピュアなところも詰まっていてそこが最大の魅力。登場人物は皆、感情剥き出しで自分がやりたいことをどんどんやってしまう人間たちですが、今回はそれが実現可能な、とてもアニマルなキャスティングが実現しましたので(笑)、チーム一丸となってお客さんに泣いて笑ってもらおうと思っています」とコメントした。

古川は「2年ぶりの舞台で、かつ主演でプレッシャーを感じています。共演の方たちがみな素晴らしい方ばかりで、初めて本読みしたときは驚きました。圧倒されたというか……。でも共演の方たちの間で、がむしゃらにビリー役を演じたいなと思っています」と意気込む。

非常に過激なセリフも多く、暴力的な部分があるヘレン役を演じる鈴木は「森さんから、女性のモデルはあまり参考にならないと思う、と言われていて。あえて言うならジャイアンのイメージかなということだったので(笑)、今はそれを頼りに考えていこうと。これまで演じたことのないタイプの女の子で不安もありますが、特別な才能の塊のような共演者の皆さんの中で埋もれないように、ひるまずがんばりたいです」と語った。そんな姉から生卵をぶつけられるなど、常に暴力を振るわれ続ける弟役の柄本。「森さんからはバカな役だと言われていて。そのままでいいとも言われたんですけど(笑)、僕としてはもうちょっと頑張りたいとは思ってます」と語り、会場を笑いで包んだ。

森演出に憧れていたという山西は「森さんの演出を受けたことがある俳優仲間にリサーチしたらみんな『稽古が長い、細かい、でも楽しいよ』と言っていて。昨日初めて立ち稽古だったんですが、楽しかったことは事実ですが、僕は長いとも細かいとも感じなくて。森さんはとても俳優の生理を大事にしてくださり、そこにひと言ふた言足してくださる指示もしっくりきて、すごくやりやすかったです」と手応えを語る。また90歳でアル中の老婆役を演じる江波は司会者から「役のようにご自身がやめられないものはあるか」と質問されると「10年前に全部医者から止められてやめてしまったのでもう何もないけれど……それでも残っているものと言えば、生きていくことと、芝居をやらせていただくことかな」と答え、会場から拍手がわき起こった。

また司会者が本作の見どころのひとつにビリーとヘレンの恋の行方もあることに触れ、稽古場での古川と鈴木の印象について森に尋ねると「稽古が始まったばかりで2人ともまだ謎の存在ですが……声と体温を感じたところでは、スイートでビターな2人になるのではないかと(笑)。古川さんと鈴木さんは若くて体力があるので、稽古でがんばって作っていきたいと思います」と言葉に力を込めた。

会見では、芝居の1シーンを古川、鈴木、柄本の3人がリーディングで披露する時間も設けられた。島にハリウッドの撮影隊がやってくると聞いた3人が、雑貨屋で話をする場面。訥々とした話しぶりながら撮影隊への興味を隠せないビリー、自分は美人だから出演できると信じているヘレン、そんな姉に気圧されながらも時に鋭い言葉を挟む弟のバートリー。ほんの数分のシーンだが、3人の関係性が一気に立ち上がってくる迫力のリーディングで、会場は一気に芝居の雰囲気にのまれた。

リーディングのあと、古川と鈴木と柄本3人が登壇して行われた囲み取材では、それまで緊張した面持ちだった古川も、少しリラックスした表情を見せた。記者から互いの印象について尋ねられると、古川は「鈴木さんとは同い年なんです。でも僕がこの世界に入る前から(出演作品を)拝見していたので、先輩という感じ。柄本さんとは2回目ですよね」と2人に笑顔を向ける。続く柄本がしばらく沈黙してしまったため、古川に「印象ないんでしょ?」とつっこまれると「いやいや、またご一緒できてうれしいです。昨日の稽古で、森さんから言われたことにぱっと応じているのを見てすてきだなと」と慌てて発言。鈴木については「杏さんとは共通の友達が多くて、飲み友達という感じだったので、仕事で一緒になるのはちょっと気恥ずかしいです」と語った。鈴木は「古川さんはすごく素敵な声なので、深夜のラジオをやられたら、すごく心地よい眠りにつけそう!」と語ると、「いつかやりたいですね」と古川も笑顔で応じた。

またビリーがハリウッドを目指すエピソードにちなんで、古川自身も得意の英語力を生かして、ハリウッド進出を考えているかという質問については、「機会があればぜひ。日本の俳優が海外に進出ってなかなかないですけど、今後は視野に入れたいですね。海外で働くには頭の回転が速くてその場の指示に応じられないといけないので、引き出しの多い俳優になりたいです」と希望を語った。

「イニシュマン島のビリー」

2016年3月25日(金)~4月10日(日)
東京都 世田谷パブリックシアター
2016年4月23日(土)・24(日)
大阪府 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

作:マーティン・マクドナー
翻訳:目黒条
演出:森新太郎
出演:古川雄輝鈴木杏柄本時生山西惇峯村リエ平田敦子小林正寛藤木孝江波杏子

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