水瀬いのり、歌手活動10周年ツアーが横アリで完結！“想像していなかった10年”に思いを馳せて未来へ

水瀬いのりのアーティストデビュー10周年を記念したライブツアー「Inori Minase 10th ANNIVERSARY LIVE TOUR Travel Record」が神奈川・横浜アリーナでファイナルを迎えた。

2015年12月2日、自身の20歳の誕生日にアーティスト活動をスタートさせた水瀬。それから10周年を迎えるメモリアルな日に向け、水瀬はキャリア史上最大規模のツアーとして7都市で計8公演を実施した。横浜アリーナでの単独公演は過去にも行われたことがあるが、今回はセミファイナルを含む初の2DAYS開催となり、合わせて約2万人を動員。今年9月に同時リリースされたベストアルバム「Travel Record」と2ndハーフアルバム「Turquoise」の楽曲が、過去のライブをセルフオマージュした演出とともに披露された。「Travel Record（＝旅の記録）」というライブタイトルが象徴する通り、10年間のアーティスト活動の歴史を感じさせつつ、未来への決意を示すステージとなった。この記事では11月29日のセミファイナル公演の模様をレポートする。

1stライブをオマージュした演出と衣装

開演の時を迎えると、ステージセットの上段に水瀬のシルエットが浮かび上がる。2017年12月に開催された1stライブをオマージュした演出に観客の心が浮き立つ中、当時と同じくデビュー曲「夢のつぼみ」でパフォーマンスがスタートした。水瀬が身にまとう白の衣装も1stライブをオマージュしたもので、会場のファンに懐かしい思いやエモーショナルな感慨をもたらす。それと同時に、芯の強い歌声や生バンドによる盤石の演奏、鮮やかな映像演出など完成度の高いステージが水瀬のアーティストとしての進化と成長を示した。「Ready Steady Go!」では水色のペンライトを掲げる観客がもう片方の手にタオルを持ち、歌に合わせて勢いよく振り回す。さらに会場中が合いの手を息ぴったりに叫ぶたびに、心地よい一体感が生まれた。

序盤のMCで「今日が10年のすべてではない、というのは強調しておきたいと思います。今日は1ページにすぎない、でもその1ページでもそんなに重みがあるんだ、思いが詰まっているんだと感じられるライブにします」と丁寧に言葉を重ね、意気込みを述べた水瀬。その後、“いのりバンド”のメンバーを紹介するコーナーでも、水瀬の楽曲「Happy Birthday」をベースに、「笑顔が似合う日」「あの日の空へ」「コイセヨオトメ」も取り入れたインスト演奏が展開されるなど、アニバーサリーツアーならではの特別な演出がちりばめられた。

ターコイズブルーの衣装に着替えたのち、水瀬は2ndハーフアルバム「Turquoise」の収録曲を次々に披露し、アーティストデビュー10周年に際して湧き上がる情感を歌で伝えていく。「アニバーサリー」ではセンターステージに立ち、これまでの日々に思いを馳せつつ、客席の全方位に向かって手を振りながら柔らかな声を響かせた。また「My Orchestra」でも万感の思いを込めた歌が壮麗なサウンドとともに場内に広がった。

どうしてもなくしたくなかったのは“好きな気持ち”

水瀬が10年の歩みをイラストなどで形にしていくメモリアルムービーの上映後、今度はパンツスタイルのスタイリッシュな衣装でパフォーマンスが展開される。水瀬はプログレッシブな曲調の新曲「NEXT DECADE」など、クールな空気感を帯びたナンバーを凛とした表情で歌い、10年間で培った多彩かつアーティスティックな表現力を提示した。

次のMCで、水瀬は「自分にとっては想像していなかった10年で。人からしたらすごく順調で、ロケットスタートという印象のアーティストデビューだったと思うんですけど、その中にはたくさんの“ごちゃまぜの気持ち”がありました」とデビュー当時を回顧。「そんな私でも好き、そんな私だから好きというファンの方がついてきてくれたから、今日もこうして歌を歌えています」「年齢を重ねるうちに見える景色とか、何を大切にするかということが変わってきたりする中で、どうしてもなくしたくなかったのは“好きな気持ち”です」と穏やかな表情で語ったあと、「Turquoise」収録の新曲「海踏みのスピカ」を披露した。これまでのライブタイトルを彷彿とさせるフレーズをちりばめた歌詞で10年の軌跡をたどりつつ、「どこまでも君と一緒に」というフレーズを合唱してファンと誓いを交わし合う。続く「TRUST IN ETERNITY」では未来に対する意欲を感じさせる力強い歌声がこだまし、バンドメンバーがソロの演奏合戦を繰り広げたアウトロも含めて会場のボルテージが上昇した。

ライブ後半、ステージ前方に紗幕が垂らされ、そこに深海をイメージさせる無数の泡が映し出されると荘厳なムードが会場を支配。観客がステージにじっと見入る中、水瀬はたおやかなピアノの音色に導かれるように、伸びやかな声で「BLUE COMPASS」を歌い始めた。ひさびさの披露となったこの曲の途中で紗幕が外れると、まばゆいイエローのドレスに身を包んだ水瀬の姿があらわに。この紗幕の演出は2020年12月に横浜アリーナで行われた無観客オンラインライブを踏襲したもので、まだ見ぬ未来へ向け、羅針盤に導かれて旅を続ける心境を表現しつつ、水瀬はこの曲でも「どこまでもいっしょに」と観客に歌いかけた。

続いて彼女はセンターステージへと歩みを進め、自ら作詞を手がけた「ココロソマリ」を歌唱。会場の1人ひとりに向け、温もりのある歌詞の数々を届けていった。ファンとの絆をテーマにした 「harmony ribbon」では観客による盛大なシンガロングを受け、感極まった表情を浮かべた水瀬。彼女は「たくさんのありがとうと、これからもよろしくねの気持ちを込めて歌いますので受け取ってください」と口にすると、本編最後に「Innocent flower」を歌唱し、再びファンと心をひとつにした。

全部抱きしめて未来へ

アンコールに突入すると、水瀬はオリジナルキャラクターくらりちゃんがデザインされたトロッコに乗って場内を一周。2ndハーフアルバムのタイトル曲「Turquoise」を歌ったほか、公演本編に収まりきらなかった楽曲をつなげたメドレーを披露し、笑顔を振りまきながら観客を喜ばせた。

「迷いも不安も恐怖も全部私。全部まるめて抱きしめて未来へ向かおうと思います」という言葉を経て披露されたのは、 水瀬自身が作詞に参加し、デビュー曲「夢のつぼみ」をオマージュしたフレーズやデビュー当時の自分に宛てたメッセージをちりばめた「夢のつづき」。晴れやかな歌声が充満するのに合わせ、場内にきらびやかな銀テープが舞い、幸福感が満ちる中で「Inori Minase 10th ANNIVERSARY LIVE TOUR Travel Record」はフィナーレを迎えた。

なお、今回のツアーファイナルの模様が12月24日19:00よりPIA LIVE STREAMにて配信されることが決定。2026年3月14日には神奈川・横浜BUNTAIでファンクラブイベント「いのりまち町民集会2026」が行われる。

セットリスト

水瀬いのり「Inori Minase 10th ANNIVERSARY LIVE TOUR Travel Record」2025年11月29日 横浜アリーナ

01. 夢のつぼみ
02. まっすぐに、トウメイに。
03. Ready Steady Go!
04. Catch the Rainbow！
05. Wonder Caravan！
06. アイマイモコ
07. まだ、言わないで。
08. アニバーサリー
09. My Orchestra
10. Starry Wish
11. アイオライト
12. NEXT DECADE
13. 海踏みのスピカ
14. TRUST IN ETERNITY
15. BLUE COMPASS
16. ココロソマリ
17. harmony ribbon
18. Innocent flower
＜アンコール＞
19. Calling Blue（overture）～Turquoise
20. Million Futures～REAL-EYES～heart bookmark～glow
21. 夢のつづき

今後の公演情報

いのりまち町民集会2026

2026年3月14日（土）神奈川県 横浜BUNTAI