開演時刻を過ぎ、場内に流れ始める女性のモノローグ。「さよならだけが、人生だ。別れのたびに、みっともなく泣いた。別れのたびに、あきらめかけた。別れのたびに、これが最後だと言い聞かせた」というフレーズに続き、「別れのたびに、歌が生まれた」という言葉が放たれた途端、突如としてライブがスタート。「レナは朝を奪ったみたいだ」「想いきり」が続けざまに披露された。佐藤栄太郎(Dr)によるスティックカウントで「さよならベル」が始まると、川谷絵音(Vo, G)が憂いを帯びた歌声でホールを満たす。「渇き」では後鳥亮介(B)がファズを効かせたベースプレイを繰り広げ、長田カーティス(G)が忙しないギターフレーズを紡いだ。「邦画」「雫に恋して」「夜行」を経て、川谷は「indigo la End、昨日で結成13年になりました」と挨拶。ハンドマイクで「さざなみ様」「夏夜のマジック」を歌い上げたのち、橙色のライトに照らされながら「彼女の相談」を届けた。
川谷は「僕ら今日、定番曲をあんまりやらないんですよ。周年ライブなので、昔の曲もやろうということで」と今回のコンセプトを説明。インディゴのライブで声出しが解禁されたことにも触れ「僕らのライブって、コロナ以前もコロナ以後もあんまり変わらなくて。アナウンスしないといけなかったから、声出していいですよって書いたけど、誰が出すんだよって話なんだよね」とファンを笑わせた。それから4人は最新シングル「名前は片想い」を演奏。「鐘泣く命」では、ライドシンバルの音色がカンカンと鐘の音のように響き渡った。
バックスクリーンに挿し花が映し出され、再び女性のモノローグが流れ始める。物憂げな声で「何度雨に降られようが、運命に見放されようが、音楽は続いた。さよならだけの、人生で」と語られ、間髪をいれず届けられたのは「夜明けの街でサヨナラを」。観客はBメロの性急なビートに手拍子を重ね、疾走感あふれるサビへとつないだ。しばしのドラムソロを挟み、川谷が「名もなきハッピーエンド」のギターコードをかき鳴らす。真っ青に染まったホールに「はなればなれ」というフレーズが繰り返し響いた。
寂しげなピアノの旋律に乗せて、川谷は言葉を届け始める。「13年前、下北沢BASEMENTBARという箱で、お客さんがほとんどいない状態で始まった僕らが、こんな大きい会場でライブできるとは思っていませんでした。国分寺の四畳半で、どうにもならないだろうなって思いながら曲を作ったり、深夜3時まで考えても何も出てこなかったり、いろんな無茶なことをやったり。音楽の神様がいるなら、僕はたぶん見向きもされていないんだろうなと思いながら生きてきましたけど、やっぱり今日みたいな日があると、本当にindigo la Endというバンドをやっていてよかったなと思います。いろんな人に愛されるバンドになっているなと。だから僕らもそれを裏切らないように、これからもいい音楽を作っていきたいと思います」と語ったのち、4人はリリース前の新曲「プルシュカ」を披露した。
アンコールの拍手に迎えられてステージに帰ってきたインディゴは、恒例の「長田カーティス物販紹介」のコーナーで会場の笑いを誘ったのち、「知らない血」を演奏。それまでの和やかな空気は一変し、シリアスなムードが場内に漂う。この日のラストナンバーは「Unpublished manuscript」。バンドのパフォーマンスは熱を帯び、鮮烈なライトが点滅を繰り返す中、ホールに轟音が渦巻いた。フィードバック音を放置したまま、舞台袖へ姿を消す4人。ステージが暗転するとバックスクリーンにエンディング映像が映し出され、「さよならだけが、人生だ」という言葉に「出会いだけが、人生だ」という言葉が重ねられた。
indigo la End「蒼き花束 Vol.3」2023年2月25日 パシフィコ横浜 国立大ホール セットリスト
01. レナは朝を奪ったみたいだ
02. 想いきり
03. さよならベル
04. 渇き
05. 邦画
06. 雫に恋して
07. 夜行
08. さざなみ様
09. 夏夜のマジック
10. 彼女の相談
11. チューリップ
12. 心雨
13. アリスは突然に
14. ヴァイオレット
15. 名前は片想い
16. 鐘泣く命
17. 夜明けの街でサヨナラを
18. 名もなきハッピーエンド
19. 夜の恋は
20. インディゴラブストーリー
21. プルシュカ
<アンコール>
22. 知らない血
23. Unpublished manuscript
※記事初出時より一部写真を変更しました。
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