前野健太、自由奔放な語りと鬼気迫る歌で笑いと感動巻き起こした年末ワンマンライブ

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前野健太が12月30日に東京・WWWでワンマンライブ「GO TO 前野健太」を行った。

前野健太(撮影:大石規湖)

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前野健太「GO TO 前野健太」フライヤー

前野健太「GO TO 前野健太」フライヤー[拡大]

この公演はオープン10周年を迎えたWWWのアニバーサリー特別公演として開催されたもので、前野にとっては東京で行う2020年最初で最後の有観客ワンマンライブ。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、限定枚数での販売となった入場チケットはソールドアウトし、会場に足を運べなかったファンに向けては、カメラマンがたった1人で前野を追う臨場感のあるライブ映像が生配信された。

前野健太(撮影:大石規湖)

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「GO TO 前野健太」というイベント名にかけて、場内にはゴトンゴトンと電車が走る音が響く。そこへ現れた柄シャツ姿の前野はギターを手に取り、「お互い生きてましたね」と微笑むと「あたらしい朝」でライブの幕を開けた。ひさびさに観客と対面して「この拍手、この笑い声……」と感慨深げな様子の前野は、一昨日できたばかりだという新曲を2曲目に披露。この曲は前野が15年以上前に書いたと思われる「冬の渋谷」というタイトルのメモから作ったとのことで、前野は「近い将来について話している」という歌詞が特に気に入っているそうだ。続けて「興味があるの」をじっくりと歌い上げた前野は、「今日モッシュダメですからね。前野健太のライブと言えばモッシュですけど」と冗談を飛ばしつつ、先日亡くなったなかにし礼が作詞した細川たかし「心のこり」や島倉千代子「愛のさざなみ」のカバーを披露。前野はなかにしに強い影響を受けており、特に「愛のさざなみ」は前野が音楽にのめり込むきっかけとなった曲だという。

ステージに近付いてきた配信のカメラに向かって投げキッスした前野は「SHINJUKU AVENUE」を歌い始めるが、豪快にミス。「チンチンのポジションが悪かった」と照れ笑いつつ、すぐに演奏をやり直すと、凄みのある歌と演奏で一気に空気を変えてみせる。共演した友川カズキに「表現者はしつこさが大事」と教えられたというエピソードから、自分には“しつこさ”と“いい風景にでくわす才能”くらいしかないのだと語った前野は、街の風景を描写した「ヒマだから」を披露し、続けて「ねえ、タクシー」を情念たっぷりに歌唱。過去にWWWで行われた一風変わったイベントの数々を振り返りつつ、2015年開催の「HOTEL 前野健太」で作られた楽曲「ロマンティックにいかせて」をささやくように歌ったあと、「ダンス」でライブ前半を締めくくった。

前野健太(撮影:大石規湖)

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換気時間を挟み、別の柄シャツに着替えてステージに戻った前野は、「すごくいいこと考えました」と切り出すと、ジェスチャーでのリクエストを提案。声を出せない観客が身振り手振りで懸命に曲名を表現する中、手でハートを作ったファンの要望に応えて「love」をワンコーラスだけ歌った。さらにジェスチャーでのリクエストを募り、「豆腐」を上手に表現した観客に感心しつつも、前野はそれをスルーして「マン・ション」を披露。口笛を吹きながら伸びやかな歌声を響かせた。ここで前野はライブのために下ろしてきたという古着の柄シャツに触れると、「誰が着てたんでしょうね。変なパーマかけたおばさんだろうね絶対。俺しか着ないんだよ、そういう人たちが着てた服ってのは……どんどん送ってほしいわ。WWWまで」と放言。誕生日が同じである“ましゃ”こと福山雅治の下ネタに驚いた話などで笑いを起こしつつ、「私はほとんど街で歌を作りますけど、また夜な夜なバーとかに行けて歌が生まれるような日が来るといいなという思いを込めて」と語って「いい予感」を歌った。

前野健太(撮影:大石規湖)

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前野は有観客でのイベント開催が難しくなる中、ライブは自分が観客に会いに行くものだと気付いたと語ると、ライブ前日に作ったという新曲「私は今日も生まれました」を披露。この曲について、前野はひさびさにいいフレーズができたと思ったが、AMEMIYAの「冷やし中華はじめました」に似ているため、このアレンジで披露するのは今回が最後になるかもしれないと語った。その後、「友達じゃがまんできない」を静かに歌い始めた前野は、徐々に演奏に力を込めていき、力強い叫びで観客を圧倒。続く「マシッソヨ・サムゲタン」では観客に心の中で歌うことを促し、フロアから心の歌をしっかり受け取ると感情を爆発させるように声を張り上げる。ライブ終盤、"本当にひさしぶりに会った恋人同士みたいな照明”と“コロナウイルスさんが昇天しちゃうようなリバーブ”をPAに求めて「ファックミー」を艶っぽく歌った前野は、続けて「人生って」を歌唱。さらに「コーヒーブルース」を荒々しく足踏みしながら歌い上げてステージをあとにした。

前野健太がかき鳴らしたギター。(撮影:大石規湖)

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アンコールで観客の前に戻った前野は、「ちょっと抜いていいっすか? 下ネタじゃないんで」とボケながらギターのシールドを抜くとステージを徘徊。取り留めのない様子のMCから「おし! 元気に年を越して!」と声を上げて「18の夏」へなだれ込み、観客の手拍子に乗せてアンプラグドで力強く弾き語った。その後も奔放なMCは続き、「今日は雪が降りそうなんですか?」と観客に語りかけ、「すみません、そういう曲があるんで。現実を変えたいなと思って」と笑った前野は、「なんか聴きたい曲とかあります?」とリクエストを募りつつ、要望とは関係なく「天気予報」を熱唱。最後は「皆さん1人ひとりとセックスしたいなと思うんですけど、私ももうこんな体なんで……もう次のライブはMCをやめようと思ってます」と宣言して会場を笑いで包むと、弦の切れたギターをかき鳴らして「東京の空」で声を振り絞った。演奏を終えた前野はギターを置くと「100年後」を歌いながら退場。ユーモアあふれる語りと圧倒的な歌で観客を楽しませ続けた彼にフロアから惜しみない拍手が送られた。

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前野健太「GO TO 前野健太

2020年12月30日 WWW セットリスト

01. あたらしい朝
02. 近い将来について話している(新曲)
03. 興味があるの
04. 心のこり~愛のさざなみ(なかにし礼に捧ぐ)
05. SHINJUKU AVENUE
06. ヒマだから
07. ねえ、タクシー
08. ロマンティックにいかせて
09. ダンス
10. love
11. マン・ション
12. いい予感
13. 私は今日も生まれました(新曲)
14. 友達じゃがまんできない
15. マシッソヨ・サムゲタン
16. ファックミー
17. 人生って
18. コーヒーブルース
<アンコール>
19. 18の夏
20. 天気予報
21. 東京の空

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