花と例の3文字飛び交った忘れらんねえよ×フラカン“ツレ伝”

4月2日、忘れらんねえよが「ツレ伝」ツアーの東京公演を東京・TSUTAYA O-WESTで開催した。

「ツレ伝」ツアーは忘れらんねえよがゆかりのバンド“ツレ”を各地に招いて繰り広げる対バンライブツアー。その東京公演で彼らは“敬愛する先輩バンド”フラワーカンパニーズと競演した。

KEYTALKやキュウソネコカミとコラボレーショングッズを開発したり、グッドモーニングアメリカのたなしん（B）とドラマを制作してみたりと、忘れらんねえよはツアー中、各地で対バン相手にちなんだ“仕掛け”を用意している。フラカンとの「ツレ伝」ライブのためにバンドが準備した企画は「フラワーアレンジメント」だ。この日のために酒田耕慈（Dr）がフラワーアレンジメントのスクールに通い、さらには自腹で花を購入。それらを花瓶に飾り立て、開演前の楽屋でくつろぐフラカンメンバーにプレゼントした。なお酒田は2014年年初より兵庫・西宮神社の福男選びや、滝行など、さまざまな難題に挑む「酒田チャレンジ」企画を展開しており、フラワーアレンジメントもこの一環として行われたもの。近くその一部始終を収めた映像がYouTubeで公開される。

フラワーカンパニーズ

「ツレ伝」ツアー東京公演の先攻はフラワーカンパニーズ。The Nite Hawks「Chicken Grabber」をBGMに登場した4人がいきなりキラーチューン「深夜高速」をドロップすると、フロアからは「生きててよかった」の大合唱が巻き起こる。以降バンドは「はぐれ者賛歌」「夜空の太陽」「人生GOES ON」を連投。モニタースピーカーに足を掛けた鈴木圭介（Vo）が目を剥き熱唱し、グレートマエカワ（B）がときに軽快なダンスを繰り広げ、ときに大ジャンプをキメる一方、竹安堅一（G）がクールにリフを繰り出し、ミスター小西（Dr）がタイトなリズムを刻むなど、4人はエモーショナルながらも、どこか余裕とリラックスムードを感じさせる結成25周年のバンドならではのステージアクトを繰り広げる。

続くMCではフラカンを“ツレ”に選んでくれたことに感謝し「若いバンドに誘われると若くなった気がするね」とする鈴木が、Wikipediaで忘れらんねえよのことを調べてみたエピソードを披露。「忘れらんねえよはSEXって連発するんでしょ」「SEXって語尾に付ければいいんでしょ？」と、あながち間違ってはいない理解のもと3文字を連呼するも、フラカンにそのイメージのなかったフロアはなんとも言えない空気に。「シーンってなっちゃった……」とヘコむ鈴木に、マエカワが裸にオーバーオール姿の自身を指さし「当たり前だよ。この格好でSEXって言っちゃダメだろ！」とツッコミ。そこに鈴木が「45歳とはいえ、僕もそれなりにやってますからね」とかぶせて観客の爆笑をさらってみせた。

しかしその後のプレイは圧巻のひと言。レゲエをほうふつとさせるA、Bメロから怒濤のサビへと展開する「切符」、空間系エフェクトを深くかけた竹安のサイケデリックなギターが印象的な「涙より早く走れ」、鈴木が熱いポエトリーリーディングを聴かせる「東京タワー」で超満員のフロアのボルテージをどこまでも高く押し上げていった。

そして「バンドは仕事じゃない」「仕事はマイナビバイトで探す」と忘れらんねえよがCMソングを担当している求人情報サイトに引っかけたジョークで再び観客を温めた4人は「終わらないツアー」と「真冬の盆踊り」を投下。高く突き上げた両手首を阿波踊りのようにクルクル回すオーディエンスとともに「ヨッサホイ ヨッサホイ ヨッサホイのホイ」のフレーズを熱く歌い踊りステージをあとにした。

忘れらんねえよ

対する忘れらんねえよはAKB48「恋するフォーチュンクッキー」をオープニングSEにステージに登場。梅津拓也（B）と酒田がリズムに合わせてハンドクラップする中、柴田隆浩（Vo, G）はテンション高くAKBの振りをまね、ギターを担ぐや、先の鈴木のMCを受けて「サンキュー、SEX、こんばんわ！」とシャウトする。

ところがこの叫びにO-WESTは鈴木のとき同様、微妙な空気に。それを察した柴田は「オレをおとしめたな！ もう1回やって応えなかったらリストカットして帰るからな！」と脅しつけた上で「サンキュー、SEX、こんばんは！ AKB48です！」と梅津、酒田とともに「僕らチェンジザワールド」「僕らパンクロックで生きていくんだ」「戦う時はひとりだ」を3連射。フロアではいきなり激しいモッシュが巻き起こる。さらに3人は「新曲です」と、バンドの新機軸ともいえる四つ打ちギターロック「体内ラブ」をフロアに放り込んだ。

「改めましてこんばんは！ flumpoolです」とのあいさつからMCを始めた柴田は、この日初めて忘れらんねえよを観るだろうフラカンファンのために「ここだけの話」をすると宣言する。どこかで聞いたことのある言葉ながらも気を遣ったか、忘れらんねえよファンが「おおーっ！」と声を上げると柴田は「お前ら、いいヤツだな」と満面の笑み。高校時代の彼女“オガッチ”に対して32歳になる今まで熱心につきまとい行為を繰り広げるも、“オガッチ”にケータイ番号を変えられたことが発覚。“オガッチ”の今を探るべく地元熊本への帰郷時に同窓会を開き、集まった陰毛みたいな4人の男から彼女が慶応ボーイと結婚したことを知らされたといういつものトークを、いつも以上の薄笑いといつも以上の痛恨の表情を浮かべながら語り上げ「慶応ボーイになりたい」をパフォーマンスする。曲中、梅津、酒田がいつもとはひと味違うダンサブルなアンサンブルを魅せ、柴田が左右に両手を振るとフロアはそれに呼応。先のMCからは想像もつかない多幸感あふれる空間を作り上げたバンドは「この高鳴りをなんと呼ぶ」と、やはりダンサブルな16ビートが耳に残る新曲「タイトルコールを見てた」を叩き付けた。

中学時代、足が遅くクラスの“2軍”に押し込まれた柴田が、小学校時代からのクラスメイトで中学ではイケてる“1軍”にいた“トオル”くんから投げかけられたひと言をきっかけに生まれたというバラード「運動ができない君へ」を歌うと、柴田はそのまま学生時代の思い出を語り出す。彼が、高校時代、友人の家でフラカンのPVを観てバンドとロックに憧れを抱いたことを振り返り「夢が叶った」と満面の笑みを浮かべると、ライブは怒濤の終盤戦に突入する。

「北極星」では梅津が拳を振り上げオーディエンスを煽りまくり、スカコアテイストの新曲「ばかばっか」では梅津とともにヘッドバンギングしていた柴田が、3月の「ツレ伝」ライブでキュウソネコカミにインスパイアされたとしてフロアにウォール・オブ・デスを要求。その声に忘れらんねえよファンとフラカンファンが入り交じるフロアは左右に分かれ、梅津の「シブヤー！」のシャウトと同時に勢いよく身体をぶつけ合った。そして酒田がときに立ち上がりながらハードにドラムを叩きまくる「CからはじまるABC」を終えると、たなしんにインスパイアされたという柴田の「1、2、3、SEX」の声と同時に、新曲「バンドやろうぜ」をプレイ。その柴田がバンドで活動できている喜びを、どこかセンチメンタルに、しかし高らかに歌い上げてライブ本編を締めくくった。

アンコールは、この日の2組の主役、忘れらんねえよとフラワーカンパニーズによる「忘れらんねえよ」のセッションだ。缶ビール片手にステージに現れた柴田が、緊張の面持ちでフラカンを呼び込むと、鈴木は柴田とともにマイクを並べ、マエカワは梅津から借りたフライングVのベースをプレイ。竹安と小西が酒田のドラムに合わせてタンバリンとマラカスを鳴らす。そして忘れらんねえよのライブでは恒例となった、メンバーとオーディエンスが「S」「E」「X」のハンドサインを作る「SEX写真」をフラカンの4人を交えて撮影したところで「ツレ伝」ツアー東京公演は大団円を迎えた。

なお終演後、ステージに残った忘れらんねえよは、4月21日に東京・つぼ八 新宿歌舞伎町ピックペックビル7F店で柴田と東京カランコロンのいちろー（Vo, G）による弾き語りライブ「つぼ八×ツレ伝『つぼ伝』～弾き語りツーマン in つぼ八～」を開催することを発表している。

忘れらんねえよ「ツレ伝」ツアー東京公演
2014年4月2日（水）東京都 TSUTAYA O-WEST 忘れらんねえよセットリスト

01. 僕らチェンジザワールド
02. 僕らパンクロックで生きていくんだ
03. 戦う時はひとりだ
04. 体内ラブ
05. 慶応ボーイになりたい
06. この高鳴りをなんと呼ぶ
07. タイトルコールを見てた
08. 運動ができない君へ
09. この街には君がいない
10. 北極星
11. ばかばっか
12. CからはじまるABC
13. バンドやろうぜ
＜アンコール＞
14. 忘れらんねえよ