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J-POPに広がるWeverseの波──香取慎吾やミセスも参加、韓国発プラットフォームの現在地

人気洋楽アーティストも続々参入、日本展開やサービスの進化とその背景を探る

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スマートフォンやSNSが普及して以降、アーティストとファンの関係性は大きく変化した。オンライン上で双方向のコミュニケーションが可能になったことで、両者の距離はぐっと近付き、ファン同士の交流を含めた「コミュニティ」の在り方も多様化してきている。そんな中、国内外の音楽ファンの間でひと際存在感を高めているのが、韓国発のファンプラットフォーム・Weverseだ。

もともとは、BTSSEVENTEEN、NCT、LE SSERAFIMなど、K-POPアーティストがファンと交流する場として広く知られてきたWeverse。しかし近年は、香取慎吾YOASOBIMrs. GREEN APPLEといったJ-POPアーティストに加え、アリアナ・グランデやデュア・リパといった海外アーティストの参加も相次ぎ、K-POPファン以外の音楽リスナーにも認知が広がりつつある。

こうした動きに関心を持ち、音楽ナタリー編集部ではWeverseを運営するWeverse Companyの日本法人・Weverse Japan代表のムン・ジス氏を取材。日本市場へのアプローチや、アーティストとファンそれぞれに向けたサービスの進化、さらには韓国で開催された音楽イベント「Weverse Con Festival」から垣間見えた、プラットフォームの思想について話を聞いた。

取材・/ 獅々堀智世

Weverseとは

Weverseは、韓国に本社を構えるWeverse Companyが運営する“グローバルスーパーファンプラットフォーム”。BTSをはじめとした人気K-POPアーティストを擁することでも知られるHYBEの「プラットフォーム事業」をリードするサービスで、コミュニティ機能やライブ配信に加え、アルバムや公式グッズを販売するEコマース機能まで、アーティストとファンをつなぐ多彩なサービスを展開している。

そんなWeverseにとって、日本は特に注力している市場のひとつだ。日本のファンやアーティストのニーズに応えるべく設立されたのが、日本法人のWeverse Japan。より使いやすく、楽しめるプラットフォームを目指してローカライズや機能改善に取り組んでおり、2024年には日本のユーザー数が前年比22%増と、グローバル平均を上回る成長を記録している。

今年1月に公開された「2024 Weverse Fandom Trend」より。

今年1月に公開された「2024 Weverse Fandom Trend」より。

UIやUXは全世界で統一されているが、各国の利用スタイルに即したローカライズも進められている。例えば、韓国ではあまり一般的でないバーコード決済や電子マネーが広く浸透している日本のユーザーに向け、そうした決済手段への対応強化も視野に入れているのだという。

課題は「世界に向けた発信」

Weverseではここ数年、J-POPアーティストの参入が加速している。2023年には、imaseAKB48といった日本のアーティストの参加が続き、同年11月には超特急SUPER★DRAGONONE N' ONLYLienelが一斉にWeverseに参入。4組はいずれもスターダストプロモーションのEBiDANに所属するグループで、この動きは大きな話題を呼んだ。

今年1月に公開された「2024 Weverse Fandom Trend」より。

今年1月に公開された「2024 Weverse Fandom Trend」より。

EBiDAN参入の背景にあったのは「世界に向けた発信」という共通の課題。15言語に対応した自動翻訳機能を備えるWeverseの活用によって、すでにブラジルを中心に海外ファンダムを築いているONE N' ONLYのように、ほかのグループもグローバルなファンとのつながりをより強化することを目指したのだという。

このほか、YOASOBIMrs. GREEN APPLEなど国内外で支持を集めるメジャーアーティストも続々とWeverseにコミュニティを開設。現在、18組の日本人アーティストが同プラットフォームに参加しており、その数は着実に増加している。

香取慎吾の「新しい取り組みをしたい」という姿勢に応えて

中でも、今年5月に発表された「香取慎吾のWeverse参入」は、日本におけるWeverse展開を語るうえで大きなトピックのひとつだ。

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「30年以上にわたって芸能界で活躍され、音楽活動はもちろん、俳優やMCなど幅広い分野で実績を持つ香取さんに参加いただけたことは、私たちにとって非常に光栄でした」とムン氏。豊富なキャリアを持ちながらも、常に新しいことを追求し挑戦を楽しむ香取の姿勢に感銘を受けたと話す。「昨年香取さんとお話しする機会があったのですが、『何か新しい取り組みをしたい』とおっしゃっていたんです。そこで、私たちからWeverseのデジタルアルバムの展開を提案させていただきました」。

香取慎吾「Circus Funk」Weverse Albums ver. のパッケージ写真。

香取慎吾「Circus Funk」Weverse Albums ver. のパッケージ写真。

この提案を受け、香取は同社が展開するデジタルアルバム「Weverse Albums」を通じ、初のグローバル向けアルバム販売を実施した。「Weverse Albums」は専用アプリでQRカードを読み込むことで、音楽に加え、画像や限定コンテンツなども楽しめるデジタルアルバムプラットフォーム。これまでBTSやSEVENTEENといったHYBE傘下レーベル所属のK-POPアーティストが活用してきたが、いわゆる“HYBE以外”のアーティストがこのフォーマットを採用したのは、香取が初めてだったという。「この取り組みを通じて、香取さんが海外のファンの方々ともつながるきっかけを作れたことは、Weverseとしても非常に意義深いことでした」とムン氏は振り返る。

162組それぞれの“らしさ”を尊重

Weverseでは、すべてのアーティストに画一的な使い方を求めるのではなく、現在コミュニティに参加している162組それぞれの特性を尊重しながら、実際の活用事例から得た知見をもとに機能の拡張や改善を進めている。「日常の写真を頻繁にアップしてファンとの距離を縮めている方もいれば、ライブ写真だけを共有する方もいます」。アーティストごとの個性や活動スタイルに応じて、Weverse上での機能の使い方にも明確な違いがあるのだという。

音楽ナタリーの取材に応じたWeverse Japan代表のムン・ジス氏。

音楽ナタリーの取材に応じたWeverse Japan代表のムン・ジス氏。

その柔軟さは、Weverseが目指す“360度カスタム型”プラットフォームという姿にも通じている。取材の終盤、ムン氏に「日本のアーティストやファンに対して、今後どのような価値を提供していきたいか」と問いを投げかけた際には、「日本のアーティストの多様な活動スタイルに合わせて、必要な機能を選んで活用していただけるよう、プラットフォームとしての自由度を高めていきたい」と展望を語っていた。

日本のファン文化に見る「ともに育つ」スタイル

Weverseは現在、245の国と地域で展開されており、グローバルな“スーパーファン”とアーティストがつながる場となっている。そんな中、日本ならではのファン文化はどのように映っているのだろうか。

筆者が「アーティストの成長を長期にわたって応援していく文化など、他国と比べても独自の特徴があるのでは」と私見を述べると、ムン氏は「おっしゃる通りだと思います」と穏やかにうなずいた。そのうえで、「好きなアーティストを応援しながら一緒に成長していくスタイルは、Weverseが掲げる『アーティストの成長を長期的にサポートする』という方向性とも親和性が高いと感じています」と語る。

Weverseではファンとアーティストの距離を縮め、より深くつながることができるよう、機能の開発や拡充が続けられてきた。今後はさらに、ファン同士のつながりにも目を向けていくのだという。今年3月には、アーティストの楽曲を聴きながらファン同士がリアルタイムでコメントを交わせる「Listening Party(リスニングパーティ)」機能がローンチされた。こうした“Fan-to-Fan”の交流を生み出す仕組みや取り組みも、今後さらに広げていく方針だ。

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「Weverse Con Festival」に漂う心地よさの理由

取材を行った6月頭、ちょうど韓国・ソウルでは「Weverse Con Festival」が開催されていた。「オンラインとオフラインを融合した音楽フェスティバル」としてスタートしたこのイベントには、親子連れや年配の来場者の姿も多く見られ、屋外エリアでは、椅子に座ってくつろぎながら音楽に耳を傾ける姿があちこちに。来場者がそれぞれのスタイルで音楽を楽しむ、開放的な空気が広がっていた。

「Weverse Con Festival」の野外ライブの様子。来場者はレジャーシートに腰かけゆったりとした雰囲気。

「Weverse Con Festival」の野外ライブの様子。来場者はレジャーシートに腰かけゆったりとした雰囲気。

ライブレポート
ライブレポート

ムン氏は「すべての世代、すべてのジャンルの音楽ファンが快適に楽しめる空間を目指しています」と語る。会場では、アプリを活用した多彩な工夫も随所に見られた。例えば、Weverse上で会場内ブースの順番待ちができる機能や、事前に注文したグッズをスムーズに受け取れるピックアップサービスなど。長時間列に並ぶといった“なくていい負荷”を取り除き、音楽とそれを取り巻く空間を純粋に楽しめる環境づくりが徹底されていた印象だ。筆者が「来場者の雰囲気や運営設計がとても心地よかった」と感想を伝えると、ムン氏は「ファンの皆さんがのびのび楽しめる場を作るために、今後も努力していきたい」と笑顔を見せた。

気になる日本での開催については、「少しずつリサーチや準備を進めている段階です」とのこと。公演インフラが整った日本だからこそ、オンラインだけでなくオフラインでも豊かな体験を届けたいという思いがあるようで、「課題はあるものの、将来的にはぜひ実現したいです」と前向きな姿勢を示していた。

「Weverse Con Festival」内のWeverseブースでのムン・ジス氏。

「Weverse Con Festival」内のWeverseブースでのムン・ジス氏。

アーティストによって使い方が異なり、ファンによって楽しみ方が違う。そんな多様な在り方を前提に設計されているからこそ、Weverseは世代や国境を越えて広がり続けているのかもしれない。

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©2025 Weverse Con Festival

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