「KENSHI YONEZU 2025 WORLD TOUR / JUNK」パリ公演の様子。(Photo by Jiro Konami)

米津玄師が海外7都市で受けた祝福と熱い歓迎、世界へ踏み出した新たな一歩を現地レポート

自身最大規模のワールドツアーは、目にしたことがないほどの熱狂だった

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現地の若者が集ったソウル公演

ソウル公演が行われたINSPIRE ARENAは、仁川国際空港近くに2023年にオープンした大規模複合型リゾート内に位置する最新の多目的アリーナだ。豪華なエントランスのLEDビジョンにはツアーのビジュアルが映し出され、開場前から多くのファンがグッズ購入や記念撮影に興じていた。

会場には開演前からただならぬ高揚感が漂っていた。2日間のチケットは発売後すぐにソールドアウト。この日は1万1000人のファンが集結した。観客層は男女比がほぼ同等で、10代から20代の若者が中心。筆者が観察した限り、ロビーでは日本語の会話はほとんど聞こえず、現地の若い世代が大半を占めているようだった。

「KENSHI YONEZU 2025 WORLD TOUR / JUNK」ソウル公演の様子。(Photo by Yusuke Yamatani)

「KENSHI YONEZU 2025 WORLD TOUR / JUNK」ソウル公演の様子。(Photo by Yusuke Yamatani)

そして、ソウル公演でのオーディエンスの反応は、筆者の予想をはるかに超える熱気に満ちていた。開演時刻、バンドメンバーの中島宏士(G)、須藤優(B)、堀正輝(Dr)、宮川純(Key)とともに米津が姿を現すと、会場を揺るがすほどの大歓声が沸き起こる。オープニングの「RED OUT」では、米津の歌声に合わせて「消えろ 消えろ」というフレーズを1万1000人の観客が一斉に叫び、会場に一体感が生まれる。

続く「感電」では、特徴的なホーンセクションのイントロを観客が歌い、「マルゲリータ」では「XOXO」の部分で米津がマイクをフロアに向けると、それに応じて大合唱がこだまする。タイアップ曲であろうが、そうでなかろうが、すべての曲が始まるたびに興奮の歓声が沸き上がり、会場全体がひとつになったシンガロングの波が会場を包み込んでいた。

ソウルの観客が見せた反応は、過去のどの公演でも目にしたことがないほどの熱狂だった。「ものすごい熱量ですごくうれしいです。光栄のかぎりです」と、米津も驚きと感謝が入り混じった表情を見せる。

「KENSHI YONEZU 2025 WORLD TOUR / JUNK」ソウル公演の様子。(Photo by Yusuke Yamatani)

「KENSHI YONEZU 2025 WORLD TOUR / JUNK」ソウル公演の様子。(Photo by Yusuke Yamatani)

セットリストは国内ツアーと同様、最新アルバム「LOST CORNER」を軸に新旧の名曲をバランスよく織り交ぜた構成だ。特筆すべきは、1曲1曲が始まるごとに大きな歓声が沸き起こっていたことだろう。特に宮川の繊細で美しいピアノソロに続けて披露した「LADY」や、壮麗なストリングスがイントロに加わるライブアレンジの「Lemon」では、イントロのピアノフレーズや「夢ならば」という歌い出しで観客が曲を認識した瞬間、あふれ出すような歓喜の渦が会場全体を包み込んだ。

そして最も驚かされたのは、韓国のオーディエンスがほとんどすべての曲で声を枯らさんばかりに日本語の歌詞を完璧に歌い上げていたことだ。とはいえ、ただ単に騒ぐだけの観客というわけでもない。「地球儀」や「海の幽霊」のような幻想的な曲調と美しいメロディが特徴の楽曲では、静かに聴き入り、その世界観に浸る姿勢を見せる。対照的にノンタイアップの初期楽曲「メランコリーキッチン」でも多くの観客が歌詞を完璧に覚えており、熱のこもったシンガロングが生まれていた。前半のクライマックスとなった「さよーならまたいつか!」では、米津の伸びやかな歌声に呼応するように、会場全体が一体となった歌声が響きわたり、祝祭感あふれる光景が広がった。

「KENSHI YONEZU 2025 WORLD TOUR / JUNK」パリ公演の様子。(Photo by Jiro Konami)

「KENSHI YONEZU 2025 WORLD TOUR / JUNK」パリ公演の様子。(Photo by Jiro Konami)

「人生で一番熱い歓迎を受けた気がします。今までの音楽人生もひっくるめて祝福されたような思いです」と、米津は感慨深げに告げる。「アンニョンハセヨ」と韓国語で呼びかけると、会場からは熱い拍手と歓声が沸き起こる。米津は「ずっと韓国に来たかったけれど、なかなかタイミングが合わなかった」と率直に告白。また、食べたことはないが語感が気持ちいいという理由で「プルダックポックンミョン」(インスタントの激辛炒め麺)を好きな韓国語として挙げるなど、韓国への親しみも自然な形で表現していた。

MCでは、言葉の異なる国でこれだけ多くのファンが日本語の歌詞を歌う光景への驚きも素直に表現していた。「自分の国以外の場所にこんなにたくさんの人が集まってくれて、1人でやっていた頃から考えると嘘みたいな光景です」と、これまでの音楽活動を振り返りつつ語る。最後に「愛してるよ!」と叫ぶと、会場には割れんばかりの歓声が響きわたった。

こんなに熱いライブ、人生で初めてでした

後半のライブアンセムを立て続けに披露する展開では、会場の熱気はさらに高まっていった。「LOSER」のイントロが流れた瞬間、会場からは怒号のような歓声が沸き起こり、サビでは観客全員が一斉にジャンプ。その衝撃でアリーナの床が揺れるほどだ。米津とオーディエンスの掛け合いにより会場のムードはどんどん加熱し、アウトロに差し掛かると「オイ! オイ!」という、まるでロックフェスのようなコールまでもが生まれた。

「KENSHI YONEZU 2025 WORLD TOUR / JUNK」ソウル公演の様子。(Photo by Yusuke Yamatani)

「KENSHI YONEZU 2025 WORLD TOUR / JUNK」ソウル公演の様子。(Photo by Yusuke Yamatani)

そしてショーのクライマックスとなったのは「KICK BACK」だ。イントロの第1音から会場の盛り上がりは爆発し、「努力 未来 A BEAUTIFUL STAR」のフレーズを1万1000人の観客が一斉に絶叫。真紅の衣装に身を包んだダンサーたちがダイナミックに舞い、米津自身が手持ちの自撮りカメラで捉えた表情やステージの狂騒状態がリアルタイムで巨大LEDビジョンに映し出されると、オーディエンスの興奮は最高潮に達した。

続く「ピースサイン」でも熱気は冷めやらない。イントロの第1音から観客の多くが両手を高く掲げてピースサインを作り、壮大なシンガロングが会場を包み込む。畳みかけるように披露した「ドーナツホール」でも速いテンポに乗せた掛け声がステージに降り注ぎ、観客の興奮状態が続く。息つく暇もない展開が続いた後、本編ラストは情感豊かなバラードナンバー「がらくた」へ。「LOST CORNER」というアルバムのメッセージ性を象徴するこの曲で、先ほどまで沸き立っていた観客たちは一転、感無量の表情で歌に耳を傾けた。静かに、しかし深く胸に迫る余韻を残して米津はステージを後にした。

「KENSHI YONEZU 2025 WORLD TOUR / JUNK」パリ公演の様子。(Photo by Jiro Konami)

「KENSHI YONEZU 2025 WORLD TOUR / JUNK」パリ公演の様子。(Photo by Jiro Konami)

アンコールを求める熱烈な声援と拍手に応え、再び姿を現した米津は「BOW AND ARROW」を披露。ここでも観客は拳を高く掲げ、手拍子を刻み、間奏やアウトロでは「オイ! オイ!」と声を合わせる。

MCでは米津の幼馴染でもある“ハイパーギタリスト”中島宏士が朗らかな表情でバンドメンバーを紹介。韓国語でオーディエンスに呼びかける場面もあり、会場は和やかな空気に包まれた。ライブ恒例の米津と中島による肩の力の抜けた掛け合いは、アリーナ全体に親密で柔らかなムードを生み出した。

「こんなに熱いライブ、人生で初めてでした」と米津は感極まった表情で語る。「また来ます!」という言葉に、客席からは大きな歓喜の声が上がった。最後の「LOST CORNER」まで一瞬のように感じられた圧倒的なステージだった。

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多種多様な人種が集まったLA公演、15年ぶりに訪れた地で語った親友への思い

読者の反応

柴 那典 @shiba710

米津玄師ワールドツアー「KENSHI YONEZU 2025 WORLD TOUR / JUNK」のレポートを書きました。

「こんなに熱いライブ、人生で初めてでした」と米津さん自身が語ったソウル公演、特別な思いを打ち明けたツアーファイナルのLA公演、そして今回のツアーの意義について。是非読んでみてください。 https://t.co/gygxNlmTOg

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