堂本剛

堂本剛が“人生の新しいフィールド”へ向かう心境とは

「何度終わってもいいし、何度始めてもいい」根底に流れるPファンク思想

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「抗う」ではなく「挑む」……人生の新しいフィールドへと進む決断とその理由

.ENDRECHERI.という名前は古代魚から取ってるんですよ。デボン紀から何億年も地球にいる古代魚なんですけど、このエンドリケリーの驚くところは、そのデボン紀からこの令和まで姿や形、機能を変えずに、この時代を生きているところです。そこに魅了されてしまいました。環境や時代がどれだけ変わっても、エンドリケリーは変わってないんです。ファンクのビートってワンコードで延々いくじゃないですか。そこに共通したものを感じて。人間は地上で暮らしていると、ここに信号もあるし、横断歩道もあるし、2車線、4車線、坂道があって、こっから高速に乗って降りて、エレベーターで上がって下がって……と自分の進みたいように進んではいるけど、そこには規制がいっぱいある。

──社会がありますからね。

そう。でもエンドリケリーは湖にいる古代魚で、水中にはそういう社会のノイズがない。海の航路は人が作っているけど、魚はそんなの関係なく潮の流れをなんとなく感じながら、食べ物のある場所、居心地のいい場所を求めて生活している。.ENDRECHERI.の音楽を聴くとき、ライブに来てもらうときは、水中にいるようなイメージで、地上のルールは一旦置いといてほしいんです。水中では水の流れる音と、自分のハートビートがめちゃくちゃ聞こえますよね。.ENDRECHERI.そんなイメージを持って付けた名前で。.ENDRECHERI.に触れるときは、それこそこのインタビューを読んでもらうときもそうですけど、ちょっと水中に入って、地上のノイズを切ってほしい。自分に向き合って、感じてもらう。そういうことを頑なにずっとやっているんです。

──Instagramに「人生の新しいフィールドへと進む」「アーティストとしての人生をここから先も進むためには環境を大きく変化させる必要があると感じました」とコメントされていましたよね。いわゆる独立という形になるのでしょうか。

堂本剛のInstagram投稿

独立という言葉も、どこかネガティブなイメージを含んだ言葉だと僕は思うんですよ。もともとあるものを壊して突き進むとか、無理やり何かを建設するとか。何かに対して抗わなければいけない力も発生しているような言葉だなって。僕自身は抗ったことがないんです。先ほどお話ししたように、すべて心で実現してきたものばかりで、ノーと言われたことは素直に諦めながらも挑み続けてきた人間です。僕としては新しいフィールドに行くという感覚で……古代魚のエンドリケリーが今まで泳いでた領域から、もうちょっと広い領域に泳ぎ出たみたいなイメージ。「こっちに泳いでいけるな」と思ったからそうしたというだけで、ポジティブな波動しかまとっていないです。この選択に関しては、自分の体のことも大きくて。

──突発性難聴ですよね。「環境を大きく変化させる必要」というのはそこが大きかった?

はい。今、ようやく時間を自分でコントロールできるようになって、けっこう病院に通えているんですよ。診察や治療も、自分のペースでやれている。レコーディングやライブ、バラエティやラジオ、こういうインタビューだとかいろいろお仕事をいただく中で、耳や喉を休める時間を自分でハンドリングしてアーティスト活動したいとずっと思っていたんですけど、今までは「ここで何分あるからこれをやってください」みたいな感じだったから、クオリティを高く保てなかった。インタビューも、1日中ずっと受け続けていると、同じことをしゃべる結果になるじゃないですか。ちゃんとうまく伝わるように話せたかな、端的に話せたかな……と不安になる。そういうことも全部整えたかった。あともう1つ。これは病院の先生にも言われたんですけど、今の音楽業界ではライブの音量が大きすぎるんです。これでは聴いてる人の耳もおかしくなりますよと。堂本さんのような方が警鐘を鳴らして音作りをされるというのもすごく大事なことですよ、とお医者さんがおっしゃっていて。ただ、機材を1つ変えるのもけっこう大変なんですよ、大きな組織にいると。組織の中で「このスケジュールで、この機材を用意して」とやっていると迷惑をかけてしまう。だったら自分のフィールドで完結できる状況を作って音楽活動をやっていけば、来場される方の体にとってもいいかなと思ったんです。

──切実な問題ですね。確かに、大きな音量でも気持ちよく聞こえることもあれば、それほど大きな音でもないのにやけに耳が痛いと感じることもあります。

「ここのkHzを上げてここの周波数をカットする」と細かくやればいいだけなんですけど、だいたいはメインの音量をボンと上げちゃうんですよね。音量を上げなくても上がっているように感じさせることだってできるんです。業界全体をどこまで変えられるかわからないけど、少しずつそういうところも変えていけば、自分の負担も減っていく。そういうことも含めて、新しいフィールドに行って環境を大きく変える必要性があるなとすごく感じたのが一番の理由です。

──「世間に広く認知されている堂本剛」がそういった声を上げることはすごく意義深いことだなと思いますし、頼もしいなと感じます。

ひと手間加えて音作りを意識するだけでも全然変わると思うんです。世の中の常識、日本の音楽業界のライブの常識が変わっていくといいのにな、とはちょっと思ってるんですよね。

エンドしてリスタートする.ENDRECHERI.の新たな一歩

──今までのフィールドが「アイドル」というカテゴライズの中にあったことで、堂本さんの音楽に触れる機会がなかった人も多いと思うんですよね。そのあたり今後は変化があるのではないでしょうか。

「興味はあるけど、でもなあ」と思っていた人はたくさんいらっしゃると思うし、何が悪いとも僕は思わないです。でも自分の人生にはずっとそれが生じてしまうんでしょうね。フェスに出させてもらったときなんかにSNSとかでいただく意見は「めちゃめちゃファンクやってんねや」とか「もうちょっと早く知っておけばよかったな」みたいなものが多いけど……。

──「でもワンマンライブに行ったら若い女の子ばかりだろうからハードル高いな」と踏みとどまってる人は多いかもしれないですね。

実際はそんなことなくて、老若男女、小さいお子さんもいるし、おじいちゃんおばあちゃんもいらっしゃいます。それこそPファンクと同じなんですよね。この宇宙船にいれば何も関係ないし、誰も気にしていない(笑)。ただ.ENDRECHERI.に興味があって来てんねんなという人たちが集まってる。もしこのインタビューを読んで「1回ライブに行ってみようかな」と思ってもらえたのであれば、なんかもう、気分転換ぐらいの気分で来てもらえたら(笑)。

──バラエティなどで観ている印象と、ゴリゴリにファンクな音楽性にも開きがあるから「ライブだとどうなるんだ?」という疑問もあるかもしれないですね。MCどうなるんだ?とか。

話してることはけっこうね、奈良生まれってこともあってちょっと説法っぽいとか言われるんですよ。「お坊さんがライブやってるみたいですよ」とかよく言われるんですけど(笑)、奈良で生きてるとお寺や神社が身近にあるからしゃあないんです。あの環境もPファンクみたいなもんで。いろんな宗派があって、いろんな角度から今を唱えるけれど、願っているのは同じ世界平和っていう。そういう場所で生まれ育っているから自然と身についている概念で。奈良でライブをやると本物のお坊さんも来てくださいますよ(笑)。

──(笑)。

「お坊さんが説法と説法の間に演奏してる」みたいなことも言われますけど、本人は真面目に適当にやってるだけなんで、ホントに気分転換ぐらいの気持ちで、ちょっとスタバに行くぐらいの気持ちで来てもらえたら(笑)。新しいフィールドで新しい出会いを熱望している感じですね、今は。

──4月10、11日には東京ガーデンシアターでのバースデーライブ「.ENDRECHERI.『Birthday Premium Live』」、さらに5月からは全国ツアー「.ENDRECHERI. LIVE TOUR 2024『RE』」とライブが続きます。新たなフィールドでの第一歩となりますね。

.ENDRECHERI.には「END」と「RE」が入っていて。何度終わってもいいし、何度始めてもいいよっていうメッセージがあるんですよ。自分らしくあるためにノイズをカットしながら生きていったとしても、時代が変わっていく中で挑み続けることはけっこう大変で。「ここに住んでみたけど、やっぱちょっと違うな」と思ったら引っ越しするみたいな感じと言うのかな。まあ実際に引っ越しするのは大変ですけども(笑)、そんくらいの感じで人生やればいいじゃんって思ってる。終わることを、変わることを恐れないでほしい。4月10日が誕生日なんで、自分がこの地球上に生まれた日という意味合いの大きな日にリスタートできることは非常に重要で。エンドしてリスタートする.ENDRECHERI.の世界観を体感できるライブにしたいと思います。

プロフィール

1979年4月10日生まれ、奈良県出身のシンガーソングライター。2002年にシンガーソングライターとしての活動を始め、2005年にはファンクミュージックを追求するプロジェクト・ENDLICHERI☆ENDLICHERI(現:.ENDRECHERI.)を始動。剛 紫(つよし)名義のプロジェクト・美 我 空や“架空の国”をコンセプトにしたプロジェクト・SHAMANIPPONなどさまざまな表現形態を持つ。2024年4月に.ENDRECHERI.としてバースデーライブ「Birthday Premium Live」、5月より全国ツアー「.ENDRECHERI. LIVE TOUR 2024『RE』」を行う。

<衣装クレジット>
・RBTXCO/PR.ARTOS
・ジャーナル スタンダード / ジャーナル スタンダード表参道(03-6418-7961)

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