ヤバTのMVはワンカットがウケる
僕が学生の頃は映像編集できる人なんてほとんどいなかったのに、今は誰でもできる時代になったじゃないですか。だから今、自分が撮影技術、編集技術の面でほかの人より特別うまくできることはないと思っていて。そうなるともうアイデア次第なんですよ。ヤバTなんてその最たる例です。誰もヤバTのMVに撮影技術やカメラワークは求めていないので、もうアイデア勝負。「かわE」のフラッシュモブが失敗するというアイデアや「無線LANばり便利」の定点カメラの前でずっとごちゃごちゃやって最後に家のWi-Fiのパスワードを公開するみたいな、そういうアイデアだけ。それだけでやってる気がします。
ほかの人のMVはすごく時間をかけてアイデアを練るし、編集も時間をかけるんですけど、その労力を自分にかけたくなくて、ヤバTのMVってすごくシンプルでワンカットのものが多いんです。編集するのが大変だからというのももちろんあるんですけど、ヤバTのMVの場合は単純なやつほどウケるんです。「KOKYAKU満足度1位」のMVはライブ映像みたいな編集もしたし、カッコいいカット割りもしたし、ストーリー仕立ての凝った内容にしたんですよ。でも全然再生回数が伸びない! あんなにがんばったのに! めちゃくちゃカッコいい演奏シーンとシュールなドラマシーンで構成した「Tank-top in your heart」もそう(笑)。逆にシンプルに作った「無線LANばり便利」やハリウッドに行くっていうワンアイデアだけで作った「あつまれ!パーティーピーポー」はめちゃくちゃ再生される。たぶんそういう気を張ってない感じがヤバTのMVには合ってるんですよね。去年出したアルバム「You need the Tank-top」の特にリード曲にしてるわけでもない曲「げんきもりもり!モーリーファンタジー」もワンカットでMVを作ったら結局それが一番再生されてて。編集せんほうが再生されるんやったら編集せんほうがええやんっていう至極真っ当な理由でラクをしています(笑)。
ワンカット撮影は当日の大変さはありますけど、撮ったあとに編集をいっぱいするより全然ラクです。その日にみんなでがんばればいいだけだから。最新作の「くそ現代っ子ごみかす20代」のMVもワンカットで撮りました。ヤバTみたいな何をしでかすかわからへん人たちにはワンカットのMVがホンマにオススメです。でもカッコよさを売りにしている人はちゃんとカット割りして作ったほうがカッコいいと思います。
映像もお笑いもベタが大事
誰でも映像を簡単に作って発信できるようになって、その中で目立つためにはアイデアが必要だという話はしましたけど、そのアイデアを生み出すためのインプットも大事だと思っていて。MVなんてホンマにあるあるとパロディの連続やし、それのもとになるのは自分の中に蓄積された“面白いもの”だと思うんで、自分の中にそういう要素をたくさん取り込むことは面白い映像を作るうえで重要なことやと思いますね。オリジナリティ100%でバズる映像ってなかなかないんですよ。ヤバTの映像もオマージュと言うほどではないですけど、基本に沿っている中で1個ズラすみたいなアイデアが多くて、完全に理解できないものはないはず。つまりカオスではないんですよ。吉本新喜劇と同じで、「あ、いつものやつや、いつものやつや、いつものやつや……そこでスカすんかい!」っていう。そういう面白さがヤバTの映像にはあると思っています。
「ヤバみ」のMVなんかは当時ドローン撮影が流行っていたので「ヤバTも流行りに乗ってドローン使うんや」っていうところから始まり、サビになるとグングン本人たちから離れていくっていうボケだったんです。ホンマにベタなことをやってからズラすようにしてます。
僕、基本ベタができひんのはダメやなと思ってるんです。だからこそ作品にわかりやすさを求めるんですよね、僕自身が。自分のやりたいことを突然やろうとすると何もわからないものになる。急に何が起きてるのかわからないからベタをやるのが大事やと思うんです。「M-1」でもベタなネタが高得点になったりするじゃないですか。おいでやすこがさんなんてホンマにベタなことをやって高得点を取ったし。基本って大事なんですよ。
夢はテレビで自分の番組を持つこと
今後寿司くんとして作品を作るなら、大学の卒業制作で作った「あつまれ!わくわくパーク」みたいなオムニバス作品をもう一度やりたいですね。「あつまれ!わくわくパーク」は大人向けの子供番組みたいなイメージで作った作品で、主演の体育くんが子供たちと一緒に歌を歌うパートがあって、アニメがあって、体操があって、またアニメがあって、エンディングがあるという構成なんです。NHKの子供向け番組って全部短いじゃないですか。歌番組、人形劇、体操……いろんなジャンルの短編がたくさん流れてる。あれって子供が飽きひんように作ってるんでしょうけど、僕の作品も飽きひんように観てもらいたいんで、作るならオムニバスがいいなって。
テレビが好きなのでテレビで自分の番組を持つというのはずっと夢ですね。すごく大変でしょうけど。音楽とかコントとかをアートっぽく見せられるような番組が作れたらいいなと思います。ただもう今は音楽と自分のバンドのMVしかやってへんので、あまり大きい声でやりたいとは言えないです(笑)。映像は作るのにすごく時間がかかるので、バンド以外の映像はやりたくてもなかなかできないなと思います。学生時代はたくさんしばた(しばたありぼぼ。ヤバTのベース&ボーカル)に手伝ってもらってましたし、もりもと(もりもりもと。ヤバTのドラム&コーラス)も最近コントしたいって言ってたんで、バンドで番組を作るのもいいかもしれない。
寿司くんが影響を受けた映像作品
「オー!マイキー」
小学生の頃に大好きでよく観ていました。間のつけかたやブラックユーモアの部分で影響を受けていると思います。「寿司くん」の間の感じとか、突然顔がアップになるところとかすごく「オー!マイキー」っぽいなと思います。
映画「マスク」
ジム・キャリーの出ているコメディ映画はだいたい好きなんですけど、中でも「マスク」が一番好きで、子供の頃から何度も観ています。ジム・キャリー扮するスタンリーがマスクに変身するときに高速回転するんですけど、僕が高速で動くものが好きなのはその高速回転から来てると思っていて。あと「マスク」は物語の構成も好きで、映画を観終わったときの幸福感はヤバTの音楽自体やライブの構成に通ずるものがあると思います。胸クソ悪いものよりハッピーエンドな作品が好きなんですよね。
ヤバイTシャツ屋さんの今後のスケジュール
テレ朝チャンネル1 / スカパー!オンデマンドで、3月5日に開催されたツアー「
テレ朝チャンネル1 / スカパー!オンデマンド「『ヤバイTシャツ屋さん “You need the Tank-top” TOUR 2020-2021』完全版」
2021年4月3日(土)21:30~23:00
※スカパー!オンデマンドでは4月10日(土)23:59まで配信
ヤバイTシャツ屋さん “こうえんデビュー” TOUR 2021
2021年5月11日(火)京都府 宇治市文化センター 大ホール
2021年5月12日(水)京都府 宇治市文化センター 大ホール
2021年5月18日(火)大阪府 高槻現代劇場 大ホール
2021年5月19日(水)大阪府 高槻現代劇場 大ホール
2021年5月26日(水)静岡県 アクトシティ浜松 大ホール
2021年5月27日(木)静岡県 アクトシティ浜松 大ホール
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ベタを大事にする寿司くん | 映像で音楽を奏でる人々 第20回 - 音楽ナタリー
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