「佐々木敦、アイドルにハマる」

佐々木敦、アイドルにハマる 第4回 [バックナンバー]

2020年代の幕開け

新たなディケイドの始まり

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HEADZ主宰者・佐々木敦が、ここ最近急激にハマっているというアイドルについて語るロングインタビューの最終回。新型コロナウイルスの影響で文字通りの“接触問題”に直面しているアイドルシーンは今後どこに向かっていくのか。今回も佐々木が怒涛のテンションで語る。

取材・/ 南波一海 インタビュー撮影 / 臼杵成晃 イラスト / ナカG

新しい方法を受け入れるような土壌

──佐々木さんは最近、初の小説「半睡」を発表されました。小説を書いてるときにデスクワークが続くからYouTubeを観る時間が増えたというのもあるんですか?

YouTubeは仕事絡みでチェックするくらいだったんだけど、前にも言ったように、1万字とか2万字以上の長い原稿を書くことが増えてきて、ひと仕事終えると動画をダラ見するようになった。俺は放っておくと10時間くらい延々と集中しちゃうタイプなんだけど、さすがに疲れるじゃない(笑)。最初はご多分に漏れずミュージックビデオばっかり観てたんだよね、古いのもいっぱい上がってるから。小説は去年の夏の終わりくらいからほかの原稿の隙間を見つけてやってたんだけど、それもあってとにかく机に向かってる時間が以前よりもさらに増えた。だからまあ、逃避だよね(笑)。最初は癒しのために犬の動画をひたすら観てたんだよ。なのにふと気付いたら、どんどんアイドルに……。

──逃避でアイドルにハマるのは典型的なパターンの1つでもあって。

そうなんだよね。

──ゆるめるモ!の「逃げろ!!」なんて、エスケーピズムそのものじゃないですか。

そうそう。あれが出発点だもん(笑)。いや、俺自身は逃げないよ。自分はどちらかといえば逃げない性分、逆境に強いタイプだけども、影響力のある人たちに「逃げてもいいよ」って、みんなに言ってほしい。俺も言いたいけど、あんまり説得力ないからさ。そうそう、作詞家の児玉雨子さん。めちゃくちゃいい歌詞書くよね。最近のハロプロの多くの名曲は彼女が書いてるじゃん。

──近年の楽曲はかなり増えてますね。どれも素晴らしく個性的で。

ちゃんとグループごとに違う色を出してるし、すごいなと思う。作詞・作曲・編曲ということにも、スタッフや作家のクリエイティビティの新陳代謝がハロプロはちゃんとできてると思う。

──雨子さんは高校生時代、長編小説が「すばる文学賞」の選考でいいところまでいっている人なんですよね。かなり早い段階から物書きの素養があった人で。高校生の時点で、宮本佳林さんも歌っていたコピンク(※静岡朝日テレビで放送されていた情報番組「コピンクス!」に登場するキャラクター)の曲に歌詞を書いたりしてるんですよ。

まだすごく若いんだよね、アイドルと年齢が近いアマチュア出身の人がメインの作詞家になれるというのもいいことだと思う。

──今は新たな才能にも門戸を開いてるわけですからね。作詞・作曲家の星部ショウさんもそうですし。

そうそう、星部ショウのギミック感、ノベルティ感って素晴らしいセンスだよね。昔ながらの徒弟制というか年功序列というか、確固たる業界のルールみたいなものがあって、そういう縛りが、ある種の息苦しさとか、既得権益的なものを生んでる部分って今も絶対にあるわけじゃない? それによって守られてるものもあるのかもしれないけれど、やっぱり新しい人材や新しいやり方が入ってこられないのはダメだと思うし、未来がないと思う。僕は日本の音楽ビジネスは基本的にはすでに崩壊してると思っているので、崩壊したことによって今までとは違うやり方でやらざるを得ない部分もあるし、新しい方法を受け入れるような土壌ができたということはあると思うんだよね。

南波一海と佐々木敦

南波一海と佐々木敦

新型コロナが及ぼす深刻な“接触問題”

──また別の話になってしまいますが、崩壊という意味では今、しんどいですよ。アイドルは基本的に握手会とかチェキ撮影で諸々のお金をペイしているので、それが新型コロナの影響で壊滅的な状態なので。

ああ、そうか。文字通りの接触問題だよね。濃厚接触や“三密”が問題となった今は特に。

──その脅威が立ちはだかっている。

俺は昔、渋谷のTSUTAYA O-nestで「エクス・ポナイト」っていうトークと音楽が合体したイベントを年に何度かやってたんだけど、ある時期からアイドルイベントがめちゃ増えてきて、O-nestが貸りられなくなっちゃった。スケジュールが空いてないって。だから最初はアイドルを恨んでた(笑)。でも、今みたいな状況になるまでは、小さなライブハウスにとってアイドルブームは救いになってたわけだよね。だって午前中からイベントを組めるんだから。

──1日にイベントを3回やったりすることもありますからね。

客も来るし。それは1つの救いではあったよね。アイドルがライブハウスに出るようになって、ロック系やノイズ系のミュージシャンがアイドルと急接近するという謎の現象が起きていった。それが必ずしもいいことだけではないと俺は思ってる部分もあるけど。テンテンコなんか素晴らしいと思うよ。彼女は音楽センス的に虹釜太郎に近いものがあると思う(笑)。でもそうだね、今のアイドル業界にとってはコロナの被害は相当大きいよね。ゴールデンウイークぐらいまでこの状況が続いたら、解散するグループも出てくるかもしれない。というか運営がもたないよね。自転車操業というか、日銭でやってるところが多そうだし。

──その影響はもちろんハロプロも例外ではなくて。

そうだ。ハロプロって年明けに全員集まってくじ引きをしてシャッフルユニットを決める企画があるよね。

──「ひなフェス」の企画ですね。

その動画を全部チェックしたんだけど。

──くじ引きの動画も観てるんですか(笑)。

いや、そういうのが観たいんだよ(笑)。で、今年のくじ引きは欠席者がゼロだったわけ。ハロプロメンバーが58人全員(当時)出てきて。俺は全員の顔をほぼほぼわかるようになっているんだけど……でもたぶん中止だよね(※その後、一部公演が無観客で開催され、その模様が生中継された)。あのときに決まったことが全部おじゃんっていう。だから本当に今は試練の時だよね。解散するこぶしファクトリーも、卒業しちゃうアンジュルムの室田瑞希も、フィナーレがどうなるかわからない。アンジュルムはむろ(室田)のあとに船木結も卒業する予定だけど、春ツアーが終わってからということだから、おそらくキャンセルだよね(その後、船木の卒業延期が発表された)。延期になってもツアーがいつか再開されるんだったらいいけど、例えば学校とかが絡んでて春以降は活動できないっていう可能性もあるじゃない?

──こぶしファクトリーの広瀬彩海さんは春から大学生で、本来は解散ライブをして、進学という順序なんだけど、それが変わる可能性もある(※その後、解散ライブは日程を変えずに無観客で開催、生中継された)。

そういうことを考えると、すごくかわいそうだなって。だけどコロナは全人類の問題だからね。無理やりやるわけにもいかないだろうし。でも、無観客ライブをやればいいじゃん、BAD HOPみたいに。あと山本精一さんみたいに。

──山本さんは配信もしてないじゃないですか(笑)。

無観客無配信という(笑)。ホントあの人最高だよ、尊敬してる。

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