第38回東京国際映画祭が開催されている11月1日、
「スプリングスティーン 孤独のハイウェイ」は、1982年リリースのアルバム「ネブラスカ」創作の舞台裏に焦点を当てた物語。大ヒット作「Born In The U.S.A.」発表前夜、名声の影で深い孤独と葛藤に揺れ、キャリアの岐路に立つスプリングスティーンの姿が描かれる。「クレイジー・ハート」の監督
まずは五十嵐が、「監督は『クレイジー・ハート』の成功を経て、ミュージシャンの伝記映画を撮ってほしいと無数の依頼があったそうです。例えばエルヴィス・プレスリー、マイルス・デイヴィス、チェット・ベイカー、グレイトフル・デッド……大物の企画がいっぱい来たけど、すべて断ったそうです」と解説する。そしてクーパーが出会ったのが、映画の原作となった「Deliver Me from Nowhere(原題)」だった。同書は元ミュージシャンのウォーレン・ゼインズが、ライターおよび音楽評論家に転身して「ネブラスカ」の制作過程を記した音楽評論。五十嵐は「小説や自伝的な“盛った”ところがないので、監督は『これはイケる!』と思ったのでは」と制作背景に言及した。
湯川は本作を「いわゆる音楽映画というより、人間ブルース・スプリングスティーンを深掘りした作品」と評し、「彼の音楽は1編1編が短編小説のよう。そんな彼をここまで見せてくれたことが、この映画の一番の素晴らしさ」とコメント。スプリングスティーン役で主演した
スプリングスティーンは1985年・1988年・1997年と過去に3回来日しており、湯川・五十嵐ともに本人と対面している。五十嵐が「1997年の来日時、ウェルカムパーティで湯川さんがブルースの隣で長く話されていたのが印象的。あのとき、何を話されていたんですか?」と尋ねると、湯川は「もうほとんど忘れちゃってるんですけど(笑)、本当に印象に残っているのは1つだけ。ブルースはエルヴィスに影響を受けて、ロックを目指した人。『エルヴィスのことは本当にお好きだったんですか? どこがよかったんですか?』と伺って、『Everything(すべてだよ)』とおっしゃったことを鮮明に覚えています」と述懐。このエピソードには五十嵐も「映画を観たら『なるほど』と思うシーンがあります」とうなずいた。
トークの締めくくりに、湯川は「実在の人物が多く登場し、人間ドラマとしても音楽史としても、値打ちがあって楽しいものではないかと思います。とにかく観ていただくことが何より先決」と観客に呼びかける。五十嵐は「1人のアーティストが『ネブラスカ』という偉大なアルバムを生み出すまでに、どれほど精神的な苦闘を重ねたか。スプリングスティーンは『幸せになるよりも偉大な作品を作って、偉大なアーティストになりたい』と努力してきた人。その信念が描かれています」と力強く述べた。
そして湯川は最後に「彼はニュージャージー出身だけど、ネブラスカは中西部でちょっと遠い。『ネブラスカには行ったことあるんですか?』と聞いたら、『もちろん行ってるよ。アメリカは、僕は本当にあちこち行ってるよ』という答えがあったことも申し上げておきます」と付け加え、イベントの幕を引いた。
第38回東京国際映画祭は11月5日まで開催。「スプリングスティーン 孤独のハイウェイ」は11月14日に全国で公開される。
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11/1の上映前トークで見どころなどをお話して頂いた模様が詳しく書かれています。
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