ミニシアター・エイド基金 トークライブ「日本映画の共助に向けて ミニシアター・エイドのバトンの行方」が、8月17日に東京・銀座ブロッサムで行われた。この記事では第2部、第3部の模様をレポートする。第1部の模様は既報の通りだ。
イベントは、ミニシアター・エイド基金の軌跡を振り返る第1部、今後の日本映画の展望を語る第2部、質疑応答の第3部という構成で進行。MotionGallery代表の大高健志、プロデューサーの岡本英之、高田聡、そして
コロナ禍を経て全国のミニシアターと向き合った濱口たち。ミニシアター・エイド基金でのクラウドファンディングはあくまで緊急策だったと話す彼らは、プロジェクトを通して日本における文化支援の脆弱さを痛感したという。深田は「1本の作品を作るのにとても多い資金が必要となる」と述べ、映画製作会社などからの出資、金融基金からの融資、公的機関からの助成金、民間からの寄付・協賛といった3つの資金調達の方法を説明する。
深田は、フランスや韓国の予算額や資金制度を例に挙げ、「各国の文化予算額としてフランスは4640億円、韓国は2653億円、そして日本は1038億円。これらの数字は、その国がどれだけ文化を大切にしているかの指標になると思います。アメリカは民間からの寄付・協賛の資金制度が非常に整っている。日本は先進国の中でも低いところに位置します」と日本の文化支援の脆弱さを指摘した。
フランスにはCNCという映画産業を支援する組織「国立映画映像センター」が、韓国にはKOFIC(Korean Film Council)と呼ばれる映画振興委員会が存在する。これらが映画振興における助成システムを管理しており、芸術文化の多様性を守っていくために支援を回していくシステムが日本でできないかと奮い立ったのが「日本版CNC設立を求める会(action4cinema)」だ。CNC、KOFICの仕組みついては図1、図2を参照してほしい。
是枝裕和らとともにaction4cinemaのメンバーとして活動する諏訪は「ミニシアター・エイド基金をはじめ、いろいろな支援で不況をなんとか乗り切ることはできたが、それはあくまで緊急的なケアでしかない。今後似たような事態に陥ったときはどうするんだろうと。映画業界そのものには何かあったときに支え合うシステムがない。コロナ禍でそれが明らかになった」と語る。さらに諏訪は「CNCのような仕組みを日本でなんとか作れないだろうかと。簡単に説明すると、CNCは微収と再分配。映画によって生み出された収益を循環させていく。それから教育、過酷な労働環境も改善していかなければならない。ハラスメントの問題も含まれています」と続けた。
濱口は「意識的な支援ではなく、無意識的な支援が求められる。心臓は意識的に血液を循環させているわけではなくて、無意識的に血液を循環させているわけですよね。今回はお金が血液であって、日本はひたすら心臓マッサージをしてなんとか動かしているような状況なんです。世界に比べて日本は予算が少ないですよね。そうすると人件費などが切り詰められて過酷な労働環境が生まれてしまう。そんな状況を脱するために、フランスのCNCやチケット税のようなシステムが日本で普及することを願っている」と訴えた。
また岨手は労働環境に言及する。2020年に第2児を妊娠した岨手は、監督作「
井浦新や斎藤工らとMini Theater Parkを運営する渡辺は「世界中の映画館が閉まっている。劇場で働く人たちにも生活がある。アルバイトの学生にも未来がある。そんな中で我々が黙っていていいわけがない。私は社会のシステムを知って、後世によりよい環境を残していきたいと思った。さまざまな生き方があることを示せるのが映画だと思う。そんな映画や映画館がなくならないようなシステムを作ることができたらどんなにいいか。まずは声を上げていくべきだと思います」とコメントした。
第3部の質疑応答では「若い世代はなぜミニシアターで映画を観ないのか」という声が。諏訪は「現代はオンラインで映画を楽しむことができるのが一つの要因かと。ですが、映画館で映画を観ることが教育につながる可能性があるのではないかと思っている。フランスの例ですが、幼稚園の子たちが映画館に連れていかれるんです。毎週水曜日は子供向けのプログラムを各映画館が上映するとか、ある国では試験問題に映画という項目が入っていたり。映画人を育成しようと思ってやっているわけではないけれど、映画を生活に組み込むことで何かの輪が広がるんじゃないか」と述懐した。
なお本イベントは8月19日に京都大学 吉田キャンパスでも開催。濱口らミニシアター・エイド運営事務局メンバーのほか、ゲストとして俳優の井浦新、中島歩、映画監督の是枝裕和が登壇する予定だ。
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