2024年の第77回カンヌ国際映画祭でグランプリに輝いた「
本作はインド・ムンバイで看護師をしているプラバと、歳下の同僚アヌの物語。2人はルームメイトとして一緒に暮らしているが、真面目なプラバと陽気なアヌの間には少し心の距離があった。そんな中、プラバとアヌは病院の食堂に勤めるパルヴァディを故郷の村まで見送る旅へ出ることに。神秘的な森や洞窟のある別世界のような村で、2人はある出来事と遭遇する。カニ・クスルティ、ディヴィヤ・プラバ、チャヤ・カダムらが出演した。
ムンバイの夜市が放つ独特の青い光や、海辺の村ラトナギリに広がる赤い大地など、印象的な色使いが特徴の1つとなっている本作。ムンバイの色彩について、カパーリヤーは「モンスーンの時期になると、町全体が青に染まるんです。雨がたくさん降るので、家や屋根をブルーシートで覆う光景があちこちで見られて、その青が町の色になっていく」「電車はラベンダーやパープル系の色で、それもまた、この街のトーンを作っているように感じました」と説明する。後半の舞台であるラトナギリに関しては「ラトナギリは赤い土壌が広がる地域で、岩も赤く、島も赤いんです。あの土地特有の“ラテライト”という赤い土が広がっていて、風景の印象ががらりと変わりました」と語った。
カパーリヤーが通ったインド映画テレビ研究所では、日本映画も重要なカリキュラムとして組み込まれており、小津安二郎や黒澤明の作品を通して映画作りを学んだという。さらに彼女は是枝について「私にとって非常に深いインパクトを与えてくれました」と言及。中でも是枝の監督作「幻の光」には強く影響を受け、「色のトーンや画面構成など、今の私の映画作りにも大きな影響を及ぼしていると思います」と語った。
濱口の作品にも強く惹かれており、個人的に“濱口竜介レトロスペクティブ”のラインナップを作るほどだとか。「『寝ても覚めても』や『ハッピーアワー』など、いろいろ観ましたが、正直まだテーマを完全に理解できていない作品もあります。でも、そのあいまいさもまた魅力」「彼は現代のインドの監督たちにとって、例えば“女性がどのように生きていくのか”ということについて大きな影響力があると思う」と述べた。
現在のインドの映画業界について、カパーリヤーは「インドは人口が非常に多いので、映画のスタイルもストーリーテリングの手法も多岐にわたります。特に近年では、インディペンデント系の映画が海外にどんどん進出していて、監督自身が配給の努力をしながら世界に発信している」と報告。そして「インディペンデント作品を配給するというのはリスクもあります。でも、そのリスクを受け止めながら配給しようとする動きが高まっていて、今はまさにインディペンデント映画にとって大きなチャンスの時期なのではないかと感じています」と見解を示した。
「私たちが光と想うすべて」は7月25日よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほかでロードショー。カパーリヤーの長編デビュー作「
映画ナタリー @eiga_natalie
「私たちが光と想うすべて」監督パヤル・カパーリヤー、是枝裕和や濱口竜介からの影響語る
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青に染まるムンバイの色彩やインドのインディペンデント映画の現在についても言及
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