「万引き家族」で第71回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した是枝。“
映画ナタリーの取材によると本作は、是枝が約15年前に「サンセット大通り」「オープニング・ナイト」「黄金の馬車」などを念頭に置いて着手した戯曲「クローク」がもとになっているという。当初は“演じること”をテーマにしようとしていたが、「La Verite」の脚本としてリライトする中で変化があったそうで「母と娘の確執がどう解けていくか、もしくは解けないのかが着地点になってきている。家族を顧みなかった才能ある女優の母、そしてその才能に嫉妬しながら同じ職業には就かなかった娘の、ドロドロとした話です」と是枝は語る。
子役に台本を渡さず、口頭でセリフを伝え演出する手法で知られる是枝。取材を行った6月時点では、本作の子役オーディションに難航していたようで「オーディションでは口頭でセリフを渡して演じてもらったが、それが自分の言葉としてその子から出ているのかわからない。日本と同じやり方でできないことが課題です」と苦労を述べる。子役に関してホークにも相談したという是枝は「『6才のボクが、大人になるまで。』の撮影で、どうやって子供からあの演技を引き出したかを聞きました。子役の演出に悩んでいる部分については、力強い味方を得た思いです」と告白。
また子役以外のオーディションに関しても「アドリブが始まったら僕にはわからない。現場ではドヌーヴさんやビノシュさんとコミュニケーションを取って、演出サイドにも立ってもらいながら進めることになるかもしれません。どうしたら現場が“生物”として動いていくか、これから考えていきます」とコメントし、脚本についてドヌーヴから意見を聞いていることも明かした。なおホークの役は当て書きしていたそうで、パルムドール受賞後に直接出演交渉したときのことを「『(受賞後の)このタイミングだと断りづらい』と言っていました(笑)。それまでは不安でしたが、イーサンの出演が決まってから7対3くらいの割合で期待のほうが大きくなった」と回想。「『この人に演じてもらえたらいいな』と思っていたキャスティングが全部実現してしまったので、さあどうしようかという気持ち。がんばります」「一緒にやろうと声をかけていただいたのがたまたまフランスの方々だったという話なので、あまり気負ってはいません。ただ、日々新鮮さは感じています」と語った。
またこの発表にあたり、キャストからコメントも到着。ドヌーヴは「一緒に映画を作れる……それもフランスを舞台に! 魅力に溢れ、ユーモアと同時に残酷さを備えた素晴らしい脚本です」と、ビノシュは「14年前にお会いしてから、この瞬間を待っていました。是枝監督の視線は、柔らかなベルベットのレーザーのように、私たちの心を見透かします」と是枝との作品作りを喜ぶ。ホークは「監督の映画は素晴らしい。現役で活躍している偉大な監督の1人とコラボレーションできることはまたとない機会です」と、サニエは「ほとんどの是枝作品を観て、交流を持ち続けていました。パリで映画を撮られることを、私は秘かに夢見ていたんです!」とコメントしている。
※「La Verite」の「e」2つはアクサンテギュ付きが正式表記
カトリーヌ・ドヌーヴ コメント
ここ数年、是枝監督の映画を観て、そしてパリ、カンヌ、東京でもお会いする機会がありました。賞賛の気持ちをお伝えすることはできたのですが、まさか私たちが一緒に映画を作れる日が来るなんて想像もしていませんでした。一緒に映画を作れる……それもフランスを舞台に! 魅力に溢れ、ユーモアと同時に残酷さを備えた素晴らしい脚本です。言語の壁については、恐れるよりも私はむしろ好奇心をそそられます。それがもう1つの挑戦になるだろうと知りつつも、是枝監督と一緒に仕事をするのがたいへん楽しみです。
ジュリエット・ビノシュ コメント
是枝監督とこの人生の一時を分かち合えることを楽しみにしています。14年前にお会いしてから、この瞬間を待っていました。是枝監督の視線は、柔らかなベルベットのレーザーのように、私たちの心を見透かします。
イーサン・ホーク コメント
是枝監督にお会いできて嬉しかったです。監督の映画は素晴らしい。現役で活躍している偉大な監督の1人とコラボレーションできることはまたとない機会です。また、パリで、カトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュと一緒に映画を作れるなんて、夢のようなお話です。ある1人のアメリカの俳優にとって、本当に唯一無二の体験になりそうです。
リュディヴィーヌ・サニエ コメント
是枝監督に初めてお会いしたのはカンヌで、「そして父になる」という素晴らしい作品の上映時でした。それ以来、ほとんどの是枝作品を観て、交流を持ち続けていました。パリで映画を撮られることを、私は秘かに夢見ていたんです! この作品への参加をお声がけいただいた時には、耳を疑いました。一緒に映画作りができること、そして是枝監督のフランスの夢の一部になれることを、とても誇りに思います。
是枝裕和 コメント
役者とはいったいどんな存在なのだろう。役を生きている時、演技で泣いている時、笑っている時、役者本人の存在と感情はどこにあるのだろう。そんな素朴な疑問から書き始めた脚本でした。
今から15年程前に、「クローク」というタイトルで劇場の楽屋だけを舞台にした一幕もののお芝居を書き始めたのがスタートでした。しかし、この時は残念ながら力不足で脚本は完成しませんでした。2011年に、以前から親交のあったジュリエット・ビノシュさんが来日し、対談させていただいた折に、「何か将来的に一緒に映画を」と意気投合しました。企画のキャッチボールをしていくプロセスで、引き出しの奥に眠らせておいたこの企画が再浮上し、フランスを舞台に書き直してみることにしました。その時にこの物語を、女優の母と女優にならなかった娘の話にしてみようというアイデアが生まれました。
カトリーヌ・ドヌーヴさんは、自作のフランス公開時にお会いしたことがありました。自分にとっては、フランス映画のアイコンのような存在ですが、せっかくフランスで撮影するのなら、と思い切ってオファーをさせて頂きました。映画について、演じることについて、ドヌーヴさん本人にヒアリングを重ねながら、今脚本を執筆中です。
今回は言語や文化の違いを乗り越えて監督するという、刺激的なチャレンジになりますが、本物の「役者たち」に正面から向き合ってみたいと思っています。
関連記事
是枝裕和の映画作品
関連商品
リンク
- KORE-EDA.com
※記事公開から5年以上経過しているため、セキュリティ考慮の上、リンクをオフにしています。
てれびのスキマ/戸部田 誠 @u5u
是枝「アドリブが始まったら僕にはわからない」「どうしたら現場が“生物”として動いていくか、これから考えていきます」/是枝裕和、新作キャストにC・ドヌーヴやJ・ビノシュ迎える「期待と不安が7対3」 - 映画ナタリー https://t.co/T2UAn8NdGF