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第71回カンヌ国際映画祭で最優秀賞にあたるパルムドールを受賞した本作は、犯罪でしかつながれなかったある一家の“許されない絆”を描く人間ドラマ。父・柴田治をリリー・フランキー、治の妻・信代を安藤サクラ、信代の妹・亜紀を松岡茉優、祖母・初枝を樹木希林、治の息子・祥太を城桧吏、柴田家で暮らすことになる少女ゆりを佐々木みゆが演じた。
是枝はパルムドールのトロフィーを持って登場し、「カンヌでは、演出、役者、スタッフすべての調和が取れていたと褒めていただいたことが何よりうれしかった。審査員の女優さんたちが、この映画に出ている女優たちを褒めてくれたことも心の底からうれしかったです」とコメント。「海外の映画祭に参加するようになってから一番言われたのは、日本映画には社会と政治がないということ。それはやはり、そういう要素のある作品が興行として成立しにくいと日本の大きな配給会社が判断してきたからだと思います」と話し、「僕自身も2000年代後半から家族ドラマにこだわっていました。それは僕が父親になり、自分にとって切実な問題を狭く深く掘り下げてみようと思ったから。でも今回は、社会とか日本の問題と家族の接点、そこから生まれる摩擦をどう描くかということを意識しました」と続ける。
「21年ぶりのパルムドールということもあって、思った以上にこの映画がいろんな場所で取り上げられている。普段映画の話をしない人も、本作について語っているようです」と語る是枝。「一部では、僕と僕の映画が何やら物議を醸しているようですが」といたずらっぽく笑い「それでも、多くの人にこの作品が届いているということについては前向きに捉えています」と述べた。また「今回一番印象に残ったのは、親から虐待を受けて施設に入っている子供たちの取材をしたときのこと。ちょうど取材をしているときに学校から帰ってきた女の子に『今は何を勉強してるの?』と声をかけたら、ランドセルから国語の教科書を出して『スイミー』を読み始めたんです。施設の職員の方が『みんな忙しいんだからやめなさい』と言っても、彼女は最初から最後まで読み通した。そして僕たちみんなで拍手をしたら、すごくうれしそうに笑った。そのとき、この子は今は離れて暮らしている親に向けて『スイミー』を読んでいるんじゃないかと思いました。その朗読しているときの顔が頭から離れなくて、映画にも『スイミー』を絡めたシーンを入れたんです」と明かす。
現在うわさになっている次作については「どこまでしゃべっていいのかわからないんですけど、秋に入ってから、主にフランスの役者さんたちと映画を撮ることになっています。6月の終わりぐらいからパリに渡っていろいろ準備をします。それにしても、よくわかんないんだよね。キャストからキャストのギャラまで話題になっていて、びっくり(笑)。来月ぐらいには正式な製作発表をしたいと思います」と笑顔で伝える。「本作を作るにあたり、政治家や官僚を観客として意識したか」という質問には「意識しませんでした」ときっぱり答え、「テレビ業界で働いていた頃から先輩に言われていたのは、不特定多数に向けたメディアほど、1人の個人に向かって作れということ。20代の頃に言われてから、ずっとそう心がけています。今聞かれてはっきりしたけど、今回はさっき話した、『スイミー』を読んでくれた女の子に向けてこの映画を作ったんだと思います」と話した。
実は本日6月6日が56歳の誕生日だった是枝。バースデーケーキが運ばれると照れくさそうに笑い、「もしあなたが審査員の立場でパルムドールを差し上げるならどのコンペ作品にしますか?」という質問に「自分の映画の取材が連日入っていてほかのコンペの作品はまったく観られなかったんです。観た中で言うなら『万引き家族』が一番よかった」と答えて爆笑を誘った。
「万引き家族」は、6月8日より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国にてロードショー。
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