本日8月27日、
「塚本晋也『野火』全記録」は、塚本のロングインタビューを筆頭に、「野火」制作から海外映画祭への出品、宣伝、全国行脚などを収録したもの。そのほか第71回ヴェネツィア国際映画祭公式会見のレポートや、塚本が大林宣彦と登壇したトークイベント、原一男との対談の模様も掲載されている。
塚本は「こういう映画館なら作品を上映してもらえる、海外映画祭へ出すならこんなふうに……と、映画を作りたい人の参考になることが具体的に書かれています。自分の言葉だけじゃなくて、作品を支えてくれたスタッフのインタビューも入っていますね」と本書を解説。また電車の乗車時刻や弁当を購入した時間、ホテルへのチェックイン時間などに至るまで詳細に書かれていることに触れて「最初のイメージはことりっぷ。堀江謙一さんの『太平洋ひとりぼっち』のような冒険ものにしたいとも思って」とにこやかにコメントした。
続いて、フィリピン、埼玉・深谷、沖縄、ハワイなどで撮影が行われた際の写真が次々とスクリーンに投影される。年少の兵士役・森優作が撮影の合間にうずくまっている写真のあとに、リリー・フランキーと塚本が楽しげに談笑しているカットが映し出されると、客席から笑いが起こった。塚本は撮影時を振り返って「見せるところと見せないところの配分はすごく気を付けていました。リリーさん演じる安田がぐちゃぐちゃになるところを見せる必要はないけど、奇襲を受ける場面で人間の脳みそを踏みつけちゃうところはきちんと描きました」と述べる。
主要キャストのメイクについては「田村は肺病の役だから熱にうかされている感じで紫や赤を目元に塗りましたが、途中でふと『これでいいのかなあ』と思って……(笑)」と前置きして「基本的にはリリーさんも中村達也さんも自分でメイクをしていましたね。中村さんは下地に茶色を混ぜずに、いきなり泥遊びをした子供みたいに真っ黒に塗っちゃったんです。僕はそれを見つけた親のように『あららら達也何しちゃったの! 自分がカッコいいってことを忘れちゃったの?』と思って」と明かして笑いを誘う。特殊造形に関しては、「ボランティアスタッフの中に昔の日本兵のような顔をしている人がいたので、彼ともう1人痩せている顔の人の型を取りました。だから死体は彼らの顔をしているんです」と語り、写真がスクリーンに映されるとその見た目の生々しさに客席から驚きの声が上がった。
イベント中盤には、塚本の生コメンタリー付き予告編上映が。塚本は「ハワイ、沖縄、ハワイ、沖縄……。フィリピン、深谷。これはフィリピン、こっちは深谷」とシーンごとに撮影地を挙げていき、「田村が女の人を殺しちゃう場面はセットを建てようと思っていましたが、フィリピンでいい教会を見つけたんです。でもさすがに教会の中で血しぶきの上がる殺害シーンを撮影するわけにはいかず、そこだけは深谷で撮りましたね」と説明する。さらに「侵入映写室24時」と銘打ったコーナーでは、普段はなかなか見ることのできない映写室内部が塚本自らが撮影した写真によって披露される。塚本は「古い映写室って神棚があったりするんですけど、兵庫・豊岡劇場ではその横にブルック・シールズやエマニエル(夫人)のピンナップが貼られていて」と話して観客を和ませた。
最後に塚本は「おもに去年の動きが収められています。野火を公開した年でもあるし、戦後70年でもある1年。この映画を作る前に戦争体験者の方々にインタビューをしたのですが、その方々が亡くなってしまった大事な年でもありました。終戦70年だけじゃなく、71年、72年、73年とその先もなんらかの形で『野火」を上映していきたいと思います」と語り、イベントを締めくくった。
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リリー・フランキーの人生相談担当 @lilyjinsei
リリーさんとのエピソードも!→ 塚本晋也が「野火」と向き合った日々振り返る、中村達也との撮影エピソードも - 映画ナタリー https://t.co/TpsHLleKUS