月刊おもしろ映画宣伝2025年2月号

ビニールタッキーの「月刊おもしろ映画宣伝」 2025年2月号 [バックナンバー]

映画宣伝はアップデートされ、よりよい方向に向かっている

洋画が苦戦していると言われる昨今、真摯な仕事を続けてほしい

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映画会社は、日々工夫をこらし、作品の魅力をPRしようと努力している。時には評論家や俳優が真面目に作品の魅力を語り、時には他ジャンルとコラボし客層の拡大を図り、時にはダジャレやこじつけでSNSでのバズりを狙い……。そんな施策を日々ウォッチしている“映画宣伝ウォッチャー”ビニールタッキーが、前月気になった映画の記事についてコメントする連載が、「月刊おもしろ映画宣伝」だ。

今月取り上げたのは「おばあちゃんと僕の約束」「愛を耕すひと」「ロングレッグス」「白雪姫」「ウィキッド ふたりの魔女」「野生の島のロズ」「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」の7作品。記事末ではMVP(モスト・ヴァリュアブル・プロモーション)も発表している。

/ ビニールタッキー

「月刊おもしろ映画宣伝」2月号をお届けします。「おもしろ映画宣伝」とは、海外の映画を日本で宣伝する際に発生する面白いPRイベントや不思議なコラボなどの案件をまとめて総称するために私が勝手に名付けた名前です。このコラムはその月にあったおもしろ映画宣伝をピックアップする連載コラムです。今月もご紹介していきましょう!

「おばあちゃんと僕の約束」

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タイ映画「Lahn Mah(原題)」の邦題が「おばあちゃんと僕の約束」であることが明らかに。1月22日に観客参加型の“邦題決定”試写会が東京・アキバシアターで行われ、同タイトルに決まった。

先月のコラムでも扱ったタイ映画の邦題が「おばあちゃんと僕の約束」に決定! 観客が邦題を考えるというチャレンジングな企画だったので突飛なタイトルになったらどうしよう……と思っていたのですが映画の雰囲気が感じられるいい邦題になりました。

イベントには、700名以上の応募の中から選ばれた80名の観客が参加。配給元のアンプラグド代表・加藤武史と映画パーソナリティの伊藤さとりが登壇し、加藤は「映画はお客さんのもの。お客さんが観てくれて初めて成立する。それなら、一緒に考えてもらうのが面白いのでは?と思った」と試写会開催の経緯を語った。
伊藤によると、配給会社では映画を観たときに印象的だったアイテムや感じた言葉を入れて邦題を決定することが多いという。この日のトークでは客席から「家」「約束」「お粥」「思い出」「一番」「遺産」など数多くの言葉が飛び出した。今回は、配給元が提案した3つの案に投票するか、ほかの邦題を思いついた人は空欄に記入するというアンケート方式を採用。集計の結果、多数票が入った「おばあちゃんと僕の約束」に決定した。

一般観客がなかなか知ることのできない「配給会社が邦題を決定するまでのプロセス」が知れてとても面白いです。この「観客参加型邦題決定試写会」はかなり面白い企画だと思いました。なかなか運用が大変だとは思いますが、毎年行われる恒例行事みたいになったら洋画に注目が集まっていいな、と思いました。

「愛を耕すひと」

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2月14日公開のニコライ・アーセル監督作で、イダ・ジェッセンによる歴史小説「The Captain and Ann Barbara(英題)」を原作とする「愛を耕すひと」。18世紀デンマークの史実をもとに、ひとり荒野の開拓に挑んだ英雄とその“家族”による愛の軌跡が描かれる。
「平和の国の島崎へ」の主人公は、マッツをモデルとしている。瀬下はマッツの演技について「怒り、焦り、悲しみ、絶望、優しさ、希望、キャラクター…これらを真顔で完璧に伝えてくれます」とコメント。濱田も「マッツ・ミケルセンの巧みな『陰影』によってこのケーレンという重層的な人物が見事に表現されています」と称えた。

実在の俳優さんをモデルにマンガのキャラクターを構築する、ということはよくありますが、その意図を汲み上げてトリビュートイラストを描いてもらうというのはとてもいい試みだと思います。実際にその俳優さんに愛着や尊敬を抱いている人だからこそ描ける、特徴をよく捉えたイラストだと感じました。

「ロングレッグス」

イベントレポート
マイカ・モンローニコラス・ケイジが共演したホラー映画「ロングレッグス」の日本最速試写会が、2月21日に東京・松竹で実施。都市伝説に精通したユニット・都市ボーイズの岸本誠が参加した。

「ロングレッグス」と都市伝説の組み合わせと聞いたときはどういうことだろう?と思ったのですが、イベントの内容を読んで納得しました。奇妙な暗号や不可解な謎がちりばめられた映画「ロングレッグス」はまさに都市伝説的な不気味さがあります。映画宣伝を見ていると、世の中にはさまざまな得意分野を持つ人がいることに毎回驚きますし、そういった人たちに的確にオファーする宣伝マンのセンスに毎回感心します。

「白雪姫」

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ディズニーが贈る実写映画「白雪姫」の“プレミアム吹替版”で大塚明夫平川大輔小島よしお浪川大輔日野聡が7人のこびとのうちの1人を演じることが明らかに。井上和彦が白雪姫の父親でかつて優しさにあふれた王国を治めていた王、中井和哉が白雪姫の“運命の人”ジョナサンの仲間クイッグの声を担当することもわかった。

既にダイアン津田篤宏さんが7人のこびとの1人を演じることは決定していましたがほかはどうなるのかな、と思ったら予想外の豪華さに驚きました。まるでハリウッドのアクション大作映画の吹替陣かと思うぐらいの顔ぶれですが7人のこびと役です。小島よしおさんも洋画の吹替は経験済みですので素直に楽しみです。

大塚明夫 コメント:
長いことこの仕事をしてきましたが、今回のような役は珍しい、というより初めてかもしれません。
芝居もですが何より唄わなきゃならない!
これがどうにも厄介でした(笑)
知ってる唄だと侮るなかれ、ものすごいアレンジで私のような素人には恐ろしい試練でした!
頑張りましたので、どうぞ皆様劇場でお楽しみください♪

オファーされた本人たちも驚いている様子がよくわかります。たぶんこの意外性も含めたチョイスなのかもしれません。期待が膨らみますね。

「ウィキッド ふたりの魔女」

イベントレポート
映画「ウィキッド ふたりの魔女」ジャパンプレミアの舞台挨拶が本日2月19日に東京・TOHOシネマズ 日比谷で開催され、キャストのシンシア・エリヴォアリアナ・グランデ、監督のジョン・M・チュウが登壇した。

今月はうれしい来日もありました。シンシア・エリヴォ、アリアナ・グランデ、ジョン・M・チュウが来日してジャパンプレミアに登壇。みんな終始楽しそうで見ているこちらもうれしい気持ちになります。

またチュウは「正反対の2人(エルファバとグリンダ)が違いを乗り越えて友情を結ぶ。こういったものを世界中が欲していると思うんですね。美しい物語であり、こういう出会いが可能なのだとこの映画は見せてくれます」と言い、続けてネタバレをしそうに。エリヴォとグランデが慌てて止めると会場に笑いが起きる。

特にこの一幕はいい話だなーと思いつつ笑ってしまいます。日本語吹替を担当した皆さんも楽しそうで、特に高畑充希さんがシンシアに対して同じ舞台役者という立場で質問をされているのが印象的でした。とてもいい来日イベントだったと思います。

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映画「ウィキッド ふたりの魔女」とネイキッドがコラボした没入体験型イベント「WICKED×NAKED FLOWERS FOR YOU」が3月1日から9日にかけて東京・有楽町マルイで開催される。

映画「ウィキッド」といえばさまざまなコラボが展開されていますが、個人的に印象に残ったのがこちら。ウィキッドとネイキッド……ダジャレか?と思ったのですが、内容を見てみるととても丁寧に作られたイベントで心を改めました。恥ずかしながら「NAKED FLOWERS FOR YOU」というアートフラワー施設の存在をこのコラボで初めて知りました。こういう発見があるのも映画宣伝のいいところですね。

「野生の島のロズ」

特集記事
映画ナタリーでは「野生の島のロズ」監督のクリス・サンダースと、映画監督・山崎貴の対談を実施。クリエイター同士の2人が本作のビジュアル面における魅力や観客に与える“没入感”について語り合ったほか、お互いが過去に手がけた「ゴジラ-1.0」「ヒックとドラゴン」にまつわるトークも飛び出した。

来日したクリス・サンダース監督はさまざまなインタビューや対談を行っているのですが、この対談はかなり面白かったです。クリス監督は対談相手がクリエイターだと、相手の作品について「どのように作ったんですか?」「あれはどういう考えでやったんですが?」と質問しまくるタイプの人のようで、この対談も「ゴジラ-1.0」の話をしまくっているのが印象的です。むしろ山崎監督が「野生の島のロズ」の話に戻るように仕向けているような感じがして笑ってしまいました。それだけクリス監督が映画作りに非常に熱心な方だということがよく伝わる対談でした。もちろん「ゴジラ-1.0」ファンの方も必読な記事ですよ!

「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」

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応援上映が行われるのは2月9日。東京・新宿バルト9では10時10分の回、大阪のT・ジョイ梅田では10時50分の回で、チケットは各劇場のサイトで販売中。なお新宿バルト9の席数は残りわずかとなっている。配給を担うクロックスワークスのnoteには「本物、あるいは本物に見える刀剣、銃器、また叉焼飯の持ち込みはご遠慮ください」といった注意事項が記載されている。

これは宣伝というより記事のタイトルが秀逸です。映画がカルト的な人気になると応援上映が開催されることがありますが、鑑賞レギュレーションや注意事項にその映画にちなんだ特殊ルールが記載されていることがあります。「トワイライト・ウォリアーズ」の場合、劇中に登場するおいしそうな叉焼飯が話題になりましたが、鑑賞レギュレーションに「叉焼飯の持ち込みはご遠慮ください」と記載されていました。こういう映画に対する愛情が細部に込められている案件が個人的に大好きです。

そして最後は私が勝手に決める今月のMVP(モスト・ヴァリュアブル・プロモーション)。今月はこちらです!

イベントレポート
香港映画「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」の来日舞台挨拶が、本日2月23日に東京・新宿バルト9で行われ、龍捲風(ロンギュンフォン)役のルイス・クー、陳洛軍(チャン・ロッグワン)役のレイモンド・ラム、十二少(サップイー)役のトニー・ウー、四仔(セイジャイ)役のジャーマン・チョン、監督のソイ・チェンが登壇した。

今月も「トワイライト・ウォリアーズ」が強かった! 先述した通り一部の映画ファンの間で熱狂的な人気となっている「トワイライト・ウォリアーズ」ですが、「この盛り上がりが香港にも届き、日本のファンに直接感謝を伝えたいという制作陣の思いから急遽来日が決定した」とのことで本当にうれしい話です。

ファンの熱気に迎えられ、登壇者たちは笑顔で手を振りながら登場。おそろいで着用しているスウェットは、本日の舞台挨拶のために日本のスタッフに内緒で作成したものだという。ルイス・クーは「皆さん、こんにちは。私はルイスです。愛してる」と日本語でスマートに挨拶。レイモンド・ラムは「本作を気に入っていただけてとてもうれしいです。またいい作品を持って来たいと思います」とはにかみながら感謝を述べ、トニー・ウーは「このあとパート2、パート3と続くので、監督の意向に沿ってがんばります」とさらなる意気込みをのぞかせる。ジャーマン・チョンは「皆さんこんにちは! 愛してる、too!」とルイス・クーに続いて日本語で挨拶し、指ハートと笑顔で観客の心を射止めた。

ファンサービスが手厚い人たちだとは聞いていましたが、内緒でおそろいの服まで作って着用してくるとは……。ファンが応援し、それを受けて出演者が喜び、感謝をお返しすることでまたファンも喜ぶ、という幸せしかない空間が広がっていることが感じられます。

九龍城砦を再現するために日本にあった資料や写真集が役に立ったという監督の話や、キャスト陣の印象的なシーンの話(まさに叉焼飯を食べるシーンの裏話や、感傷的なシーンの解釈の話)など、まさにFunnyな意味でもInterestな意味でも「おもしろい」来日イベントだったと思います。

2024年2月の連載開始からちょうど1年が経ちました。このコラムでは毎回さまざまな映画宣伝を取り上げて、その魅力や面白さをお伝えしてきました。書き続けて感じたのは、「映画宣伝はよくなっている」ということです。個人的な趣味として何年も前から映画宣伝、特に海外作品の映画宣伝を見続けていますが、世界の価値観や映画内の価値観がアップデートされていくのと同じように、映画宣伝もよりよい方向に向かっていると感じます。その映画のよさや見どころを伝える際に、限られた予算の中でどういうタレントさんにオファーし、どのようなコラボをするのが最良かということを真剣に考えているのが伝わります。また、海外からゲストが来日した際も、そのゲストがちゃんと映画をPRできるように配慮し、ゲスト本人も楽しめるような企画や対談を考案したりと、真摯な仕事っぷりが感じられます。洋画が苦戦していると言われる昨今ですが、このように実直で丁寧な宣伝を続けることで盛り上がってくれたらいいな、と思うばかりです。

以上、月刊おもしろ映画宣伝2025年2月号でした。次回もお楽しみに!

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ビニールタッキー @vinyl_tackey

映画ナタリーさんでの連載コラム「月刊おもしろ映画宣伝」2月号が公開されました。今回で連載1周年を迎えることができました!皆さんに感謝です。そして月間MVPはやはりあの楽しいうれしい舞台挨拶イベントです!ぜひご覧下さい。
https://t.co/ODx8meAZ99

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