左から「スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー」「フランケンシュタイン」「THE MONKEY/ザ・モンキー」ポスタービジュアル

ビニールタッキーの「月刊おもしろ映画宣伝」 2025年9月号 [バックナンバー]

クリエイターの技巧を伝えてくれる宣伝に感謝

サウンドデザインやロゴのローカライズまで

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映画会社は、日々工夫をこらし、作品の魅力をPRしようと努力している。時には評論家や俳優が真面目に作品の魅力を語り、時には他ジャンルとコラボし客層の拡大を図り、時にはダジャレやこじつけでSNSでのバズりを狙い……。そんな施策を日々ウォッチしている“映画宣伝ウォッチャー”ビニールタッキーが、前月気になった映画の記事についてコメントする連載が、「月刊おもしろ映画宣伝」だ。

今月は「THE MONKEY/ザ・モンキー」「ジュリーは沈黙したままで」「スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー」「フランケンシュタイン」「マインクラフト/ザ・ムービー」「視える」「ラスト・ブレス」について取り上げた。また記事末ではMVP(モスト・ヴァリュアブル・プロモーション)も発表している。

/ ビニールタッキー

「月刊おもしろ映画宣伝」9月号をお届けします。「おもしろ映画宣伝」とは、海外の映画を日本で宣伝する際に発生する面白いPRイベントや不思議なコラボなどの案件をまとめて総称するために私が勝手に名付けた名前です。このコラムはその月にあったおもしろ映画宣伝をピックアップする連載コラムです。今月もご紹介していきましょう!

「ジュリーは沈黙したままで」

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第97回アカデミー賞国際長編映画賞のベルギー代表に選出された「ジュリーは沈黙したままで」の本予告がYouTubeで公開された。
予告のナレーションは伊東蒼が担当。今回が映画予告初ナレーションとなった伊東は「実際にテニスプレイヤーでもあるテッサ・ヴァン・デン・ブルックさんのプレイシーンは観客をスクリーンに惹きつけ、未成熟な若き心の機微をこぼさない表情や仕草は、今この瞬間を逃してしまえば、二度と出会うことはできないような切なさで満ちていました」とコメントした。

まずはシリアスな映画の話題から。この連載で私が常に注目している「芸能人ナレーション予告編」です。今回はスポーツ界に一石を投じるベルギー映画「ジュリーは沈黙したままで」のナレーションを俳優の伊東蒼さんが担当しています。静かで冷たい空気の中で1人苦悩する15歳のジュリーに、子役時代から活躍してきた伊東さんの声が寄り添っているようでとても雰囲気があります。ぜひご覧ください。

映画「ジュリーは沈黙したままで」本予告

「ラスト・ブレス」

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2012年にスコットランド沖で発生した最悪の潜水事故をリアルに描いたサバイバルスリラー「ラスト・ブレス」。このたび、本作のサウンドデザイナーであるベン・ベアードのコメントが到着した。

監督や脚本家、俳優などのコメントはよく見かけますが、サウンドデザイナーのコメントというのは珍しいな、と思ってピックアップさせていただきました。サウンドデザインに相当こだわっている作品だということがこのニュースだけでまず伝わりますね。

ベアードは「ダイナミックな音と静寂のバランスをどう取り入れるか、何度も議論を重ねました」と制作を振り返る。また「テレビのドキュメンタリーはチャンネルを変えられるかもしれないという不安を抱えながら制作されますが、映画の場合は観客が自ら選んで観に来ているので、よりダイナミックと静寂の緩急をつけた表現に挑戦できるんです」と語った。
その「挑戦」は、フィン・コール扮する新米ダイバーのクリス・レモンズが水深90m地点で事故に巻き込まれ、彼の命綱が無残に引きちぎられる場面に反映されている。ベアードは「クリスの命綱が切断された瞬間、命の保証はもちろん、『ほかの登場人物たちから完全に切り離された』ことをより印象強くするため、切断シーンの音楽も含めてすべてをカットしました」と、“絶望の静寂”を表現したことを明かす。該当のシーンは「映画『ラスト・ブレス』“極限潜水”立体音響予告編(イヤホン推奨)」でも確認できる。

「チャンネルを変えられるかもしれない、という制約から解放されるとダイナミックな表現ができる」というのはクリエイターならではの視点という感じで目から鱗でした。そしてこの表現を一部体感できる「立体音響予告編」がなかなか画期的ですのでぜひイヤホン等を使用してご覧ください。本当に音が立体的で驚きますよ!

映画「ラスト・ブレス」“極限潜水”立体音響予告編(イヤホン推奨)

「視える」

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アイルランド発の超常サスペンスホラー「Oddity」の邦題が、“ギャル霊媒師”として親しまれる飯塚唯の霊視鑑定によって「視える」に決定した。11月7日より東京・シネマート新宿ほか全国で順次公開される。

ギャル霊媒師が霊視で邦題を決めるホラー映画」のニュースを先月のコラムで取り上げましたが、その結果が出ました。予想よりシンプルな邦題に一瞬驚きましたが、インパクトを狙いすぎたり流行語やトレンドを無理やりねじこんだりするよりは全然いいですし、静かな雰囲気でいい邦題だと思えてきました。観客参加型で邦題を決めたタイ映画「おばあちゃんと僕の約束」もそうでしたが)、このように邦題を企画で決めると自然とシンプルでいい邦題になる傾向があるのかもしれません。今後も注目したいです。

なお、邦題の候補には「視える」のほかに「ゴーレムと女霊媒師」「アイズ・オブ・デス」があった。去る9月1日に東京都内で行われた特別試写会イベントにて、飯塚が「視える」を選出し、権利元の承認を経て正式に決まった。

ほかの候補も味わい深くていいな、と少し思ってしまいました。でも「視える」も好きですよ!

「マインクラフト/ザ・ムービー」

イベントレポート
映画「マインクラフト/ザ・ムービー」の「デジタル配信 / 4K UHD、ブルーレイ、DVDリリース記念イベント」が本日9月3日に都内で開催され、ジェラードンかみちぃが登壇。本来は相方・アタック西本も参加予定だったが、前日に肉離れを起こしたことからリモートで出演した。

なぜ映画マインクラフトのイベントにジェラードンが……と考えてから1秒ぐらいでアタック西本さんが四角いからだと気付いて笑ってしまったので僕の負けです。マイクラバージョンの“型抜き通り抜け”を見た時は「こういう宣伝がやっぱり好きだな」としみじみとした気持ちになりました。肉離れは相当痛いのでどうかご自愛ください、西本さん。

「THE MONKEY/ザ・モンキー」

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漫☆画太郎が映画「THE MONKEY/ザ・モンキー」の“スペシャルコンテンツ”として描き下ろしたマンガが、オフィシャルサイトで公開された。

これはナイス! 個人的に漫☆画太郎先生が好きなのでどうしても取り上げてしまいます。最初はびっくりするような組み合わせかもしれませんが「不条理ギャグ」と「突然の死」は画太郎先生の作風でもあるので映画の世界観とぴったり当てはまっています。こうして見ると「THE MONKEY/ザ・モンキー」って漫☆画太郎先生のマンガみたいな話だったな……とさえ感じてきました。いいコラボだと思います。

「スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー」

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「スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー」の特報映像、ポスター、場面写真が公開された。

全世界が注目する、と言っても過言ではないかもしれない映画「スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー」の情報が一挙に公開されましたが、個人的に注目したいのはポスターです。

「スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー」ポスタービジュアル ©2025 Lucasfilm Ltd.

「スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー」ポスタービジュアル ©2025 Lucasfilm Ltd. [拡大]

過去のハリウッドの冒険活劇映画や、イギリスのハマー・フィルムの怪奇映画などの懐かしい雰囲気のあるポスターデザインに、日本版のタイトルロゴもできるだけ合わせるようにデザインしているところがニクいです。洋画のタイトルロゴを日本版にローカライズする際、いかに元のデザインを踏襲しつつ日本語化するかという点で毎回苦労されていると感じますが、これはかなり技アリという感じでよかったです。

そして最後は私が勝手に決める今月のMVP(モスト・ヴァリュアブル・プロモーション)。今月はこちらです!

「フランケンシュタイン」

イベントレポート
Netflix映画「フランケンシュタイン」のジャパンプレミアが9月24日に東京のユナイテッド・シネマ アクアシティお台場にて開催。監督のギレルモ・デル・トロと、スペシャルゲストの小島秀夫が登壇した。

今月のMVPは「フランケンシュタイン」です! ギレルモ・デル・トロ監督の7年ぶりの来日もうれしいのですが、ジャパンプレミアの対談相手として親交の深い小島秀夫さんが登壇というのが最高の組み合わせだと感じました。このキャスティングの時点でMVPです。公私共に友人でありお互いをリスペクトし合う仲だからこそ生まれる“いい雰囲気”が流れていました。

「フランケンシュタイン」は10月24日から一部劇場にて公開。11月7日よりNetflixで世界独占配信される。©Ken Woroner / Netflix

「フランケンシュタイン」は10月24日から一部劇場にて公開。11月7日よりNetflixで世界独占配信される。©Ken Woroner / Netflix [拡大]

ひと足先に本作を鑑賞した小島は「美しくて優しい映画でした。僕的には、フランケンシュタインとモンスターの関係を父と子の関係に昇華したことにびっくりした。原作も読んでいますけど、今まで見えなかったところが見えて、さすがデル・トロ! ギレルモ! マイフレンド!って感じです」と伝える。デル・トロは「私にとって『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』と『フランケンシュタイン』は、同じ物語の2つの側面であると捉えています。壮大な世界の中で親密な関係を描くことがとても大切でした。ヴィクター自身の物語ですが、彼自身がヒーローでもあり自分の敵でもある内容となっています」と語った。

打てば響くようなやりとりがいいですね。物語の構造の話から怪物のデザインについてなど、同じ「モノを創り出すクリエイター」としての目線で語られる話がとても興味深かったです。記念撮影では2人でハートマークを作ったりと仲睦まじくてとても良いイベントだったと感じられます。やはり来日イベントには作品への理解が深く、愛情を持って接することのできるゲストが登壇してくれるとうれしいものですね。

今月もさまざまな宣伝がありましたが、特に感じたのはクリエイターの職人魂でした。ギレルモ・デル・トロ監督のフランケンシュタインへのこだわりや「ラスト・ブレス」のサウンドデザイナーのお話などなど。さらには「スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー」の日本版ロゴや漫☆画太郎先生の「THE MONKEY/ザ・モンキー」マンガも含まれるでしょうか。映画はあらゆるクリエイターたちが自身の創造力と技巧を駆使して組み上げるものです。それを宣伝する際にもクリエイターたちのこだわりや工夫を伝えてくれるとファンとしてもうれしいですし、作品への思い入れや愛情がより深くなります。そして映画のローカライズや宣伝イラスト・マンガにもクリエイターたちの工夫が感じられるとうれしくなるものです。映画宣伝好きとしてすべてのクリエイターの皆さんに感謝とエールを送りたいと思います。いつもありがとうございます!

以上、月刊おもしろ映画宣伝2025年9月号でした。次回もお楽しみに!

ビニールタッキー

映画宣伝ウォッチャー。ブログ「第9惑星ビニル」の管理人。海外の映画が日本で公開される際に発生する“おもしろ宣伝”を観察・収集する。トークイベント「この映画宣伝がすごい!」を毎年開催。

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©2025 C2 MOTION PICTURE GROUP, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. ©Ken Woroner / Netflix ©2025 Lucasfilm Ltd.

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【コラム】ビニールタッキーの「月刊おもしろ映画宣伝」9月号

映画にはクリエイターの技巧が詰まっているもの……その細部の工夫を伝えてくれる宣伝に感謝

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