
ビニールタッキーの「月刊おもしろ映画宣伝」 2025年8月号 [バックナンバー]
作品を愛する映画ファンと、これから映画ファンになるかもしれない人に向けたサービス精神
映画館が活気にあふれる今だからこそ
2025年9月11日 11:30 2
映画会社は、日々工夫をこらし、作品の魅力をPRしようと努力している。時には評論家や俳優が真面目に作品の魅力を語り、時には他ジャンルとコラボし客層の拡大を図り、時にはダジャレやこじつけでSNSでのバズりを狙い……。そんな施策を日々ウォッチしている“映画宣伝ウォッチャー”ビニールタッキーが、前月気になった映画の記事についてコメントする連載が、「月刊おもしろ映画宣伝」だ。
今月は「
文
「月刊おもしろ映画宣伝」8月号をお届けします。「おもしろ映画宣伝」とは、海外の映画を日本で宣伝する際に発生する面白いPRイベントや不思議なコラボなどの案件をまとめて総称するために私が勝手に名付けた名前です。このコラムはその月にあったおもしろ映画宣伝をピックアップする連載コラムです。今月もご紹介していきましょう!
「バレリーナ:The World of John Wick」
映画「バレリーナ:The World of John Wick」のジャパンプレミアが、本日8月7日に東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズで行われ、主演のアナ・デ・アルマス、監督の レン・ワイズマンが登壇。7年ぶりに来日したアルマスは「しばらく来られなくて恋しかったです。街を歩き回ったり、神社に行ったり、ジブリ美術館にも行ってきました。食事も史上最高においしくて、すごく楽しんでいます!」と満喫している様子を伝えた。
今月も景気のいいニュースから。7年ぶりの来日だというアナ・デ・アルマスがさっそく日本を満喫しているようで何よりです。観光地もいろいろある中でジブリ美術館を選ぶというのがいいですね。
角田から2人へ、名前入り柔道着のプレゼントも。アルマスは「I love it!」と喜んですぐに柔道着を羽織り、ワイズマンも黒帯をキュッと締めてご満悦の様子。角田が「アナさんが着ると道着もおしゃれに見えますね」と感心すると、アルマスは「デニムと合わせて街を歩いたことはある?(笑)」と茶目っ気たっぷりに尋ねる。鏡割りでもアルマスはノリノリで小槌を振り下ろし、最後まで笑顔を絶やさず日本のファンとのひとときを過ごした。
来日イベントでは名前入りの法被などがプレゼントされることが多いですが、今回は柔道家の角田夏実さんが特別ゲストということで名前入りの柔道着がプレゼントされました。確かに「ジョン・ウィック」シリーズは柔道技もよく登場するので映画の内容に合わせたいいプレゼントだと思いました。アナもノリノリで対応してくれてうれしいですね。ますますファンになりました。
「F1(R)/エフワン」
IMAXでの再上映は、8月22日から28日にかけて実施。東京・グランドシネマサンシャイン 池袋、大阪・109シネマズ大阪エキスポシティなど13館で行われる。
こちらはうれしいうえに珍しいニュースです。夏休みシーズンで激戦区となっていたIMAXですが、ここにきて「F1(R)/エフワン」のIMAX再上映が決定しました。国内興行収入19億円の大ヒット映画になったということも喜ばしいのですが、これから観る観客に向けて「この映画にふさわしい大きなスクリーンで観てほしい」という配給会社さんと映画館の意志のようなものを感じるのが何よりもうれしいですね。粋な計らいだと思いました。
編集部注:上記のニュースで触れたIMAX再上映期間は終了したが、さらに9月12日から18日までIMAXやスクリーンX再上映を含む上映が行われる。上映館などは映画の公式Xで告知される。
「ジュラシック・ワールド/復活の大地」
ロバート秋山の“体モノマネ”をモチーフにしたTシャツ「BOTY」の新作として、映画「ジュラシック」シリーズとのコラボモデルが本日8月6日に発売された。
すっかりおなじみとなったロバート秋山さんの体モノマネTシャツにまさかの「ジュラシック」シリーズコラボモデルが登場。芸能人ではないどころか人間でもありません。体モノマネとはいったい……。
ついに人間ではなく恐竜の「BOTY」が登場した。秋山は「なんでもアリじゃないか! もはや体モノマネの枠を超えてるじゃないか!!! ……というツッコミもあるかもしれません。まぁそうおっしゃらずに、もし少しだけお時間とご予算に余裕がありましたら、ぜひ一度お試しいただければと思います」と呼びかけている。
ご本人もその点は自覚されているようです。しかし実際のTシャツを見ると欲しくなるから不思議なものです。ラインナップも「ジュラシック」シリーズで人気のT-レックス、ヴェロキラプトル、インドミナス・レックスがそろってますし、ちゃんとキッズサイズもあるのがうれしいじゃないですか。恐竜の需要を心得ている感じがして最高です。
「Oddity」
アイルランド発の超常サスペンスホラー「Oddity(原題)」が、11月7日より東京・シネマート新宿ほか全国で順次公開。“ギャル霊媒師”として親しまれる飯塚唯が霊視によって鑑定を行い、その場で邦題を決定する最速試写会の開催も発表された。
思わず二度見してしまうニュースです。なるほどアイルランドの超常ホラーが公開されるのね……ギャル霊媒師? 霊視で鑑定してその場で邦題を決定する……?
試写会は9月1日夜に東京・日本シネアーツ 試写室で開催。飯塚はあらかじめ用意された複数の邦題案の中から、霊視による鑑定を行うという。
以前、観客参加型で邦題を決定した「
「28年後...」
ホークマン、メカルーツ原作によるTVアニメ「 ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット」と映画「28年後...」がコラボ。コラボビジュアル、コラボ映像が公開された。「28年後...」は映画「28日後...」「28週後...」の続編にあたるサバイバルスリラー。人間を凶暴化させるウイルスが蔓延してから1万228日が経過した世界を舞台に、感染を免れた人々の命懸けの戦いが描かれる。コラボ映像では 水中雅章演じるクナギ、 上田麗奈演じるカオルがナレーションを担当。コラボビジュアルでは「28年後...」のビジュアルと同じ構図で、「ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット」のキャラクターが描かれた。
考えれば考えるほど理想のコラボだと感じます。お互いにゾンビ映画から着想を得た"感染ホラー"であり、かなりクセが強いんですがそのクセが面白いという点でも似通っていると思います。迫真の演技で「28年後...」を紹介してくれるコラボ映像も最高ですのでぜひご覧ください。
【コラボ映像】「28年後...」×TVアニメ「ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット」
「グラン・ブルー 完全版 4K」
映画「グラン・ブルー 完全版 4K」の上映に際して、「ぐらんぶる」の井上堅二と 吉岡公威がコメントとイラストを寄せている。
リュック・ベッソンの大出世作にしてフリーダイビングにかける男2人の友情を描いた「グラン・ブルー 完全版」。本国フランスだけでなく日本でも社会現象となった人気作にさまざまな著名人がコメントを寄せていますがその中に「ぐらんぶる」の原作&作画コンビのお二人が。「ぐらんぶる」は水が苦手で泳げない主人公・北原伊織が、仲間たちとともに“水の中”という新世界を体感する青春マンガです。
映画について井上は「海の魅力と怖さが凝縮された素晴らしい作品!ダイビング・恋愛・友情と少しだけお酒。ぐらんぶるとも共通点がいっぱいですが――本当に僕らが紹介して良いのですか!?」とコメント。吉岡のイラストには、古手川千紗とイルカの姿が収められた。
さすがに本人たちも戸惑っている様子が見えます。しかしあえてコメントとイラストを求めた担当者さん、グッジョブです!
「ヒックとドラゴン」
ドリームワークスのアニメーションを実写映画化した「ヒックとドラゴン」と、岸本斉史によるマンガ「NARUTO -ナルト-」がコラボレーション。岸本が特別ビジュアルを描き下ろした。
これは素晴らしいコラボですね。岸本先生がアニメ映画「ヒックとドラゴン」のファンを公言していたことから実現したコラボだというのがさらにいいですね。
岸本は「アニメ『ヒックとドラゴン』は面白すぎたので僕ら漫画家仲間の間では完成度が高い傑作として通ってます。今度は実写、そりゃね、やっぱり面白すぎるよ! 実写ドラゴンの背中は更に何倍も気持ちいい! 飛べます!」とコメントしている。
さりげなくマンガ家界隈でも人気作であることをアピールしてくれています。「NARUTO」は海外でも人気なのでSNSで海外のリアクションを見てもおおむね大好評だったのがうれしかったですね。「ヒックとドラゴン」も大人気作ですのでまさに夢の大型コラボという感じでよかったと思います。
「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」
映画「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」の原作小説「九龍城砦 I 囲城」の日本での刊行を記念し、著者・余兒(ユーイー)が来日。8月2日に東京・紀伊國屋ホールでファンミーティングを行った。
まだまだ興奮冷めやらぬ「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」! ついに原作小説の余兒先生のファンミーティングが行われました。こちらの記事はかなり詳細に書かれていますのでファン必読の内容になっています。個人的には各キャラクターの名前の由来や日本のマンガの影響、今後刊行される小説の話などが興味深かったです。しかし今年1月に公開された映画の原作小説のファンミーティングが行われて、ここまで盛り上がるというのはいい話だなと思いました。改めてファンの熱気が大きなうねりを生むということを感じるイベントでした。
そして最後は私が勝手に決める今月のMVP(モスト・ヴァリュアブル・プロモーション)。今月はこちらです!
「ベスト・キッド:レジェンズ」
ジャッキー・チェンが映画「ベスト・キッド:レジェンズ」のPRのため来日。本日8月30日に東京・TOHOシネマズ 日比谷で行われた舞台挨拶に登場した。
今月のMVPは「ベスト・キッド:レジェンズ」です! このニュースを知ったときにはとにかく驚愕しました。ジャッキー・チェンが2日間で計11回の舞台挨拶に登壇!? 1日に数回舞台挨拶を行う話は聞いたことがありますが、これは回数が多すぎます。ジャッキーの相変わらずの超人っぷりをたたえたいと思います。
ジャッキー・チェンは、日本のファンに「久しぶりね!」と日本語で呼びかけ、「全員、古い友達ですね。みんな僕の映画を観て大人になったんでしょう」と茶目っ気たっぷりに約1年ぶりの来日を喜ぶ。公開初日の昨日8月29日から2日間、日本での計11回の舞台挨拶に登壇した彼は「とても忙しい(笑)。今月中旬からスイス、イタリア、ロンドン、北京、マカオ、広州、香港、セルビア、カザフスタン……自分がどこにいたのかさっぱりわかりませんが、とにかく今日ここにいるのが一番うれしいです」と語り、会場には拍手が巻き起こった。
70歳を越えても現役でアクションを続けるジャッキーに毎回驚かされていますが、スクリーンの外でもそのバイタリティは変わらないということにさらに驚かされます。これはあくまで想像の話ですが、舞台挨拶11回という無茶なアイデアもジャッキーなら進んで快諾しただろうし、なんなら本人が回数をもっと増やすように提案して11回になったのかも……と思ってしまいます。
トークの内容も主役のベン・ウォンに対するアドバイスや自身が映画を作る際に心がけていることなどとても興味深い話が盛りだくさんでした。舞台挨拶の回数ももちろんですが、内容も充実していたということでMVPを贈りたいと思います。しかし本当に無理はしないでお体に気を付けてジャッキー!とは思いました。
今月の宣伝で感じたのは主に2つのことです、1つは絶妙な組み合わせの楽しさでした。「バレリーナ」と柔道着、「ジュラシック・ワールド」と体モノマネTシャツ、超常ホラーとギャル霊媒師、「28年後...」と「ニャイリビ」、「グラン・ブルー」と「ぐらんぶる」などなど。聞いた瞬間はどういうこと?となるんですが考えれば納得のいく絶妙な組み合わせです。もう1つは粋な計らいです。「F1(R)/エフワン」のIMAX再上映、「九龍城砦」の原作者ファンミーティング、そしてジャッキー・チェンの舞台挨拶など、その作品や俳優さんに対するファンの熱意に応えてくれるような案件が多かったように感じました。それもこれも作品を愛する映画ファンと、これから映画ファンになるかもしれない人に向けたサービス精神だと感じるのです。映画館が活気にあふれる今だからこそ、こういった面白い宣伝で1人でも多くの映画ファンが生まれるといいなと思いました。
以上、月刊おもしろ映画宣伝2025年8月号でした。次回もお楽しみに!
- ビニールタッキー
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映画宣伝ウォッチャー。ブログ「第9惑星ビニル」の管理人。海外の映画が日本で公開される際に発生する“おもしろ宣伝”を観察・収集する。トークイベント「この映画宣伝がすごい!」を毎年開催。
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映画ナタリーさんでの連載コラム「月刊おもしろ映画宣伝」8月号が公開されました!今回は「サービス精神」「絶妙な組み合わせ」「粋な計らい」をキーワードに、熱かった8月の映画宣伝を振り返りました。ぜひご覧下さい。
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