香港で歴代動員数ナンバーワン(2024年9月時点)を記録したアクション映画「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」が1月17日に公開された。
1980年代、香港。密入国した若者・陳洛軍(チャン・ロッグワン)は、黒社会のルールを拒み組織に目を付けられる。追い詰められた陳洛軍が逃げ込んだ先は九龍城砦。彼はここで仲間と出会い、命を懸けた戦いに挑んでいく。出演はルイス・クー(古天樂)、サモ・ハン(洪金寶)、レイモンド・ラム(林峯)、リッチー・レン(任賢齊)ら。「ドラゴン×マッハ!」のソイ・チェン(鄭保瑞)が監督、「るろうに剣心」シリーズの谷垣健治がアクション監督を務めた。
とにかく強い男たちの友情、絆、壮絶な戦いから目が離せない本作。映画ナタリーでは、どんな痛みにもノーダメージな“システマ使い”のみなみかわ、ボディビル大会での優勝経験を誇るショーゴ(東京ホテイソン)、脅威的な仕上がりの二の腕を持つ青木マッチョ(かけおち)という屈強芸人を集め、映画の感想を聞いた。彼らを夢中にした面白さの理由とは?
取材・文 / 西森路代撮影 / 西村満
映画「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」予告編公開中
この3人の並びが特殊すぎて……(ショーゴ)
──皆さん、映画に関するお仕事をされる機会はありますか?
みなみかわ 僕は映画のコラムを書いているのでちょいちょいありますね。
青木マッチョ 僕は初めてです。
ショーゴ 僕もです。
みなみかわ これを機に?
マッチョ いやあ……(笑)。
ショーゴ それにしても、この3人の並びが特殊すぎて……(笑)。
みなみかわ 「ラヴィット!」みたいにビリビリ椅子でもあればなあ(笑)。
──今回「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」を観ていただきましたが、このようなタイプの作品はよくご覧になりますか?
みなみかわ 好きな映画が「イップ・マン」なので。香港映画、カンフー映画はよく観るほうです。
ショーゴ 僕はジャッキー・チェンの映画は好きで観てきました。
マッチョ 「好きな映画は何?」と聞かれたら、チャウ・シンチーの「カンフーハッスル」と答えるくらい、香港アクション映画はすごく好きです。なので今作も楽しめました。
みなみかわ 今回、大ボスを演じたサモ・ハンもかっこよかった。昔は「燃えよデブゴン」のおかっぱの印象だったけど、最近は「イップ・マン」あたりの口ひげやオールバックのイメージが強いですね。
ショーゴ 昔のイメージが強かったですが、今回も強いし動けるしで、びっくりしました。
みんなの好きな要素がたくさん詰まった映画(マッチョ)
──映画を観た感想はいかがでしたか?
みなみかわ アクションの部分も面白いですし、インド映画の「RRR」みたいにちょっと笑えるところがありつつ、人間模様もきっちり描いていたところがよかったです。舞台となっている九龍城砦は、日本の軍艦島をほうふつさせるところもあって、見応えたっぷりでしたね。1980年代の九龍城塞は大工場みたいだったってソイ・チェン監督が言っていた記事も見ましたし、城塞の中にコミュニティが存在しているところが面白かったですね。
ショーゴ アクションシーンや設定も、細かいこと気にしないでいいんだなって思えて、面白かったです。そういう意味でも「RRR」に通じるところがあって、爽快感がありました。
みなみかわ 大胆さがいいよな。
マッチョ ストーリーがしっかりしているので、大胆な部分とのバランスがよかったですよね。
ショーゴ 僕は、アクション映画だと「アベンジャーズ」みたいに人間離れしているアクションも好きだし、ギリギリ人間ができるリアルなアクションも好きなんです。この作品は、人間がギリいけるかもしれないっていうアクションのリアリティがよかったです。
みなみかわ 重力無視してるところもあったけど(笑)。
ショーゴ 竜巻の気流に乗って人間が上昇する場面ですね(笑)。でも、人間ってまだ脳の2割しか使ってないらしくて。もし10割使えたらとんでもない能力が発揮されると言われているので、あの竜巻のシーンは……ギリいける!
みなみかわ 「それはできひん」じゃないんや(笑)。
ショーゴ 気功を駆使する悪役・王九(ウォンガウ)も面白かった。ちょっと“超えてる”なとは思ったんですけど、ギリいけるかもっていうスレスレ感が楽しかったです。
みなみかわ “すべての攻撃を無力化する”という気功のシステム、とにかくめっちゃ強かった。
マッチョ 最初はすぐ負けそうだなと思っていたのに。
ショーゴ 映画の冒頭、主人公の陳洛軍(チャン・ロッグワン)とバスの中で乱闘するシーンでは、王九がそこまで強いとは誰も思ってなかったですよ。
みなみかわ サモ・ハン(演じる大ボス)も王九が強くてびっくりしてたよな。
マッチョ 僕、自分が“国民代表”ぐらいの平均的な感性を持つ人間だと思っているんです。そのうえで言うと、みんなの好きな要素がたくさん詰まった映画だと思いました。九龍城塞に暮らす若者4人組の友情が描かれていたり、彼らの慕う師匠・龍捲風の存在とか、いろいろ詰め込まれていて、楽しく観ました。主人公の背景にまつわる謎が中盤ぐらいで明らかになったり。ストーリーも面白かったです。
──九龍城砦のセットは約10億円(5000万香港ドル)を掛けて作られたそうですよ。
みなみかわ 緻密ですごかった。ちょっとロマンあります。
ショーゴ テンション上がりますよね。
アクションに「マトリックス」を感じるところがあった(みなみかわ)
──印象に残ったアクションシーンは?
みなみかわ 完全に「マトリックス」を感じるところがありましたよね?
──そう言えば「マトリックス」の武術指導を担当したユエン・ウーピンは、サモ・ハンやジャッキー・チェンと同じ中国戯劇学院に通っていたこともあって。「カンフーハッスル」では、サモ・ハンとともにアクションを率いていたり、「イップ・マン 継承」のアクション監督をしたりしているんです。
みなみかわ だからなんですね。黒いスーツみたいなのを着た集団が出てくる場面もあったし、逆輸入みたいなところもあるんでしょうか。かっこいいです。
ショーゴ めちゃくちゃ詳しいですね、みなみかわさん……。
マッチョ (不安げに)どうすればいいですか……?
みなみかわ どうすればって(笑)。今作のアクション監督は「るろうに剣心」の谷垣健治さんなんですよね。さっきショーゴも言ってたけど、竜巻を使って空中に浮くところは画期的なシーンだと思いました。
ショーゴ あのへんからやりたい放題でしたね。
みなみかわ 刃物が体内から出てきたり(笑)。龍捲風を演じているルイス・クーがこれまたかっこいいねんな。
ショーゴ そうなんですよ。九龍城塞の中で理髪店をやっていて、城塞のまとめ役でもある龍捲風が陳洛軍と出会うシーンもよかった。店に逃げ込んできた陳洛軍が龍捲風を羽交い締めにするんですけど、龍捲風がくわえたばこを上に放り投げ、そのたばこが宙に浮いている間に陳洛軍を打ち負かしたところで、そのたばこをキャッチしてまたくわえる。その一連の動作が本当にかっこよくて。
マッチョ わかります。「カンフーハッスル」でも、最強の武術家が自分のこめかみに至近距離からピストルを撃って、その弾を自分の指2本でキャッチして止めるシーンがあるんです。とんでもなく強いやつだっていうのが一発でわかる表現が好きで。「トワイライト・ウォリアーズ」にも、そんな感じで印象に残るアクションシーンがいっぱいありましたね。
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悪役が強いと締まる(みなみかわ)