ナタリードラマ倶楽部 Vol. 14 [バックナンバー]
柚木麻子と令和ドラマのヒロイン・ヒーロー像を考える、かつて愛されたドジっ子ヒロインの行く末とは
「大豆田とわ子と三人の元夫」「コタツがない家」「真夏のシンデレラ」「アトムの童」…柚木麻子×明日菜子×綿貫大介の令和ドラマ座談会(後編)
2024年12月17日 12:05 2
テレビドラマについて語り合う連載「ナタリードラマ倶楽部」。2023年の秋ドラマ編からスタートし、1年間にわたってドラマウォッチャー・明日菜子と綿貫大介による座談会やレビュー企画をお届けしてきた。
今回は「ナタリードラマ倶楽部」1周年を記念し、大のドラマ好きとして知られ、2024年10月に書籍「
取材・
参加者プロフィール
柚木麻子(ユズキアサコ)
1981年8月2日生まれ、東京都出身。2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞。2010年に同作を含む初の単行本「終点のあの子」を発表した。著書として「ランチのアッコちゃん」「伊藤くん A to E」「ナイルパーチの女子会」「BUTTER」「らんたん」など。ドラマ好きとしても知られ、「anan」での連載を書籍化した「柚木麻子のドラマななめ読み!」がフィルムアート社から発売中。なお、柚木の同名小説をのん主演、堤幸彦監督で映画化した「私にふさわしいホテル」が12月27日に全国で公開。同じく柚木の「早稲女、女、男」を原作に、橋本愛主演、矢崎仁司監督で映画化した「早乙女カナコの場合は」が2025年3月に公開される。
明日菜子(アスナコ)
毎クール20本以上のドラマを鑑賞しているドラマウォッチャー。
綿貫大介(ワタヌキダイスケ)
エンタメを中心としたカルチャー分野で活動する編集者・ライター・テレビっ子。
令和では好かれないドジっ子ヒロイン
──前編では、皆さんがお好きな令和ドラマについて語っていただきました。柚木さんは1990年代のドラマをたくさんご覧になっているそうですが、ドラマで描かれるヒロイン像に変化を感じることはありますか?
柚木麻子 昔は、“ドジだけど圧倒的”な主人公が恋したり恋されたり、いろいろと奮闘していく話が多かった。でも今って、何もできないけどいいものは全部奪っていくキャラクターはあんまり好かれないですよね。1990年代のドラマだったら、会社の会議でヒロインがお茶をこぼしても、だいたい
──(笑)。観たことがあるような気がします!
柚木 こういう、“何もない”のにガンガンのし上がっていく主人公より、最近のドラマではちゃんと努力しているキャラクターが増えてきたかな。「彼女はキレイだった」(2021年)の愛(
綿貫 時代が変わっても変わらず求められるキャラクターはいますし、ヒロイン像の変化って難しい議題ですよね。そんな中、令和ドラマのヒロインと聞いて真っ先に浮かんだのは「大豆田とわ子と三人の元夫」(2021年)のとわ子(
柚木 とわ子のファッションも、ちゃんと高そうでよかった。
綿貫 細かい設定にこだわっていましたよね。「コタツがない家」(2023年)の万里江(
「真夏のシンデレラ」のなっつんはデンゼル・ワシントン
柚木 最近は40代以上の女優さんが主役を張ることも増えてきましたよね。
明日菜子 「
柚木 ただ令和のヒロインと言われると、どうしても「真夏のシンデレラ」(2023年)のことを思い出してしまって……(笑)。
綿貫 (笑)。「真夏のシンデレラ」のなっつん(
柚木 なっつんが系譜通りドジな女の子だったらいいんですけど、制作陣が「ドジな子って今は嫌われちゃうよな」と配慮したのか、彼女にあらゆる有能さを追加していて。結果デンゼル・ワシントンみたいな強者になっちゃってる。
明日菜子 なっつんはがんばっちゃうんですよね(笑)。家庭環境とか、もっと周囲を責めたほうがいいのに、なにせ全部自分で背負ってしまう。
柚木 そうそう。なのに「その辺にいる普通のかわいい子だよ☆」みたいな設定にしてるから、話がゆがんでるんですよ(笑)。なっつんは海で人命を救助して、家事をして、SUPのインストラクターをしながら食堂を運営して……。チンピラはビーサンで倒しますからね。
令和ドラマの男性キャラは話を聞いてくれる
──ではドラマで描かれる男性像の変化についてはいかがでしょうか?
柚木 1990年代のドラマでは「GTO」(1998年)の鬼塚(
綿貫 万里江は、悠作抜きで悠作の担当編集者・土門(
柚木 そのシーンも1990年代のドラマだったら、実は土門は万里江のことが密かに好きで……という展開になるところですが、そういうのもないんですよね。お互い、ただ悠作の仕事に関する事務連絡だけをして帰ってる。土門が万里江に「悠作はあなたのこと、誰よりもわかってますよ」とかいいこと言うのかな?って思ったけど、そんなくだりもなかった。誰も悠作の能力を買ってないし、評価してないっていうのが新鮮でした。「コタツがない家」は「男はつらいよ」のオマージュだと思うんですが、「ダメなやつだけどチャーミングだから許してあげよう」みたいな風潮は通用しなくなったんだと思う。寅さんの甥っ子役の吉岡さんが悠作を演じたことも印象的です。
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