ナタリードラマ倶楽部 Vol. 13 [バックナンバー]
柚木麻子と令和ドラマ座談会!グッズを集めた「ルパンの娘」や、女性版「孤独のグルメ」枠争奪戦の“勝者”を語る
「ルパンの娘」「ソロ活女子のススメ」「コタツがない家」「占拠」シリーズ…柚木麻子×明日菜子×綿貫大介の令和ドラマ座談会(前編)
2024年12月16日 12:05 6
映画ナタリーでは、放送・配信中のドラマについて取り上げるコラム連載「ナタリードラマ倶楽部」が2023年秋にスタート。1年にわたり、クールごとに注目作品を語る座談会企画や、ドラマ内のキャラクターを掘り下げるレビュー企画などを展開してきた。
今回は「ナタリードラマ倶楽部」の1周年記念として、大のドラマ好きとして知られる小説家・
取材・
参加者プロフィール
柚木麻子(ユズキアサコ)
1981年8月2日生まれ、東京都出身。2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞。2010年に同作を含む初の単行本「終点のあの子」を発表した。著書として「ランチのアッコちゃん」「伊藤くん A to E」「ナイルパーチの女子会」「BUTTER」「らんたん」など。ドラマ好きとしても知られ、「anan」での連載を書籍化した「柚木麻子のドラマななめ読み!」がフィルムアート社から発売中。なお、柚木の同名小説をのん主演、堤幸彦監督で映画化した「私にふさわしいホテル」が12月27日に全国で公開。同じく柚木の「早稲女、女、男」を原作に、橋本愛主演、矢崎仁司監督で映画化した「早乙女カナコの場合は」が2025年3月に公開される。
明日菜子(アスナコ)
毎クール20本以上のドラマを鑑賞しているドラマウォッチャー。
綿貫大介(ワタヌキダイスケ)
エンタメを中心としたカルチャー分野で活動する編集者・ライター・テレビっ子。
「ギャルサー」、BeeTV…私が話さなくて誰が話す!?
──今回は2023年秋に始まったコラム「ナタリードラマ倶楽部」の1周年企画として、本連載でおなじみのドラマウォッチャー・明日菜子さんと綿貫大介さんが大ファンだという作家の柚木麻子さんをゲストにお呼びしました。
明日菜子・綿貫大介 うれしい!
──ちなみに、柚木さんのピンクのお召しものは?
柚木麻子 ドラマ「ロッカーのハナコさん」(2002年)の
綿貫 かわいい!! さすが「ともさ会」(※)会長!!
※柚木が友人たちと開催している、ともさかりえについて情報共有をする会合
明日菜子 うわー! 私も何か考えてくればよかった……。
柚木 ハナコさんはジャケットに袖を通すんじゃなくて、肩に掛けるんです!
──素敵な写真も撮影できたところで、今日はお三方に令和のドラマについて語っていただこうと思っています。まず現在放送中の、2024年秋クールドラマは何をご覧になっていますか?
柚木 私はやっぱり今、朝ドラ「
明日菜子 めっちゃわかります! 世間の風当たりが厳しすぎると思う。
柚木 「おむすび」は別にバックラッシュじゃないんですよ。「せっかく進んだ価値観を戻してるよね」って言われてるとしたら、それは違う。「おむすび」はそんなことしてない。主人公のギャル設定に関しては、もっと主体的なものではないの?みたいな思いはちょっとありました。でもいいんです、あのギャルは最初そうだったっていうだけで。
綿貫 確かにハギャレン(博多ギャル連合)のメンバーみたいに歩(仲里依紗)に憧れてギャルになるとかだとわかりやすいけど、結(橋本環奈)は最初、強制的にギャルやらされてましたもんね。でもこの物語は結たち米田家固有の話だから。
※編集部注:主人公・結の姉である歩は、かつてギャル軍団・ハギャレンを率いた元カリスマギャル。初めは“歩の妹”というだけでハギャレンに加入させられた結だったが、やがて自らの意思でギャルになっていく
柚木 あと、私が大好きな元アンジュルムのめいめい(
綿貫 めいめいは「おむすび」メンバーが多数出演した「わが心の大阪メロディー」で、欧陽菲菲の「雨の御堂筋」も歌っていましたよね。
柚木 ほかには、「
明日菜子 私は綿貫さんとの座談会のとき、辛口評価で話していました。主人公たちが立ち向かう問題がすでにどこかで語られているもののように感じてしまって。
柚木 いや、言ってることはわかります。でも、原作の「若草物語」はそもそもお金の話なんです。原作者のルイーザ・メイ・オルコットは姉妹を養うために作風をガラッと変えて売れた人。同じく「若草物語」をベースにした「シスターズ」(2022年)っていう韓国ドラマがあるんですが、そっちはもっと金と陰謀と横領と殺人の話で、ベスもいないんですよ。「若草物語」は1860年代の経済問題の話であって、経済の話を現代でやろうと思ったら、やはりハラスメントを許すわけにはいけないし、非正規雇用問題もやらなきゃいけないし、家庭による体験格差を書かなきゃいけないから、どうしても幸せな話になり得ない。おそらく「若草物語―恋する姉妹と恋せぬ私―」の脚本を書いている松島瑠璃子さんは、すごく律儀に今の話に落とし込もうとしたんだろうなと思います。
綿貫 今やっと声が上がってきた問題にとにかく全部触れていますよね。それはすごい。
柚木 特に長女の恵(仁村紗和)と同じハローワークで非正規職員として働く佐倉治子(
明日菜子 確かに……!
柚木 彼女のような境遇の女性がセクハラを受けていることを周りに言っても、「40代がセクハラを受けるわけない」って一蹴される時期もありましたからね。
綿貫 佐倉役の酒井若菜さん、今期は3本(※)もドラマに出てるんですよ。ありがとう!
※編集部注:「おむすび」では佐野勇斗演じる四ツ木翔也の母・幸子役、「
柚木 「おむすび」もいい役だからうれしい。批評家の人達っていうのはすごいクリティカルに「これは優れてて、これは優れてない」と言うのが仕事だけど、私は意地と情の人間なので。ギャル文化が盛り上がったときは「『ギャルサー』(2006年)の話は私がしなくて誰がする!?」とか、
「人生が楽しくなる幸せの法則」の文字を令和6年に目にするとは
──柚木さんがドラマについてつづった著書「柚木麻子のドラマななめ読み!」は、雑誌ananで2014年から続く連載をまとめたものですが、この執筆も“私が言わなければ”が1つのテーマだったんですね。
柚木 誰にも頼まれていないことこそ、今推すべきことなんです。そういうのを1人でずっとしゃべってても誰も乗ってくれないけど、これが作家のいいところで、文字にすると意外なところに届く。私もそのドラマ観てたよ!みたいな人が稀に現れるんですよね。
明日菜子 柚木さんの本で「人生が楽しくなる幸せの法則」(2019年)というドラマのタイトルが出てきて、令和6年に目にするとは思ってなかったので驚いたんです。周りに話せる人がいないと思っていたから。
柚木 観てたんですか!? どう思いました?
明日菜子 しっちゃかめっちゃかですよね(笑)。山崎ケイ(
柚木 あのドラマ、決していいお話ではないんですけど、夏菜さんという私がとても買っている俳優ががんばっていた。
綿貫 私はもともとananの不定期連載を毎回超楽しみに読んでいたので、「よくぞ1冊にまとめてくれた!」というのが一番の感想です。
柚木 読んでくれているのはうれしいです。楽しみにしてくれているのは綿貫さんと山内マリコと酒井順子さんぐらい(笑)。
綿貫 そんなことないですよ! 今やっているドラマに過去作品を紐付けて書いてくれてるから、本当に面白い。
※山崎ケイの崎は立つ崎(たつさき)が正式表記
「ソロ活女子のススメ」こそ女性版「孤独のグルメ」
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