ミルクボーイ駒場孝の「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」

映画超初心者・ミルクボーイ駒場孝の手探りコラム「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」 第2回 [バックナンバー]

レビューも考察も出回っていない…「ゴジラ-1.0」を、公開前に緊張しながら鑑賞

一瞬でゴジラワールドへ

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これまで名作をほぼ観たことがないまま育ち、難しいストーリーの作品は苦手。だけど映画を観ること自体は決して嫌いではないし、ちゃんと理解したい……。そんな貴重な人材・ミルクボーイ駒場孝による映画感想連載。文脈をうまく読み取れず、鑑賞後にネット上のレビューを読んでも「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」となりがちな彼が名作を気楽に楽しんだ、素直な感想をお届けする。

「エイリアン」に続く第2回は、全国ロードショー中のゴジラ70周年記念作品「ゴジラ-1.0(ゴジラマイナスワン)」を、封切りに先駆けて10月末に鑑賞してもらった。

これまで「ゴジラ」シリーズを鑑賞したことがなく、事前に知っている情報は「ゴジラはとにかく大きく強く、火みたいなのを吹く」だったという駒場。彼は、焼け野が原になった戦後日本でゴジラが大暴れする同作をどう観たのか?

/ 駒場孝(コラム)、秋葉萌実(作品紹介、「編集部から一言」

初心者はタイトルにすらちょっとひるむ

こんにちは、ミルクボーイ駒場です。
前回は44年前に公開された「エイリアン」を鑑賞させてもらいましたが、今回はなんと、公開前の最新作を観賞させてもらうことになりました。一丁前に関係者用の試写会というものへ行かせてもらったのです。

ただ公開前の作品の感想を書く事ほど怖いものはありません。なぜなら世の中の人はほぼ誰も観ていない、なんのレビューも考察も出回っていない、つまり自分で理解できなかったら終わりだからです。あとDVDとかじゃないので、鑑賞中わからないところがあっても巻き戻しもできない。途中でつまずいても終わりです。そんなことを思い緊張しながらも緊張してないような顔して試写会へ行かせてもらいました。

「ゴジラ-1.0」ビジュアル

「ゴジラ-1.0」ビジュアル

そしてその作品というのが「ゴジラ-1.0」です。ゴジラシリーズの最新作で、読み方は「ゴジラマイナスワン」。字面だけ見ると「ゴジラマイナスイッテンゼロ」や「ゴジラマイナスイチ」とも読めるし、可能性は低いですが「ゴジラヒクイチ」とも読めます。もしくは「“-1.0”は書かれてるだけで読まない」というトリッキーなパターンも考えられます。

なぜいきなりタイトルについてこんなに長々書いたかと言うと、映画初心者としてはこういう一瞬なんて読むかわからないタイトルにすらちょっとひるむんです。たまにどこからどこまでがタイトルなのかわかりにくい映画などもあったりして、観る前から軽くジャブをかまされている感じです。そんなんわかってもわからんでも内容には関係ないだろうと思う方がいるかもしれませんが、一応ちゃんと知りたいですやん。なので「映画タイトルはなるべくわかりやすい表記にしてください」ということを、声を大にとまでは言いませんがほどよいボリュームで言わせてもらいたいです。

今回は試写会の会場に着いた時担当の方が「ようこそゴジラマイナスワンへ」と言ってくれたので助かりました。元々知っていたかのように「あ、よろしくお願いします」と挨拶させてもらいましたが内心「マイナスワンと読むのか、言ってくれてよかった」と胸を撫で下ろしていました。会話のラリーにおいて偶然僕が後攻やったからよかったものの、もしラリーが僕が先攻やったとしたら、「-1.0」を「マイナスワン」と読む確信は無かったので担当の方には「ゴジラのやつ観にきました」とぼやかして言っていたことでしょう。映画初心者はそんな事も考えてびくびくしているので優しくしてあげてください。

「ゴジラ-1.0」場面写真

「ゴジラ-1.0」場面写真

そして本編の話です。ゴジラシリーズももちろん今まで一回も観たことはありません。でも前回のエイリアン同様、有名過ぎるほど有名なのでどんなものかはなんとなく知っています。とにかく大きく強く、火みたいなのを吹く。「デデデ デデデ デデデデデデデデデ」という歌も知ってます。子供の頃「ゴジラ ゴジラ ゴジラとメカゴジラ」と歌ってる周りの子もいました。何のことかわかってませんでしたが僕も知ったようにその部分だけリピートで口ずさんだりはしてました。事前情報はこんな感じです。

一瞬でゴジラワールドに引きこまれた

内容的には戦後の日本が舞台です。またいきなりそんなこと言うなよという話なのですが、僕は前回のエイリアンの時言わせてもらったように舞台が宇宙である宇宙系の話が苦手なのですが、それに次いで舞台が現代じゃない時代の、時代系の話も得意ではないのです。その時代の時代背景や知らないワード、軍隊とかの階級などがはっきり把握できず内容が入らなくなるのです。

なので今回も冒頭から「時代系か、、」と思っていたんです。が、そう思っていたのも束の間、一瞬でゴジラワールドに引きこまれました。びっくりしました。そして心掴まれたまま125分、座席から背中を離して若干前のめりになりながら観続けました。ゴジラってこんなに面白いんやと興奮しましたし、今まで観てこなかったことを悔やみました。

「ゴジラ-1.0」場面写真

「ゴジラ-1.0」場面写真

あと何より、「ゴジラってこんなに怖いんや」とも思いました。話の通じないでかい怪獣と対峙した時の恐怖と絶望。いやいや現実にこんな怪獣いませんやんという話なのですが、それでは片付けられない妙なリアリティ。今まではロケバスなど乗っていてボーッと街並みを見ていても何も思いませんでしたが、この作品を観てからしばらくは車窓から見える街並みの遠くの方に、うっすらゴジラいるんちゃうかとびびるようになってしまいました。それくらい入り込める作品でした。

ゴジラ-1.0=恐怖と涙

そして今回の「そんなこと言うてた?」は、細かい事でなく全体の話なのですが「ゴジラって泣ける映画って言うてた?」です。非現実すぎて涙とは程遠い映画やと思っていたのに、普通に泣いてしまいました。これは聞いてませんでした。

「ゴジラ-1.0」場面写真

「ゴジラ-1.0」場面写真

なんでゴジラで泣くねんと思った方、是非観て頂きたいです。
ですから個人的には 「ゴジラ-1.0=恐怖と涙」という方程式が成り立ちました。

締まったととるか締まってないととるかは皆様にお任せしますが、とにかく映画初心者でもわかるとても面白い映画でございました。

是非皆様も「ゴジラ-1.0」お楽しみください!
そして映画館でチケットを買う時は受付で胸を張って「ゴジラマイナスワン1枚ください」とお伝えください!

【ゴジラがナタリーをジャック中!「ゴジラ-1.0」の最新情報・独自コンテンツはこちら】

編集部から一言

「ゴジラ-1.0」が初めてのゴジラ映画だったという駒場さん。「ゴジラってこんなに怖いんや」という、素直かつシンプルな感想が新鮮でした。作品名の「ゴジラ-1.0」にまつわるくだりは、自分も初めて口にするときに不安になったのを思い出して、「映画タイトルはなるべくわかりやすい表記にしてください」との気持ちに共感しました。現実の世界にもゴジラの気配を感じ取るほど、作品に夢中になってもらえて山崎貴監督も喜ぶのではと思います。これを機に、駒場さんにはぜひ「ゴジラ」シリーズ全作を制覇していただきたいです!

ゴジラ-1.0(2023年製作)

「ゴジラ-1.0」ポスタービジュアル

「ゴジラ-1.0」ポスタービジュアル

2023年11月3日に公開されたゴジラ70周年記念作品。戦後のすべてを失った日本に、追い打ちをかけるようにゴジラが現れるさまが描かれる。山崎貴が監督・脚本・VFXを担い、神木隆之介浜辺美波山田裕貴青木崇高吉岡秀隆安藤サクラ佐々木蔵之介がキャストに名を連ねた。

駒場孝(コマバタカシ)

1986年2月5日生まれ、大阪府出身。ミルクボーイのボケ担当。2004年に大阪芸術大学の落語研究会で同級生の内海崇と出会い、活動を開始。2007年7月に吉本興業の劇場「baseよしもと」のオーディションを初めて受け、正式にコンビを結成する。2019年に「M-1グランプリ2019」で優勝し、2022年には「第57回上方漫才大賞」で大賞を受賞。現在、コンビとしてのレギュラーは「よんチャンTV」(毎日放送)月曜日、「ごきげんライフスタイル よ~いドン!」(関西テレビ)月曜日、「ミルクボーイの煩悩の塊」「ミルクボーイの火曜日やないか!」(ともに朝日放送ラジオ)など。

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