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映画超初心者・ミルクボーイ駒場孝の手探りコラム「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」 第17回 [バックナンバー]

開始5秒で心をつかまれた「ロッキー」

知ってる曲や知ってるシーンから始めてほしい

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これまで名作をほぼ観たことがないまま育ち、難しいストーリーの作品は苦手。だけど映画を観ること自体は決して嫌いではないし、ちゃんと理解したい……。そんな貴重な人材・ミルクボーイ駒場孝による映画感想連載。文脈をうまく読み取れず、鑑賞後にネット上のレビューを読んでも「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」となりがちな彼が名作を気楽に楽しんだ、素直な感想をお届けする。

第17回で観てもらうのはボクシング映画の金字塔「ロッキー」。駒場でもさすがに知っている名曲・名シーンの連続だったようで、冒頭の「ロッキーのテーマ」から心をつかまれっぱなしだったという。

/ 駒場孝(コラム)、松本真一(作品紹介、「編集部から一言」

開始1秒で「パッパーパパパーパパパーパパパー」

こんにちは、ミルクボーイ駒場です。今回鑑賞したのは1976年製作 の「ロッキー」です。ボクシング映画、シルヴェスター・スタローンが主演、など知っている情報はありましたが、今回ももちろん観たことはありませんでした。「僕は『ロッキー』も観たことないのか」と改めて自分の映画の経験値のなさにあきれましたが、難しい話でもなさそうでしたし楽しみでした。

さっそく感想なのですが、観始めてまず「ロッキーのテーマ」のイントロが聞こえて、「あの曲いきなり流してくれるんや!」とテンションが上がりました。「ジョーズ」も最初からあのテーマを流してくれていてテンションが上がった記憶があります。このコラムをやらせてもらい、名作と呼ばれるものを観てきて強く思うのは、「ザ・この作品」と言われる名曲や名シーンが早めに来てくれると、作品への集中の仕方が違うなぁということです。

もちろん変なことを言ってるのはわかってます。そもそも作品があって、それが有名になって、その中でも名曲や名シーンと言われるものが生まれていって、後世へ伝わる、という流れがあるのに、「知ってる曲や知ってるシーンから始めてほしい」というのは無茶すぎます。映画ができた時点ではどれが名曲か名シーンかも決まってないわけですから不可能です。でも事実そう思うんです。百歩譲って、「名シーンを冒頭に」というのは無理だと思うので、名曲の予感がするものはもう頭からかけてほしい。そうするとのちのち、曲だけ知ってて映画は観たことはないという人が観たとき「これこれ!」となって集中力が格段に上がるんです。

「ロッキー」場面写真
(写真提供:United Artists / Photofest / ゼータイメージ)

「ロッキー」場面写真 (写真提供:United Artists / Photofest / ゼータイメージ)

まぁそんなむちゃなクレームから話を戻しまして、「ロッキー」の冒頭です。あのテーマが流れて集中力がグッと増したのですがその後さらなる衝撃の事実を知ることになりました。開始1秒で「パッパーパパパーパパパーパパパー×2」というあの曲が流れて、そのあとは絶対「パーパパパッパパッパパー(ブーン)パーパパパパーパー チャラーラー チャラーラー」だと思っていたんです。ところが、「パッパーパパパーパパパーパパパー×2」のあとが「パッパラパッパラパッパラパッパ パパパーパパパパパパパー」みたいな、聴いたことがないパートに入っていったんです! 驚愕でした! もうこれだけで大収穫です! そこからそれがもう一度繰り返され、さらにまったく知らない部分も経てしばらくしておなじみの「チャラーラー チャラーラー」が来たんです。今回の「そんなこと言うてた?」はまさに「ロッキーのテーマこんなとこあるって言ってた?」ですね。驚きすぎて何度も巻き戻して観返しました。そんなことで序盤5秒くらいで心つかまれて、集中して観られました。そして観ていくと、この映画はこのテーマ曲1本でやるんだということもわかりました。トレーニングのときの定番のリズムの「チャラーラー チャラーラー」、少し悲しいときのピアノバージョンの「チャラーラー チャラーラー」、大人なシーンのときのジャジーな「チャラーラー チャラーラー」。この曲はどんなシーンも全部いけるんですね。

さらに、もう曲で驚かされることはないだろうと思っていた終盤、試合が終わったあとに流れた「パララーラー パーラパーラパララーララララララー」みたいな壮大な曲、これもロッキーなんや!とまた驚かされました。1つの作品内でどれだけ名曲があるんですか、勘弁してほしいです。

観終わったあと、歩いてるときにシャドーをしてしまう

そしてそのあとの「エイドリアーン!」も、パロディとかで見たやつこれか!となり、感動のシーンのはずが、無知が故の興奮が止まりませんでした。本当に観てよかったです。曲、セリフ、どれもが映画を知らない者にも浸透しているすごい作品だなと思いました。

あと曲以外のことで思ったのが、全然ボクシングしないんや、ということでした。イメージでは何分かに1回ボクシングシーンがあると思っていたら、人同士のやりとりがメインで、それがとても意外でした。でもそれぞれのキャラがみんな個性的で人間臭くてわかりやすくてよかったです。もちろん後半のボクシングシーンとなると迫力はすごくて、選手の体の仕上がり方もきれいで見応え抜群でした。特に思ったのは試合をリングの中で撮影しているところと、リングサイドの最前列くらいの目線で、リングのロープ込みで撮影されてるところがあって、そのロープ込みで撮影されているところが、あの会場のあの場所に座っていたらそんな見え方になるよな、とリアリティがすごくてとてもいいなと思いました。選手の至近距離からずーっと撮られていても“近さ”という面での迫力はあるかもしれませんが、そんな目線でボクシングを観ることは実際はないので、観戦しているという面での迫力が伝わるあのアングルはいいなぁと思いました。

冒頭から心つかまれ、わかりやすく熱くなれる話でとても面白く、観終わったあと、ベタに歩いてるときシャドーしてしまうという入り込みようでした。シリーズもたくさんあるようなのでまた楽しみに観ていきたいと思います。

映画、どんどん面白くなってきています。これからもいろんな作品を鑑賞していきたいと思います!

編集部から一言

アカデミー賞の発表が近いということで、過去に作品賞を獲った作品をいくつか候補として提出し、その中から駒場さんが選んだのが「ロッキー」でした。「ロッキー」といえば、映画を観ない人間でも知らず知らずのうちに副流煙のようにパロディを浴びている作品。映画を観てこなかった人間がベタな名作を観て「これってあの映画なんや」と感動するという、この連載の原点のような原稿でした。続編にも興味ありということなので、「アイ・オブ・ザ・タイガー」や「トレーニング・モンタージュ」を聴いて腰を抜かしてほしいものです。

「ロッキー」(1976年製作)

「ロッキー」場面写真
(写真提供:United Artists / Photofest / ゼータイメージ)

「ロッキー」場面写真 (写真提供:United Artists / Photofest / ゼータイメージ)

フィラデルフィアのスラム街に暮らす4回戦ボクサーのロッキーは、世界チャンピオンであるアポロから対戦相手に指名される。自分がただの三流ボクサーでないことを証明するため、そして愛する女性エイドリアンのため、ロッキーはアポロとの戦いに挑む。第49回アカデミー賞では作品賞・監督賞・編集賞を受賞。本作に主演し、脚本も執筆したシルヴェスター・スタローンは当初は無名だったものの、「ロッキー」のヒットにより作品さながらにアメリカンドリームをつかむことになった。また「ロッキー2」「ロッキー3」「ロッキー4 炎の友情」「ロッキー5 最後のドラマ」「ロッキー・ザ・ファイナル」とシリーズ化。アポロの遺児アドニスが主人公のスピンオフ「クリード チャンプを継ぐ男」「クリード 炎の宿敵」「クリード 過去の逆襲」が製作されている。

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ミルクボーイ駒場 @88MBOy

ロッキーめっちゃええですね! https://t.co/ML4FGewEDb

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