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映画超初心者・ミルクボーイ駒場孝の手探りコラム「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」 第18回 [バックナンバー]

「タイタニック」ってあのポーズのあとからがすごいんですね

今、「タイタニック」フィーバーが来ています

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これまで名作をほぼ観たことがないまま育ち、難しいストーリーの作品は苦手。だけど映画を観ること自体は決して嫌いではないし、ちゃんと理解したい……。そんな貴重な人材・ミルクボーイ駒場孝による映画感想連載。文脈をうまく読み取れず、鑑賞後にネット上のレビューを読んでも「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」となりがちな彼が名作を気楽に楽しんだ、素直な感想をお届けする。

第18回で観てもらったのは「タイタニック」。この大ヒット作はさすがの駒場もフィーバーを体感し、劇場公開後にはレンタルで観たことがあるそうだが、今観るとどんな感想を抱くのか。

/ 駒場孝(コラム)、松本真一(作品紹介、「編集部から一言」

公開当時、小学生の僕でもフィーバーを感じていた

こんにちは、ミルクボーイ駒場です。今回鑑賞したのは1997年公開の「タイタニック」です。もちろん名作中の名作で、映画初心者の僕でも当然知ってます。なんたって日本における映画の興行収入第3位の映画らしいです。主演のレオナルド・ディカプリオさんをはじめ、あの主題歌、そしてあの有名なポーズなど事前知識もいくつもあります。あと個人的に思うのは、前回の「ロッキー」といい、今まで観た「エイリアン」や「ジョーズ」などの名作と言われる作品は、上映当時まだ生まれていなかったので、そのフィーバー具合、世の中の空気まで感じることができなかったんです。でも「タイタニック」の公開時、僕は小学生だったのですが、そんな僕でもフィーバー具合がわかるくらい流行っていたなあということです。しかも沖縄に住んでいたのにです。“沖縄小学生”の僕でもフィーバー具合を感じていたので、“本州大人”の方々はもっと感じていたんだろうなと思います。連日ワイドショーなどで「レオ様レオ様」と騒がれ、修学旅行で船に乗ろうものなら先端ではタイタニックポーズをする人が1人はいました。そんな記憶です。

そしてフィーバー具合を一番感じるのが、実は僕でも「タイタニック」を観たことがあるということです。これは自分で言うのもなんですが、僕が進んで話題作をしっかり押さえているなんてことはまあ珍しく、すごいことです。映画館ではなくレンタルしてきて家族で観たと思うのですが、それくらいフィーバーしていました。ただ、当時観たものの、自分の中に感想がひとつも残っていなかったのです。よかったとも悪かったとも泣けたとも何も覚えていなくて、「観た」という事実さえ怪しくなるくらい記憶になく驚きました。なのでほぼ初めてのような感覚で観始めました。

「喜怒哀楽」どころか「喜怒哀楽驚恐寒」

観始めると、ローズが記憶をよみがえらせながら語っていくのと同じペースで、僕は僕で「ああ、こんな感じやったな」とうっすら記憶がよみがえってきました。そして大人になって観た感想としては、「タイタニック」に対して大きく誤解をしていたなということです。「タイタニック」って、単純な「恋愛映画」だと思っていましたが、実は「ドキュメンタリー映画」的な要素もあるんですね。というのも、“「タイタニック」と言えば”のあのポーズが、1時間20分あたりのところで披露されたんです。「3時間以上ある作品の、この時点でこれやって、残り時間大丈夫? これメインちゃうの?」と驚きました。でもそのあとタイタニック号が氷山にぶつかってからがすごすぎました。

「タイタニック」場面写真(写真提供:Paramount Pictures / Photofest / ゼータイメージ)

「タイタニック」場面写真(写真提供:Paramount Pictures / Photofest / ゼータイメージ)

「タイタニック」って、もちろん恋愛のウェートもしっかりありますが、それ以上に「タイタニック号沈没事故」を忠実に描いているところがすごいんですね。てっきりあのポーズをしたあとはもうやることないやろと舐めていました。それが、なんならあのポーズのあとからがこの作品の醍醐味で、船が沈んでいくまでの描写がすごかったです。めちゃくちゃリアルで、混乱する様子やそれぞれの人々の感じなどすごい見応えがありました。あと、着実に侵食してくる海水のリアルな怖さ。すごすぎて「『タイタニック』って怖い映画なんかい」とも思いました。沈まない船と言われていたタイタニック号の壁がいとも簡単にぶち壊されていったり、装飾を一撃で破壊しながら海水があふれてくるところなんて観ていても息が詰まりそうでした。あと沈んで夜の海に放り出されたときのあの凍える寒さを見てこちらまで震えるほどでした。「タイタニック」は「喜怒哀楽」どころか「喜怒哀楽驚恐寒(きどあいらくきょうきょうかん)」といろんな感情・感覚にしてくれるすさまじい映画だなと思いました。

そして今回の「そんなこと言うてた?」ですが、船の先端のあのポーズのとき、あんなになんかしゃべってた?です。僕のイメージでは、あのポーズのときは静かに2人前を向いて風に吹かれていて、言葉はなくとも通じ合っている、そこにテーマソングが流れる、みたいな感じやと思ってたんです。でもいざ観てみるとなんか軽く歌みたいなの歌ってましたね。照れ隠しなのかなんか歌ってるなーと思い、歌わないほうがいいんじゃないかと少し思いましたが、でもそれさえこの映画に対する勘違いですよね。そこがメインだと思っていたので歌わないほうがいいと思いました、でもメインはそこではないですもんね。とても余計なお世話でした。

そもそも、この映画、3時間以上ありますが、そこから現代のシーンとエンディングを除いた部分の“2時間40分”は、タイタニック号が実際に沈むまでにかかった時間らしいですね。これはこだわりすごすぎます。監督かっこよすぎます。これを表立って言わないところがまた素敵。自分ならそんなうまいことやったら、オープニングにでも「この映画の上映時間は実際にタイタニック号が……」など注釈を入れてドヤ感を出してしまうと思います。それをせずにさらっとそんな仕掛けを施すとは。そんなところまで考え切ってる監督の作品に「あそこは歌わないほうが」とか思う時点でやぼでした。

ちょっと「タイタニック」面白すぎました。上映から28年越しの今、「タイタニック」フィーバーが来ています。これからもいろんな映画を楽しんでいきたいと思います!

編集部から一言

前回の「ロッキー」に続き、アカデミー賞作品賞受賞作の中から、「タイタニック」を観ていただきました。映画好きでなくても知ってそうな、バラエティ番組などでよくパロディを見かけるものを……ということでこの作品を選びましたが、駒場さんから一度は「実は観たことあるんですけど大丈夫ですか」と言われ、候補から外すべきなのか悩みました。しかし「当時と今では感想が違うはずなので、そのあたりを軸に書いてください」とオファー。結果「観たことあるけどほぼ覚えていない」という原稿が届いたので若干ズッコけましたが、「上映から28年越しの今、『タイタニック』フィーバーが来ています」というほどハマってもらえてよかったです。今年、テレビや劇場であのポーズを披露する駒場さんが見られるかも?

「タイタニック」(1997年製作)

「タイタニック」場面写真(写真提供:20th Century Fox / Photofest / ゼータイメージ)

「タイタニック」場面写真(写真提供:20th Century Fox / Photofest / ゼータイメージ)

1912年に実際に起きた豪華客船タイタニック号沈没事故を背景に、画家志望の青年ジャックと、上流階級の令嬢ローズの身分違いの恋を描いたラブストーリー。ジャックはレオナルド・ディカプリオ、ローズはケイト・ウィンスレットが演じ、ジェームズ・キャメロンが監督を務めた。興行収入262億円を記録し、セリーヌ・ディオンによる主題歌もヒットするなどの社会現象を巻き起こす。第70回アカデミー賞では14部門にノミネートされ、歴代最多タイとなる11部門を受賞。2023年には劇場公開25周年を記念した3Dリマスター版が全国で公開された。

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