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映画二人道中 ~名コンビに聞く制作秘話~ 第2回 [バックナンバー]

映画監督・山崎貴と作曲家・佐藤直紀の道中 | 「ALWAYS 三丁目の夕日」で出会い、「ゴジラ-1.0」に至った“感覚的に通じ合う”2人

「〇〇が意外と正解なんだよ」佐藤をびっくりさせた山崎の対応とは

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映画界には、たびたびタッグを組んで作品を制作する“名コンビ”がいる。何年にも、何作にもわたり力を合わせ、作品に向き合うプロフェッショナルの2人組。本連載では、そんな映画界の名コンビに着目する。

今回は2005年の「ALWAYS 三丁目の夕日」で初めて制作をともにした映画監督・山崎貴と作曲家・佐藤直紀にインタビューを実施。11月3日公開の「ゴジラ-1.0」でもタッグを組んだ、“感覚的に通じ合う”2人の歩みとは。

取材・/ 小澤康平 撮影 / 小坂茂雄

山崎貴と佐藤直紀の主なタッグ映画(一言メモ付き)

2005年「ALWAYS 三丁目の夕日」

「新しい音楽の一面を見せられるという意味でもうれしかったです」(佐藤)

2013年「永遠の0」

「佐藤さんの曲の雰囲気が変わった感じがしたんですよね」(山崎)

2019年「アルキメデスの大戦」

「周りにいたスタッフから『なんかすごいかっこいいってつぶやいてましたよ』と言われました」(山崎)

2022年「ゴーストブック おばけずかん」

「自分の曲に関しては自分が一番正しいと考えてしまいがちなので、監督の対応を見てびっくりしました」(佐藤)

2023年「ゴジラ-1.0」

「パニック映画や怪獣映画のサウンドにはしたくないと思ったんです」(佐藤)

※年は製作年

煽るのではなくリアルを意識した「ゴジラ-1.0」のサウンド

──お二人が最初にタッグを組んだ映画は2005年公開の「ALWAYS 三丁目の夕日」です。出会いから現在までの歩みも気になるのですが、まずは11月3日に封切られた「ゴジラ-1.0」のお話を伺えればと思います。佐藤さんは「ゴジラ」の新作映画の音楽を手がけることにプレッシャーは感じましたか?

佐藤直紀 特別なプレッシャーはなかったです。こう言うと誤解を招きそうですが……。

山崎貴 いい加減にやったんか?っていうね(笑)。

佐藤 もちろんそういうことではなくて(笑)。どんな作品においても曲がすんなりできるなんてことはないので、いつも120%の力を注ぐ必要があるんです。これまで関わったすべての作品でプレッシャーはありましたし、「ゴジラ-1.0」に関しても同じだったという意味です。

佐藤直紀

佐藤直紀

山崎 真面目な方なんです。今回いつもと違ったのは、佐藤さんからの提案で早い段階からけっこうな数のデモ曲を送っていただいたこと。なので撮影に入る前からいくつかの曲は頭の中にありました。

佐藤 台本を読んだ時点で、パニック映画や怪獣映画のサウンドにはあまりしたくないと思ったんです。ストーリーを引っ張っていくような曲で煽るのではなく、本当に戦後こういうことがあったんじゃないか、ゴジラがいたんじゃないかとリアルに感じられるような音楽演出にしたいと、山崎監督にお話ししました。

山崎 最初はバーン!と盛り上がる曲が来るかなと思っていたんですが、「あれ、思ったよりストイックで暗いな」って(笑)。ドスンと重くて、大人っぽい曲が多かったんです。でも今までの経験上、佐藤さんから提案してくるときはだいたいうまくいくことがわかっていて、最初に聴いたときに「ちょっと違うかも?」と感じても、映像と合わせてみると「なるほど!」とうなずくことが多い。

佐藤 シーンによっては合わなくて新しく曲を書いたりもしましたけどね(笑)。

「ゴジラ-1.0」場面写真 (c)2023 TOHO CO., LTD.

「ゴジラ-1.0」場面写真 (c)2023 TOHO CO., LTD.

「ゴジラ-1.0」場面写真 (c)2023 TOHO CO., LTD.

「ゴジラ-1.0」場面写真 (c)2023 TOHO CO., LTD.

──曲を制作するにあたって過去の「ゴジラ」シリーズは参考にしましたか?

佐藤 いくつかの作品を観てはいますが、研究するほど音楽を聴いたわけではないです。過去作がああいう方向性だったから僕はこっちで行こうという意識はなくて、山崎監督が作る「ゴジラ-1.0」の世界観にハマる音楽を追求しました。奇をてらうわけでもなく、意表を突くわけでもなく、今回の映画にふさわしい音楽を作りたいと。もちろん伊福部(昭)先生の曲を大事に使おうという思いはありました。

山崎 曲が品格を上げてくれたと言いますか、大人が観るべき怪獣映画になった感覚があって、佐藤さんのアプローチは正しかったんだなと思います。絶望に立ち向かっていく人々の気持ちをわかりやすくメロディで表現するのではない、非常に大人っぽいやり方。映画を観た人から「音楽がかっこいい」と言われるのでありがたいですね。

出会いは「ALWAYS 三丁目の夕日」、最初の曲は「普通だね」

──先ほどの「佐藤さんから提案してくるときはだいたいうまくいく」という発言や、山崎さんのほぼすべての監督作で佐藤さんが音楽を担当していることから、確固たる信頼関係が築かれているように感じます。初めて制作をともにしたのは2005年の「ALWAYS 三丁目の夕日」ですが、きっかけはなんだったんですか?

山崎 プロデューサーに推薦されて「恋愛小説」(2004年)という映画を試写で観たんですが、佐藤さんが音楽を手がけていて。メロウな曲が多く、「三丁目」のイメージに近かったので「こういうのもうまいんだ」と思ってお願いすることになりました。

左から山崎貴、佐藤直紀。

左から山崎貴、佐藤直紀。

佐藤 その頃はドラマ「GOOD LUCK!!」や「WATER BOYS」シリーズ、映画「海猿(ウミザル)」などでわりと弾けた曲を作ることが多かったんです。職業作曲家なのでなんでも書けるつもりではいたんですが、そういうサウンドのイメージが強いからか、「三丁目」のようなテイストの作品のオファーはあまりなかった。そんなときに監督にお声掛けいただいて、新しい音楽の一面を見せられるという意味でもうれしかったですね。

──その期待に応えるかのように、佐藤さんは「ALWAYS 三丁目の夕日」で第29回日本アカデミー賞の最優秀音楽賞を受賞します。

佐藤 でも最初に送った曲はNGでしたよね。山崎さんやプロデューサーから「普通だね」って(笑)。

山崎 思い出した(笑)。ちょっと流れちゃうというか、自然に入ってくる感じの曲だったんです。曲を聴いただけで「三丁目」とわかるようなテーマ曲が欲しいと伝えて作ってもらったのが「ALWAYS 三丁目の夕日 Opening Title」で、「すげえいい曲来た!」と盛り上がったのを覚えています。テレビで昭和のシーンになるといまだにこの曲が流れますし。

佐藤 曲調は昭和っぽくないんですけどね。そもそものコンセプトは洗練されたヨーロッパ映画のようなサウンドだったんですが、刷り込みって怖くて、「三丁目」の映像と合わせて聴いていくうちに昭和風に思えていくんです。ある意味、いかに人の耳がいい加減かという(笑)。

山崎 昔からあった曲と思っている人もいますから。

佐藤 それが面白いところでもありますよね。

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プロデューサーは反対、山崎は「これでいこう」

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𝑡𝑜𝑘𝑢𝑠𝑎𝑡𝑠𝑢_𝑗𝑝 :|| @tokusatsu_jp

山崎「曲が品格を上げてくれたと言いますか、大人が観るべき怪獣映画になった感覚があって、佐藤さんのアプローチは正しかったんだなと思います」 https://t.co/tdHFzWF1WA

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