ミルクボーイ駒場孝の「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」

映画超初心者・ミルクボーイ駒場孝の手探りコラム「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」 第1回 [バックナンバー]

宇宙系の話があまり頭に入ってこない人間が観た「エイリアン」

「宇宙船に猫おるんですか」

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これまで名作をほぼ観たことがないまま育ち、難しいストーリーの作品は苦手。だけど映画を観ること自体は決して嫌いではないし、ちゃんと理解したい……。そんな貴重な人材・ミルクボーイ駒場による映画感想連載。文脈をうまく読み取れず、鑑賞後にネット上のレビューを読んでも「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」となりがちな彼が名作を気楽に楽しんだ、素直な感想をお届けする。

記念すべき第1回は、リドリー・スコットが1979年に発表した「エイリアン」。「エイリアンがどんなものかというのはさすがに知っている」、だけど「宇宙系の話はあまり頭に入ってこない」という駒場に、SFホラーの古典は響いたのか?

/ 駒場孝(コラム)、松本真一(作品紹介、「編集部から一言」

数多く観ることが、最終的に深く映画を知る第一歩

今回から恐れ多くも映画の連載を書かせてもらいます、ミルクボーイ駒場です。

前回のこがけんさんとの対談でも言わせてもらったように、本当に映画初心者です。なので最初に言いたいのは「お手柔らかにお願いします」ということです。ハードルを下げるとかではなく、まず競技がハードル走ではないと思ってください。仮にハードルを設置するとしても、高さはホチキスの芯くらい低いです。それくらいの気持ちで読んでください。

でも、映画が嫌いとかではなく、むしろいろいろ観たいほうです。ただ純粋に難しい話が本当にまったく理解できないのです。時間軸が急に前後したり、何の前触れもなく回想シーンに行ったり、暗くて見えにくいシーンで長い間なんかごちゃごちゃされたり、とにかくちょっと入り組まれると途端にストーリーが理解できなくなるんです。

一度つまずくとそこから話の意味がわからなくなって頭が熱くなって、悔しくなります。話はどんどん進みますがこっちはつまずいて泣きながら走っているのでその後追いつけることはありません。そんな状態のまま120分が過ぎて、エンドロールを迎えます。

でも時間とお金を割いて「訳わからなかった」と思いたくないのでわかったフリをして帰り道、一緒に観た人に「途中のあのシーンがあったから最後ああなったんやな」とか言われたら「そうやな」などと適当に答えて、家に帰ってネットのレビューを見て「そんなこと言うてた?」と心の中で思って終わります。

もうこんな浅い映画ライフは嫌だ、僕もちゃんと深い部分で映画を理解したい。ずっとそう思っていました。

そんなところにこのたび映画ナタリーさんから、「映画を知らない駒場さんから見た、気楽な映画レビューをお願いしたいです」というお話をいただきました。深い部分で映画を楽しむのはまだまだ先になりそうです。しかし、今の状態での感想でいいならこんなありがたい話はありません。それに数多く観ることが、最終的に深く映画を知る第一歩だと思うので、ありがたく引き受けさせてもらいました。

本当にシンプルに気楽に、映画初心者の僕が思ったことを書かせてもらいたいと思います。

なんちゃら装置とか、名称覚えといたほうがいいですか?

記念すべき1作目は「エイリアン」です。

「エイリアン」場面写真(写真提供:Twentieth Century-Fox Film Corporation / Photofest / ゼータ イメージ)

「エイリアン」場面写真(写真提供:Twentieth Century-Fox Film Corporation / Photofest / ゼータ イメージ)

1979年公開の映画らしいです。その感想を2023年に書きます。新しいですよね。

もちろん観たことはなかったのですが、エイリアンがどんなものかというのはさすがに知ってました。体液をずっと垂らしている頭の長い生き物で、口から小さい口が出てくる。のちに「プレデター」というものとVSにされるということも知識として知っていました。ただプレデターがなんなのかはまたまったくわからないのですが、たぶんエイリアンとVSさせられるくらいなので宇宙人でしょう。エイリアンに対する事前情報はこんな感じです。

観始めてまず、こんなことを言うともとも子もないのですが僕は宇宙系の話があまり入ってこないのでめちゃくちゃ警戒しました。銀河系のなんとかとか、なんちゃら装置とかあの辺って皆さんどうやって観るんですか? 名称覚えといたほうがいいですか? 気にしないでいいですか? 気になるので個人的にはやはり地球系の話が好きです。あと宇宙の話なので当然ずっと画面暗めで訳わからなさそうで、初回にしてなかなか強敵でした。でも物語が進んでいくと、難しそうな宇宙感も最初だけだし、基本は暗いけど明るくよく見えるシーンもある、そしてなんと言ってもエイリアンの出現をちゃんと見れたことに感動しました。「最初こんな形なんや」「次々変化してあの形になるんや」「想像してたより体液もすごい」などいちいちうれしかったです。

シガニー・ウィーバー扮するリプリーと、猫のジョーンズ。(写真提供:20th Century Fox / Photofest / ゼータ イメージ)

シガニー・ウィーバー扮するリプリーと、猫のジョーンズ。(写真提供:20th Century Fox / Photofest / ゼータ イメージ)

ただ「宇宙船に猫おるんですか」は思いました。あんなパイプとか入り組んだとこで放し飼いにしてたら、よく海外とかのハプニング映像で見る、壁の隙間に挟まった猫みたいな感じになりそうでちょっとドキドキしますね。宇宙船内でタバコ吸ってたのもすごいし、何より、ミルク的な飲料をボタンがたくさんある所にちょんと置いて話してたシーンはハラハラしました。僕は新幹線の窓際でも、万が一揺れて倒れたら嫌やなと思うので缶コーヒーとかを置くのが苦手なんです。宇宙船なんか揺れやすいやろうし、あんなとこに置いてて揺れてこぼれたら計器とかにかかってやばいでーと思いました。あと宇宙船内広すぎませんでした? あの人数で把握するの大変そう。あとずっと蒸し暑そう。あとセクシーな切り抜き貼ってる部屋あった。ほんで宇宙船内で雨みたいなの降ってるとこなんやったんやろう。キャップ被ってた人、それを浴びてた感じもなんやったんやろう。とかも思いました。

でも全体的には、ずっとエイリアンの不気味さがあり、最後の最後までスリルを継続させてくれて、観る前構えてたほど難しくなく僕でも観ることができました。

ちなみに今回の「そんなこと言うてた?」は、最初、クルーの人達は普通に寝ていただけかと思っていたのに、観終わってからネットのレビューを見たら「冷凍睡眠から目覚めたクルーは」と書いていました……そんなこと言うてた? 別にそこまで重要じゃないかもしれませんが、置いていかれた気がして少し悔しくなりました。これが記念すべき最初の「そんなこと言うてた?」でした。

これからもシンプルに、気楽に映画を観て楽しんでいこうと思いますので、どうぞお付き合いください、よろしくお願いします。

編集部から一言

もし自分が「エイリアン」の感想を書くなら「監督のリドリー・スコットや、主演を務めたシガニー・ウィーバーの出世作としても知られ……」みたいな文章から始めてしまうところですが、そういった要素が一切なく、純粋に映画の内容のみに言及しているのが最高でした。フェイスハガーが顔に張り付く有名なシーンなどにも言及がなく、とにかく宇宙船の細かい描写が気になっているのが非常に駒場さんらしい感想だと思います。自分もこの機会に「エイリアン」を初めて観たのですが、確かに宇宙船内で雨が降っている描写はどういうことかよくわかりませんでした。ちょっと調べた限りでは結露説などあるようです。正解を知っている人は駒場さんに教えてあげてください。

エイリアン(1979年製作)

西暦2122年、宇宙船ノストロモ号が地球への資源を運ぶ途中、ある星からSOSのような電波が届く。女性航海士リプリーら7人の乗組員は人工冬眠から目覚め、未知の惑星に降り立つが、乗組員の1人に謎の生命体が寄生。その生物はやがて腹を食い破って姿を現し、ノストロモ号内に潜伏して人間を1人ずつ抹殺していく。
第52回アカデミー賞では視覚効果賞を受賞。また続編の「エイリアン2」「エイリアン3」「エイリアン4」、前日譚の「プロメテウス」「エイリアン:コヴェナント」、さらには「プレデター」シリーズとのクロスオーバー作品「エイリアンVS.プレデター」「AVP2 エイリアンズVS.プレデター」など派生作品も多く作られた。

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駒場孝(コマバタカシ)

1986年2月5日生まれ、大阪府出身。ミルクボーイのボケ担当。2004年に大阪芸術大学の落語研究会で同級生の内海崇と出会い、活動を開始。2007年7月に吉本興業の劇場「baseよしもと」のオーディションを初めて受け、正式にコンビを結成する。2019年に「M-1グランプリ2019」で優勝し、2022年には「第57回上方漫才大賞」で大賞を受賞。現在、コンビとしてのレギュラーは「よんチャンTV」(毎日放送)月曜日、「ごきげんライフスタイル よ~いドン!」(関西テレビ)月曜日、「ミルクボーイの煩悩の塊」「ミルクボーイの火曜日やないか!」(ともに朝日放送ラジオ)など。

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