ミルクボーイ駒場孝の「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」 第20回「グレイテスト・ショーマン」

映画超初心者・ミルクボーイ駒場孝の手探りコラム「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」 第20回 [バックナンバー]

ミュージカル作品ならではのテンポのよさが気になった「グレイテスト・ショーマン」

上りも下りもとんとん拍子すぎる

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これまで名作をほぼ観たことがないまま育ち、難しいストーリーの作品は苦手。だけど映画を観ること自体は決して嫌いではないし、ちゃんと理解したい……。そんな貴重な人材・ミルクボーイ駒場孝による映画感想連載。文脈をうまく読み取れず、鑑賞後にネット上のレビューを読んでも「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」となりがちな彼が名作を気楽に楽しんだ、素直な感想をお届けする。

第20回のお題は「グレイテスト・ショーマン」。これまではミュージカル作品に苦手意識があったという駒場だが、前回のコラムでは「RRR」のダンスシーンを受け入れられたと聞き、この連載では初めてミュージカルを取り上げる。基本的には満足だったようだが、どうしても細かいことが気になってしまうようで……。

/ 駒場孝(コラム)、松本真一(作品紹介、「編集部から一言」

名言を心に刻んでいたところに今作のメッセージが来た

こんにちは、ミルクボーイ駒場です。今回鑑賞したのは2018年公開の「グレイテスト・ショーマン」です。事前情報はなかったのですが、公開当時、ポスターを見たイメージで舞台のミュージカルかと思っていた気がします。そしてよく見たら映画なのか、みたいに思った記憶があります。今回こちらを鑑賞することになった経緯が、前回このコラムで「RRR」を観て、僕が“ミュージカル的なダンスシーンを受け入れられた”という感想を持ったということから、映画ナタリーさんから「それでは本格ミュージカルをぜひ」となったという訳です。

上映時間は105分、ちょうど集中して観られる長さ、そしてストーリーもとてもシンプルで、“主人公が努力して這い上がって頂点を極める、でもそこからすべてがうまいこといく訳ではない”みたいな流れで、難しい伏線などもなく置いていかれることもなく観ることができました。そして歌やダンスシーンも迫力があって見応えもあり、さらに「あ! これこの歌やったんや!」という恒例の知ってる歌が出てきたときの感動もあり、とても満足度の高いものでした。

そしてとても偶然なのですが、この作品を観て僕が感じたメッセージが、少し前に読んだ偉人の名言集みたいな本の中に書かれていたことと少し通じるところがあった気がしたんです。米コカ・コーラ元社長の言葉で、「人生とは5つのボールでお手玉しているようなものである。その5つとは、“仕事”“家庭”“友情”“健康”“自分の精神”。その中で、“仕事”のボールだけはゴムでできている。なので落としてもまた跳ね返ってくる。でもそれ以外の4つのボールはガラスでできている。落としてしまうと割れてしまう。仕事に気を取られすぎているとほかの大切なものは元には戻らない」という旨のもので、名言すぎて心に刻んでいたところに今作のメッセージが来たので、どこか共通するものがあり個人的に「おぉ」と思いました。こういう気付きが、映画を観てよかったと思えるところでもあるなと思いました。

「グレイテスト・ショーマン」場面写真(写真提供:Twentieth Century Fox Film Corporation / Photofest / ゼータイメージ)

「グレイテスト・ショーマン」場面写真(写真提供:Twentieth Century Fox Film Corporation / Photofest / ゼータイメージ)

僕が映画人として成功していく過程だと思って

ただとてもいい映画だと思ったのですが、ちょっと気になったのが、全体的に「上りも下りもとんとん拍子すぎる」というところです。主人公が、私生活も仕事も、成功していく過程がうまいこといきすぎ、そして落ちていくのも速すぎ(落ちていくのはなんだって速いかもしれませんが)。そしてさらに気になるのはその落ちたところから上がるときもうまいこといきすぎ、な気がしました。特に後半なんて、なかなかのことをしたのに一撃で這い上がりました。よく言えば映画として“テンポがいい”のでしょうが、悪く言えば“調子がよすぎる”気がしました。めちゃくちゃ偉そうなことを言いましてすみません、ちょっと怖くなりました。でもコラムですので個人として思ったことを書かないとよくないと思うので書かせてもらいました。ではなぜそんな作りになっているかと考えたら、“ミュージカル映画だから”じゃないでしょうか。歌やダンスシーンによって一気に場面が変わります。明から暗へ、そして暗から明へ。それがいいところでもあり悪いところでもあるんじゃないでしょうか(一石を投じた風)! 暗からダンス挟んでもっかい暗とかないですもんね。踊ったからには何か状況が変わってる。だからテンポはすごくいいんですよね。暗から暗とかもあってもいい気もしますが、それでは成立しないんでしょうかね。なので、仮にこの映画をミュージカルにとらわれずに作っていれば、もっと掘り下げたドキュメンタリー的な作品になっていたような気もしました! そういう方向でも観てみたかった……! 映画コラムたったの20回目にしてなんか映画1万本観てきた人のような恐ろしいことを言ってます、申し訳ありません。でも、特にこの作品は実話を元にした話らしく、話としてとても興味があるが故に、リアルに描かれたほうも観てみたいと素直に思いました。

こう考えると、僕にはまだミュージカル受け入れ耐性は付いてなかったのかもしれません。その証拠に今回の「そんなこと言うてた?」は、序盤のミュージカルシーンについて「なんでそんなにまったく同じシーツばっかり干してた? 」です。一世帯で干す量じゃないですし、「そうじゃない、海外ではアパートの住人全員が屋上に干すんだよ」と言われたとしても、「にしてもみんな同じシーツってないよね」などもうそこで気になってしまってます。屋上でそんなクルクルクルクル回って危ない!とかも思いました。これがアニメならよかったんでしょうが、実写となると気になってしまいましたね。そんなところで引っ掛かっている時点で入り込めてませんよね。僕は、ミュージカルならミュージカル、映画なら映画、と別で観るのが合ってるのかなと、そんなことを思いました。

今回はちょっと斬り込ませてもらいました。めちゃくちゃ的外れなことを言ってるかもしれませんが、でもこれも僕が映画人として成功していく過程だと思って、どうか大目に見てください。正直な気持ちです。グレイテスト・ショウジキマンです。これはだめです、ふざけすぎました。関係者の方、ファンの方々これはすみません。でもこれからもいろんな映画を観ていろんな意見を持ちたいと思います!

編集部から一言

駒場さんが引っかかったシーツのくだりは、本文中の写真にもある、主人公のバーナムと妻のチャリティが「ア・ミリオン・ドリームズ」に乗せてアパートの屋上でダンスをする場面。たくさんのシーツがあるのは、2人の動きをシーツ越しの影が映す演出のためだとは思うのですが、駒場さんの指摘を受けて観直すと「たしかにシーツが全部同じだな……」と気になり始め、これが実写ではなくアニメだったら気にならなかったという指摘にもひざを打ちました。「テンポがよすぎる」ことに違和感を覚えるのも含め、駒場さんならではのフラットな感想によって、知らず知らずのうちに「そういうものだから」と自分を納得させていたことに気付かされました。

「グレイテスト・ショーマン」(2017年製作)

「グレイテスト・ショーマン」場面写真(写真提供:Twentieth Century Fox / Photofest / ゼータイメージ)

「グレイテスト・ショーマン」場面写真(写真提供:Twentieth Century Fox / Photofest / ゼータイメージ)

“ショービジネスを生み出した男”と称されるアメリカの興行師、P・T・バーナムの波乱万丈な人生を描くミュージカル。バーナムは小人症の男や結合双生児など、唯一無二の個性を持った人間を集めたサーカスを始めた。ショーは大盛況となるが、批評家からは酷評。それでも彼は次なる挑戦を続けていく。マイケル・グレイシーの長編映画監督デビュー作品で、バーナムをヒュー・ジャックマンが、パートナーのフィリップ・カーライルをザック・エフロンが演じた。音楽を担当したのは「ラ・ラ・ランド」のベンジ・パセックとジャスティン・ポール。主題歌「ディス・イズ・ミー」は、第75回ゴールデングローブ賞の主題歌賞を獲得し、第90回アカデミー賞の歌曲賞にもノミネートされた。

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