井上荒野の小説「
「だれかの木琴」は、若い美容師に営業メールをもらったことをきっかけに自分でも理解できない感情に突き動かされ、常軌を逸したストーカーと化していく主婦の姿を描いたサスペンス。主婦の小夜子を常盤、美容師の海斗を池松が演じるほか、小夜子の夫に
東は常盤について「ただ『そこに居る』だけで、女の微妙な心の動きを表現できる人」と語り、池松については「自由で繊細な青年の心情を表現できる、若手のホープ」とコメント。そんな東の作品に出演することについて、常盤は「女優を始めた頃の私に教えてあげたいです!」と述べ、池松は「また1つ大きな夢が叶ってしまった気分でした。でもそうも言ってられないので、平気なふりして現場にいこうと思いました」と語っている。
「だれかの木琴」は2016年9月より、東京・有楽町スバル座ほか全国で公開。
東陽一 コメント
「だれかの木琴」を映像化しようと思った理由
題名が魅力的な「謎」をふくんでいること。また、映画化にあたって、いろいろな要素を書き加えたり、人物を増やしたりしても、全体の構造がこわれない小説だと考えたから。
キャスティングの理由
常盤貴子さんは、熟成した演技力の、その深い底の方に、ただ「そこに居る」だけで、女の微妙な心の動きを表現できる人、だと思っていたし、池松壮亮さんは、類型的な若者像でなく、もっと自由で繊細な青年の心情を表現できる、若手のホープであるから。
観客へのメッセージ
女と男の間に揺れ動くエロス感覚を、サスペンスフルに、また大胆に描いた映画です。じっくりと楽しみながら観てください。
常盤貴子 コメント
出演が決定したときの気持ち
あの!東陽一監督の映画に参加させて頂けるなんて。「ザ・レイプ」「もう頬杖はつかない」に憧れ、興奮していた女優を始めた頃の私に教えてあげたいです!
小夜子役について
小夜子役を演じるにあたって、監督から、「役作りはしないでください」と強く何度も言われていたので、「役作りをしない」役作りに挑戦してみました。
池松との共演について
東陽一監督作品の一部であろうとする姿が、同じ志を抱いていた私にとっては最高の理解者であり、最強のパートナーでした。
観客へのメッセージ
東陽一ワールドを楽しみましょう!
池松壮亮 コメント
出演が決定したたときの気持ち
東監督の作品に出演できるなんて、嘘じゃないかと思いました。また1つ大きな夢が叶ってしまった気分でした。でもそうも言ってられないので、平気なふりして現場にいこうと思いました。
海斗役について
はっきり言って殆ど東さんに預けていました。僕がやるべき事は、用意してもらった世界を信じることくらいでした。
常盤との共演について
殆ど話す機会はありませんでしたが、現場で何も言わず真摯にやってのける姿がとても印象に残っています。その強さは美しく、小夜子という1人の女性に深みと迫力を感じました。
観客へのメッセージ
東陽一監督と、「だれかの木琴」の脚本に惚れ込みました。どんな映画が出来上がるのか僕自身も楽しみです。乞うご期待ください。
井上荒野 コメント
映画化を受けて
まず、東陽一監督に撮っていただけるということにびっくりしました。「絵の中のぼくの村」は、私にとって邦画ベスト3に入る作品で、ちょうど一週間くらい前に久しぶりに観返したところだったからです。不思議な縁を感じましたし、東監督から原作として選んでいただいて大変光栄に思っています。同時に、監督とこの小説の取り合わせは意外な感じもするのですが、その意外性が面白さになるのではないかと考えています。この小説は、ストーカーになっていく主人公の捉え方によって、どんな映画になるかも決まると思うのですが、その点でも、東監督の人間に対する視線を信頼しています。
キャスティングについて
常盤貴子さんは、いくつになってもイノセントな魅力がある女優さんだと思います。そこが私にとっての小夜子のイメージにぴったりなんです。大きな、きれいな瞳も印象的ですが、そこに小夜子の静かな狂気が宿るところを見たいです。
池松壮亮さんが演じる海斗は基本的にはやさしい男で、でも無責任で、ある種の冷酷さも併せ持っている青年です。そういうキャラクターを、池松さんは年齢的に、肌で理解できるところがあるのではないかと思います。甘さの中の毒、あるいはつめたさの中のわずかな熱のようなものを、彼がどんなふうに見せてくださるのか楽しみです。
観客へのメッセージ
「だれかの木琴」はストーカーの物語です。「少しずつ」「だんだん」の物語でもあります。ごく普通の主婦が、ほんの些細なきっかけで、少しずつ、だんだんくるっていく。どこで間違ったのか。どこまで戻ればやり直せるのか。そんなことを考えながら観てくださると嬉しいです。
一方で、原作と映画とは、べつのものであるとも考えています。映画でしかできない表現というものがあります。ラストシーンで使う予定だという音楽について聞いたときゾクゾクしました。私の小説が、東陽一監督によってどんなふうに料理され、あらたな容貌を見せるのか。私自身も楽しみにしています。
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