本作は小野不由美のファンタジー小説「月の影 影の海 十二国記」(新潮社)を、元吉庸泰の脚本・歌詞、山田の演出、深澤恵梨香の音楽で立ち上げる新作ミュージカル。「十二国記」は1991年の「魔性の子」(新潮社)を起点とするシリーズで、今回は、本編第1作となる「月の影 影の海」が描かれる。劇中では、“我々が住む世界”の陽子と、異界に連れ去られたあとのヨウコという1人の女子高生・中嶋陽子を、2人の俳優が担当。主演を務める柚香がヨウコ役を、加藤が陽子役を演じる。
製作会見ではまず、柚香によって、原作書影をオマージュした新ビジュアルがお披露目された。柚香は「故郷に生きて帰るんだという、執着と強い意志を表現したいと思って撮影に挑みました」と撮影時の心境を振り返った。宝塚歌劇団退団後、本作が本格的なミュージカル出演となる柚香は、「光栄であると同時にプレッシャーも感じています」と思いを吐露し、原作について「自分の生き方、物事の乗り越え方や捉え方、自分の欠点と向き合ったときに、『あなたはどうするんですか』と問われるような作品。ヨウコ(中嶋陽子)は年相応の葛藤や迷い、過ちなどを抱えていますが、異界に飛ばされたあとの試練との向き合い方に尊敬しますし、果たして自分は?と顧みて、学びをいただいています」と話した。
加藤は、「ヨウコ / 陽子が旅の中で変化していき、自分らしさや自分の人生を見つけていく様子が魅力的です。ミュージカルになったときもその過程を大切に演じたい。日本にいるときの陽子は、ヨウコが旅をしているときにも出てきて、ヨウコの心の中で対話をします。私の陽子は“家に帰りたい”という思いを持ち続けることが大切なのかなと思っています」と自身の役について分析する。
世界中にファンを持つ「十二国記」シリーズを元にした新作ミュージカルであることについて、山田は「架空の世界をどうビジュアル化するかという点で難易度が高い。でも、ビジュアルが主体のメディア(映像・アニメ)でできることと、生身の人間が毎日2回公演をすることでは特性が違います。舞台『十二国記』をどのような語り口にすれば価値が出るか。舞台では、何もなくても“場所”を宣言すれば、そこになります。ヘリコプターやバリケードといった大袈裟なものは用いず、ヨウコ / 陽子という高校生の女の子がたどる過酷な運命に、お客さんが感情移入できるミュージカルにしたい」と構想を述べた。
また、山田から「ネズミになる練習をしている」と話を振られた半獣・楽俊役の牧島は、「この役が決まってから、街で見かけるネズミが少しだけ愛おしくなりました」と告白。一方、太田は「半獣の楽俊をどのように演じるかは、楽しみにしてもらいたい。何を尻尾とするのか、お客さんの想像力にお任せします」と公演への期待をあおった。
景麒役を演じる相葉は「長い歴史がある作品を、ファンの方のみならず、初めて『十二国記』に触れる方々にも、この魅力が伝わるように努めたい」と話し、本作での好きなシーンを「陽子と契りを交わすシーン。『許すとおっしゃい』(景麒)、そして一言、『許す』(陽子)。そこから物語が進み、世界が広がっていく感覚があって印象深いですね」とコメントした。
また、本作では“モップ”と呼ばれる技法で世界観が表現される。初めてモップのリハーサルを観たときに、柚香は「最初はモップ?と思ったのですが、飲み込まれるというか、ぬべっと出てくるというか、空間が目まぐるしく変わる様子が効果的に表現される」と説明。相葉も、「演出プランの検証動画を見させていただき、“あらま”と。こういう演出は生まれて初めてで、幻想的な世界に舞台美術や音楽、衣裳が合わさり、さらに僕たちの演技や歌唱で『十二国記』の世界が膨らんで届けられると思うとワクワクしました」と微笑む。また、ミュージカルの大きな武器となる音楽について、「壮大なミュージカル。私と梨里香さんが2人で掛け合って心情を通す場面や、自分自身に問いかける場面が、素晴らしい音楽で次々と展開されます」(柚香)、「物語の中で、“1人の人物がデュエットする”ということはあまりない。ヨウコが苦難に立ち向かっていくときに音楽が有効活用され、ミュージカルだからこそできる表現をお楽しみいただけるはず」(加藤)と説明された。さらに柚香は宝塚歌劇で培った殺陣を、本作では異形の獣たちと戦うシーンで披露することも明かした。
なお、記者からツアー公演で楽しみなことを問われると、牧島が「ご飯です!」と大きな声で即答。太田とWキャストであるため、ほかの出演者より余裕があることについて申し訳なさそうな様子を見せると、太田が「緊張感を持っていかないと、プクプクした楽俊になっちゃう」、相葉が「なかなか東京まで来られない方々に新たな演劇体験を届けられるのはうれしい」、加藤が「Wキャストではないのであまりお休みはないのですが、自然を楽しんだりしたい」、柚香が「劇場によって同じ作品でも雰囲気が変わるので、いろいろな劇場で上演させていただけるのが楽しみ。お食事ももちろん楽しみですが、ヨウコさんはお食事を召し上がれなくて大変な中、獣と戦いながらがんばっているので……今回は皆様との出会いや作品作りに邁進したい」と語るなど、牧島を温かくイジるようなコメントが続き、最後に山田が「水炊き、ねぎ焼き、ひつまぶしです」とフォローするなど、カンパニーの風通しの良さをのぞかせた。
なお、本作に劇団プークがパペット制作、柴崎喜彦がパペット操演指導で参加する。公演は、12月9日から29日まで東京・日生劇場、来年1月6日から11日まで福岡・博多座、17日から20日まで大阪・梅田芸術劇場 メインホール、28日から2月1日まで愛知・御園座で上演される。
ミュージカル「十二国記 -月の影 影の海-」
開催日程・会場
2025年12月9日(火)〜29日(月)
東京都 日生劇場
2026年1月6日(火)〜11日(日)
福岡県 博多座
2026年1月17日(土)〜20日(火)
大阪府 梅田芸術劇場 メインホール
2026年1月28日(水)〜2月1日(日)
愛知県 御園座
スタッフ
原作:小野不由美「月の影 影の海 十二国記」(新潮文庫)
脚本・歌詞:元吉庸泰
音楽:深澤恵梨香
演出:
出演
ヨウコ(中嶋陽子):
陽子(中嶋陽子):
楽俊:
蒼猿:玉城裕規
舒栄:原田真絢
延王:章平
景麒:
新井海人 / 伊藤俊彦 / 今村洋一 / 岩城舞 / 植木達也 / 桜雪陽子 / 岡山玲奈 / 木村和磨 / 木村優希 / 熊野義貴 / 小林風花 / 小宮山稜介 / 篠本りの / 鈴木里菜 / 砂田理子 / 轟晃遙 / 豊田由佳乃 / 船﨑晴花 / 町田慎之介 / 松村曜生 / 三浦優水香 / 三上莉衣菜 / 矢野友実 / 山名孝幸 / 吉田萌美
※熊野義貴と鈴木里菜はオンステージスウィング。
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ぶー子 @bubutown2020
さすがステージナタリーさん、レポが詳細!
そしてモップってどんな演出技法??ちょっと調べただけでは出てこなかった。それだけ新しい演出方法なのかな👀楽しみ〜。そしてネズミも! https://t.co/RnvB0Z4Juz