音楽劇「エノケン」“喜劇王”役の市村正親が思い語る「人生をお見せします」

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市村正親が主演を務める音楽劇「エノケン」の製作発表が、昨日7月29日に東京・東京キネマ倶楽部で行われた。

音楽劇「エノケン」製作発表の様子。左から豊原功補、本田響矢、松雪泰子、市村正親、又吉直樹、シライケイタ。

音楽劇「エノケン」製作発表の様子。左から豊原功補、本田響矢、松雪泰子、市村正親、又吉直樹、シライケイタ。

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エノケンの愛称で親しまれ、“日本の喜劇王”とも言われた榎本健一の人生を描く本作は、又吉直樹の新作戯曲。演出をシライケイタが手がける。本日の会見には市村、又吉、シライのほか、松雪泰子本田響矢豊原功補が出席した。

音楽劇「エノケン」製作発表で歌唱披露する市村正親。

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会見は、110名のオーディエンスが見守る中、榎本健一を演じる市村の歌唱披露でスタート。市村は、本作で作曲・音楽監督・演奏を担当する和田俊輔のピアノ伴奏に乗せ、劇中歌「私の青空」を披露。榎本健一が歌ったことで知られる同楽曲を、市村は身振り手振りを交えて軽やかに歌い、大きな拍手を浴びた。

又吉直樹

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その後舞台上には改めてキャストとクリエイターが登場。脚本執筆のため、榎本健一に関する資料や映像に多数触れたという又吉は「エノケンさんには言語や理屈を超越した魅力を感じる」と語り、脚本については「人間ドラマとして書いた。一生懸命生きている中で、うまくいかないことも時代に翻弄されることもある。そういうストーリーになった」とコメント。また「“喜劇王”のイメージに近い、現代の芸人は誰だと思うか」と尋ねられた又吉は、お笑いコンビ・ピースの相方である綾部祐二を挙げて「エノケンさんとは違いますが、彼には『俺を観ろ! 俺が主役だ!』というマインドを感じる」と回答し、笑いを誘った。

シライケイタ

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シライは「又吉さんが本当に面白い脚本を書いてくれた」と又吉を称賛し、劇中で榎本健一が発する「自分は賢い人が知られるような作品は作りたくない。誰もが笑える、人間の血の通った作品を作りたいんだ」という旨のセリフを紹介。「これは本作のテーマだと思いますし、力を合わせてそういう作品を作れたら」と言葉に力を込めつつ、「大正から昭和を駆け抜けたエノケンさんと、当代のトップエンターテイナーである市村さんの人生が重なって感じられる舞台になれば」と思いを語った。

市村正親

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市村は「僕は舞台人としてエノケンさんを尊敬しています。彼の本には『誰かを笑わせようと思って笑わせるのではなく、真剣に生きることが笑いにつながる』と書いてありましたが、それは喜劇でない演劇にも通ずる」と述べる。また初のシアタークリエ出演となる市村は、芸術座でよく観劇していたことを明かして「芸術座の跡地にあるシアタークリエで、昭和の物語をやれることがうれしい。運命を感じます」と感慨をにじませた。

松雪泰子

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松雪は、榎本健一の前妻・花島喜世子と、後妻・榎本よしゑの2役を演じ分ける。松雪は「私は劇中で、役柄の若い頃から六十代頃までを演じます。その時間の流れと、エノケンさんとの関係性の変化を、市村さんと丁寧に作れたら」と意気込みを口にする。また「市村さんに歌唱のコツをお聞きしたい」と言う松雪に、市村が「今の松雪さんの歌い方で問題ないと思います!」と即答すると、松雪は「断られちゃった、どうしよう」と笑い交じりに呟き、記者たちを和ませた。

本田響矢

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音楽劇「エノケン」製作発表の様子。汗を拭いたティッシュのかけらが頬に付いてしまった本田響矢(右)と、それを自分のハンカチで拭う豊原功補(左)。

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榎本健一の息子・榎本鍈一と、劇団員の田島太一の2役を務める本田は「父、そして劇団の大先輩という2つの視点からエノケンさんという大人物を見られるのが楽しみ」と笑顔を浮かべ、「素晴らしい先輩たちとご一緒するので、スポンジになった気持ちで『吸収、吸収!』と学びながら取り組みたい」と気合十分に述べた。

豊原功補

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榎本健一の劇団で座付き作家となる菊谷榮を演じる豊原は「脚本にはエノケンと人々の出会い、演劇作りに取り組む様子が描かれている。まさに自分も十代、二十代の頃に体験したような、温かく、面白く、乱暴な時間が、脚本に刻まれていると感じた」と話す。また豊原は菊谷が戦地に招集され、帰らぬ人となることに言及して、「戦争の時代に、菊谷がどれほど喜劇に傾倒し愛したのか。菊谷のすごさを感じながら、この作品にかじりつきたい」と思いを込めた。

音楽劇「エノケン」製作発表の様子。左から本田響矢、松雪泰子、市村正親、豊原功補。

音楽劇「エノケン」製作発表の様子。左から本田響矢、松雪泰子、市村正親、豊原功補。[拡大]

会見では市村が役作りを語る場面も。市村は「僕はリアルタイムでエノケンさんを観ていたから、特徴的な歌い方や身体の動かし方を知っていますが、彼のお芝居は独特。でも今回はエノケンの真似をするのではなく、僕がエノケンになれば良いと思う。今エノケンを知っている人は少ないと思いますが、今回の作品を通じて当時の人々の物語を描けたら。そうすれば天国のエノケンさんも『市村やるね、ああいうふうに俺を演じるんだ!』って思ってくれるんじゃないかな」と話す。又吉が市村の言葉に「エノケンさんは『細かいことを気にせず、好きにやれ』とおっしゃる気がします」とうなずくと、市村は「人生をお見せします」と結んだ。

公演は10月7日から26日まで東京・シアタークリエ、11月1日から9日まで大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール、15・16日に佐賀・鳥栖市民文化会館 大ホール、22日から24日まで愛知・名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)、28日から30日まで埼玉・ウェスタ川越 大ホールにて。なお会見では、シアタークリエ公演のチケット完売を受けて、10月16日18:00開演回が追加されることも明かされた。

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音楽劇「エノケン」

2025年10月7日(火)〜26日(日)
東京都 シアタークリエ

2025年11月1日(土)〜9日(日)
大阪府 COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

2025年11月15日(土)・16日(日)
佐賀県 鳥栖市民文化会館 大ホール

2025年11月22日(土)〜24日(月・振休)
愛知県 名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)

2025年11月28日(金)〜30日(日)
埼玉県 ウェスタ川越 大ホール

スタッフ

作:又吉直樹
演出:シライケイタ
題材監修:原健太郎

出演

榎本健一:市村正親
花島喜世子・榎本よしゑ:松雪泰子
榎本鍈一・田島太一(劇団員):本田響矢
菊田一夫:小松利昌
古川緑波:斉藤淳
柳田貞一:三上市朗
菊谷榮:豊原功補

公演・舞台情報

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高村四郎【映像】 @st_today

めっちゃ気になったけどチケット取れなかった… https://t.co/ksnyHTBtWo

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