新国立劇場バレエ団は24日から27日にかけてロンドンにあるロイヤル・オペラ・ハウスにて「ジゼル」を上演する。2022年に
吉田は、かつて自身が踊っていた劇場で新国立劇場バレエ団が公演を行うことについて「新国立劇場バレエ団の芸術参与だった頃は『ダンサーたちがロイヤル・オペラ・ハウスの舞台に立てたらどんなことが起きるんだろう』とぼんやりとした夢を抱いておりましたが、芸術監督となってからは、みんなが作り上げる舞台が世界レベルだなと思い、『世界中の皆さんに観てもらいたい』という欲に変わりました(笑)。新国立劇場バレエ団は歴史も浅く世界ではなかなか知られていないですが、今回の海外公演を機にいろいろと展開していきたい。新国立劇場としても今回、現地での宣伝以外のことはすべて自分たちでやっているので、スタッフたちは大変だと思いますが、そのノウハウが今後の財産となると思います」と語った。
4月の「ジゼル」再演の手応えについてMCが尋ねると、吉田は「幕が開いた時に、セットや衣装、照明も含めた総合芸術として良い作品ができあがったと感じました。初演よりも“演じる”という部分を掘り下げることができ、私がイギリスでずっと学んできた演劇性の高いブリティッシュスタイルを引き継ぎながらも、新国立劇場バレエ団に合う作品に仕上がったと思う」とコメント。新国立劇場バレエ団ならではの「ジゼル」の魅力を問われると「チャレンジングなフォーメーションが含まれるコールドバレエは、アラスター・マリオットさんがこのバレエ団のことを考えて作ってくださったもの。コールドバレエで勝負できる作品だと思う」とレベルの高さを語り、「ただ機械的にそろっているのではなく、1人ひとりがストーリーを伝える必要があるので、再演ではみんなが表現を追求し、村人たちの世界から死後の世界へという、1幕と2幕のコントラストが際立つ作品になった」と説明した。
米沢は、3週間後に迫るロンドン公演について「実感がまったくない」と言う。「私はイギリスに行ったことがなく、(ロイヤル・オペラ・ハウスが位置する)コヴェント・ガーデンは幼い頃に観た映画『マイ・フェア・レディ』に出てきた場所であり、ロイヤル・オペラ・ハウスも小さい頃から観ているバレエのビデオの中の場所。どこかおとぎの国のようなイメージを抱いていたので、自分があと数週間でそこに立つのが夢のようです。スーツケースを買ってはみたものの、本当に行くのかなあと思っていました」と話しつつ、「こうして皆様の前に立っていると、本当に行くんだなあとドキドキしてきました」と実感が湧いてきた様子を見せた。
昨年、心臓疾患による休養を経た米沢に対し、MCが現在の心境を尋ねる場面も。米沢は「一時期は『全幕ものを踊るのは、もう無理かもしれない』と覚悟しました。でも1年経ってみると、こうして私の大好きな『ジゼル』で全幕復帰をし、ロイヤルの舞台でも踊ることができる。こんなにうれしいことはあるんだろうかというくらい、うれしい。感謝を胸に精一杯の踊りをできたら」と喜びを噛みしめる。復帰を果たした4月の「ジゼル」では、本番に向けて、呼吸をはじめとする身体との向き合い方を徹底的に見直したと言い、「『これだけやっても何かあるならそれはしょうがない』と腹をくくって舞台に出ました。でも出る前に吉田さんの顔を見たら涙が出てきて、2人でちょっと泣いてしまって。それくらい、私にとって新国立劇場の舞台が大切で、かけがえのないものなんだなと感じました」と振り返る。また、演技面でも変化があったとし、「私にとってジゼルはどのような少女なのかをつかみづらい役で、これまで“元気すぎる”だの“か弱すぎる”だの言われてきたのですが、今回は“踊りたくてしょうがない少女”というのが自分とリンクし、スッと役に入ることができた」と語る。ロンドン公演に向けては「吉田都という素晴らしいダンサーを愛した人たちの前で踊り、その人たちが新国立劇場バレエ団というバレエ団も愛してくれたらいいなと思います」と願いを口にした。
井澤は「海外で全幕ものを踊るのは初めてなので、楽しみで仕方がない。英国のロイヤル・オペラ・ハウスで踊ることは、ダンサーにとってみれば奇跡なので、プレッシャーもありますが、自分なりに表現したい」と瞳を輝かせる。また、渡英用のスーツケースを用意したかを問われると「これから買いに行きます」と明かし、会場は笑いで包まれた。また、今シーズン、佐々晴香や高田茜といった海外名門バレエ団プリンシパルをゲストに迎えた公演で相手役を務めることが続いた井澤は、それらの経験について「毎回、技術も表現も驚かされることばかりでした。(6月に高田と共演した)『不思議の国のアリス』では、『もっとアリスに楽しく踊らせてあげたい』という感情が自然と芽生え、相乗効果とはこういうことなのかと。(高田が)出してくる表現も公演ごとに異なり、すごいなあと勉強になりました。自分の課題もたくさん見えてきたので、今後に生かしたい」と語った。
渡英を控える団員たちの雰囲気については、米沢が「女性陣は『梅干し、持っていく?』などと持ち物の話をしたり、みんな日本のお風呂がないことが心配で『バスタブが欲しい』という話をしたりしている」と明かす。井澤も「男性ダンサーも銭湯好きが多いので、『サウナとかあるかな?』と話しています」と同意し、場を和ませた。
最後に吉田は、ロンドン公演での願いとして「ダンサーたちにとにかく楽しんでもらいたい。やはり環境が変わることでいつもと違う力が加わることもあると思いますが、みんな4月にやったものをそのままやればいい。イギリスのお客さんに伝えることを楽しんでもえらえたらと思います」と言葉に力を込めた。
なお記者発表では、「ジゼル」ロンドン公演の様子が現地で収録され、日本で放映される方向で調整が進められていることが、藤野理事によって明かされた。詳細は続報を待とう。
新国立劇場バレエ団「ジゼル」
2025年4月10日(木)〜20日(日) ※公演終了
東京都 新国立劇場 オペラパレス
2025年7月24日(木)〜27日(日)
イギリス ロイヤル・オペラ・ハウス
スタッフ
振付:ジャン・コラリ / ジュール・ペロー / マリウス・プティパ
演出:
ステージング・改訂振付:アラスター・マリオット
音楽:アドルフ・アダン
出演
4月10日公演
ジゼル:小野絢子
アルブレヒト:福岡雄大
4月11日公演
ジゼル:木村優里
アルブレヒト:渡邊峻郁
4月12日公演13:30開演回
ジゼル:柴山紗帆
アルブレヒト:速水渉悟
4月12日公演18:00開演回
4月13日公演
ジゼル:池田理沙子
アルブレヒト:奥村康祐
4月18日公演
ジゼル:小野絢子
アルブレヒト:福岡雄大
4月19日13:30開演回
ジゼル:柴山紗帆
アルブレヒト:速水渉悟
4月19日18:00開演回
ジゼル:米沢唯
アルブレヒト:井澤駿
4月20日公演
ジゼル:木村優里
アルブレヒト:渡邊峻郁
7月24日公演
ジゼル:米沢唯
アルブレヒト:井澤駿
7月25日公演
ジゼル:小野絢子
アルブレヒト:福岡雄大
7月26日14:00開演回
ジゼル:柴山紗帆
アルブレヒト:速水渉悟
7月26日19:30開演回
ジゼル:米沢唯
アルブレヒト:井澤駿
7月27日公演
ジゼル:木村優里
アルブレヒト:渡邊峻郁
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asako mu @asax31
新国立劇場バレエ団「ジゼル」ロンドン公演まで3週間、米沢唯「夢を見ているよう」(会見レポート) - ステージナタリー https://t.co/AzgrvJBqzV