谷崎潤一郎を驚かせるような作品に、兼島拓也×河井朗「刺青 / TATTOOER」日本公演開幕

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兼島拓也が脚本、ルサンチカの河井朗が演出を手がける「刺青 / TATTOOER」が、本日9月20日に東京・アトリエ春風舎にて開幕。これに先駆け昨日19日、舞台挨拶と公開ゲネプロが実施された。

「刺青 / TATTOOER」舞台挨拶より、左から河井朗、兼島拓也、ド・ランクザン望、LEO ASHIZAWA、AKI NAKAGAWA、蒼乃まを、東學。

「刺青 / TATTOOER」舞台挨拶より、左から河井朗、兼島拓也、ド・ランクザン望、LEO ASHIZAWA、AKI NAKAGAWA、蒼乃まを、東學。

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「刺青 / TATTOOER」より。

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「刺青 / TATTOOER」休憩中のライブペインティングより。

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本作は、谷崎潤一郎の第1作「刺青」に着想して立ち上げられた新作。大阪・梅田芸術劇場とイギリス・ロンドンのチャリングクロス劇場の共同制作により、9月にアトリエ春風舎で日本語上演、10月にチャリングクロス劇場で英語上演される。出演者は日本とイギリス共通で、LEO ASHIZAWA、AKI NAKAGAWA、ド・ランクザン望、蒼乃まを。さらに本作には墨絵師の東學が参加し、幕間20分間のライブペインティングでステージ上で墨絵を描き上げる。

「刺青 / TATTOOER」より。

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「刺青 / TATTOOER」より。

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主人公は、評判の高い刺青(ほりもの)師・清吉。彼の長年の願いは、美女の肌に己の魂を彫り込むことだったが、理想の相手に出会えずにいた。ある日、清吉のもとに、カズヨと名乗る理想的な女性が現れて……。

客席に座り、まず目に飛び込んできたのは、ステージ床に大きく広げるように貼られた円形の白い紙。その中心には墨で蜘蛛が描かれ、照明で照らされている。シンと静まった空間に、着物を着た女性が音もなく現れると、客電が落ちる。女性は膝をついてそっと蜘蛛に手を伸ばし、観客を物語の世界へ引き込んだ。

「刺青 / TATTOOER」より。

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2幕構成の本作では、1幕目で清吉の若かりし頃、2幕目で清吉の老年期が描かれる。清吉と女性の“支配する側”と“支配される側”という関係が物語の後半で逆転する構造は、谷崎の「刺青」と共通する一方で、立場逆転のきっかけとその後の展開が大きく異なる。清吉役のASHIZAWAは、若い清吉の欲望を、蒼乃演じる“カズヨA”へのねっとりとした熱のこもった視線で表現。また2幕では、清吉を尻に敷きながらも、身の回りの世話をする“カズヨB”役のNAKAGAWAとのテンポの良い掛け合いを通し、盲目となり老いた清吉をコミカルに演じた。なお、主人公の清吉は、谷崎の別作品に登場するさまざまなフェティシズムを併せ持った人物として描かれる。その生々しい欲望は、イギリスからやって来た清吉ファンの客に目撃されることで、時に官能性よりも滑稽さが強調される。ド・ランクザンは、清吉とカズヨの刺激的なやり取りを目の当たりにして動揺する客をユーモラスに演じ、観客の笑いを誘った。

幕間のライブペインティングでは、上裸でうつ伏せになったド・ランクザンの背中と床の上に、東が筆を走らせる。ゲネプロ前に行われた舞台挨拶で、東が「当初『“蜘蛛”を描いてください』と依頼されたのを“雲”に聞き間違えたので、結局両方描くことにしました(笑)」と話した通り、蜘蛛の周りには次々と雲が現れる。休憩が終わる頃にはステージの余白が埋め尽くされ、怪しくも艶やかな雰囲気が漂う中で2幕目が始まる。クライマックスで展開する、墨を用いた演出にも注目しよう。

「刺青 / TATTOOER」より。

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舞台挨拶には、兼島、河井、ASHIZAWA、NAKAGAWA、ド・ランクザン、蒼乃、東が登壇。「先ほど沖縄から東京に来たばかり」と明かす兼島は「いよいよ始まるんだなと実感しています。谷崎という“巨大な作品”を舞台化する、さらにイギリスでも上演するということで、『これはどうなるんだろう』という不思議な気分で始まったこのプロジェクト。テキストを書いているときは『これを現代でどう描くんだ』という難しさに向き合っていましたが、稽古が始まると、みんなでチームを組んで谷崎に立ち向かっている感覚になり、メンバーとの作品作りを楽しめました。このチームであれば、谷崎に『ウッ』と思わせられる作品になっていると思います」と自信を見せる。

「刺青 / TATTOOER」より。

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河井は「谷崎潤一郎の作品をイギリスで、そして今の日本で上演するにあたり、どうすれば我々が期待する観劇体験をお客様に提供できるのかを、クリエーションメンバー全員で探し続ける毎日でした」と振り返る。そして「小さなアトリエ春風舎と比べて、チャリングクロス劇場は規格の大きい劇場ですが、それぞれの空間に対して出演者やテクニカルチームが存在の仕方を変えていくので、お客様の鑑賞体験は大きくは変わらない。“谷崎とはなんだったのか?”というところをしっかり描けていればいいなと思います。ぜひ楽しんでください」と呼びかけた。

「刺青 / TATTOOER」より。

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清吉役のASHIZAWAは「清吉を演じる中で感じたのは、変わらないものはないということ。変わらないことが心地良く感じることもありますが、変わっていくことの“開放感”を皆さんにも感じてもらえたら」と話す。カズヨBを演じるNAKAGAWAは「イギリスと日本のそれぞれのお客さんの反応と、この作品を日本からイギリスに“留学”させることを楽しみにしています」とコメント。清吉の客を演じるド・ランクザンは「本作を通じて、日本の方も日本の新たな一面に気付くことがあるはず。イギリス公演には日本の大ファンの方だけでなく、初めて日本文化を知る人も訪れると思うので、楽しみにしています」と期待を込めた。

「刺青 / TATTOOER」より。

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カズヨAを演じ、ドラマトゥルクも担う蒼乃は「谷崎潤一郎の作品がもともと好きだったので、最初は生身の人間がやることについて、抵抗がありました。というのも、谷崎作品は“人を狂わせるような女性の美しさ”を物語の担保にしていることが多いですが、全員が『美しい』と思う人は実際には存在しないと思ったからです。ですがそこへ、兼島さんが視覚的な美しさ以外の、画期的な方法を持ってきてくれました。さまざまな出自の皆様とクリエーションする中で、美しさ以外を回答にしても良いんだなと実感しています」と今回の創作を振り返った。

上演時間は約1時間25分。日本公演は9月23日まで。イギリスでは10月14日から16日までプレビュー公演、18日から26日まで本公演が行われる。

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刺青 / TATTOOER

2024年9月20日(金)~2024年9月23日(月・振休) ※公演終了
東京都 アトリエ春風舎

2024年10月14日(月)~2024年10月26日(土) ※公演終了
イギリス チャリングクロス劇場

スタッフ

脚本:兼島拓也
演出:河井朗

出演

LEO ASHIZAWA / AKI NAKAGAWA / ド・ランクザン望 / 蒼乃まを

※イギリスでのプレビュー公演は10月14日から16日まで、本公演は18日から26日まで。

公演・舞台情報
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読者の反応

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河井朗 kawai hogara @hoga_p

無事『刺青/TATTOOER』の幕が日本で開きました。
指を真っ黒にしながら連日お客様を迎える準備をしています!

ステージナタリーさんの記事がとても丁寧に作品のことを書いてくださり嬉しいです。
皆様のご来場お待ちしております。 https://t.co/b2KHbnV4IN

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