10・11月上演の「
「セツアンの善人」は、第二次世界大戦中、ナチスにより市民権を剥奪されたドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトが、亡命先で執筆し1943年にスイスのチューリッヒで初演した作品。善人を探し出すという目的でセツアンの貧民窟に降り立った3人の神様たちは、水売りのワンに一夜の宿を貸してほしいと頼む。ワンは街中を走り回って神様を泊めてくれる家を探したが、その日暮らしの街の人々は、そんな余裕はないと断る。ようやく部屋を提供したのは、貧しい娼婦シェン・テだったが……。
「セツアンの善人」の台本を初めて読んだ印象について、葵は「読みやすく、クスッと笑える場面もあって面白いですが、“幸せ”とか“お金”とか、答えがないテーマが込められている作品だと感じました」とコメント。葵はシェン・テと、彼女が劇中で変装するシェン・テの架空の従兄シュイ・タの2役を務める。これについて葵は「ハードルを感じています」と明かし、「歌うシーンもあるので、女性であるシェン・テと、男性であるシュイ・タの歌の違いをどう表現できるかな?と考えています」「シュイ・タは、シェン・テが苦しんだ挙句に彼女の内面から出てくるキャラクター。2人のギャップを面白く見せたい」と語った。
葵は、お人好しな性格で神様からも“善人”として認められたシェン・テと、周囲には冷酷な人物だと評価されるシュイ・タの人物像を、それぞれ「シェン・テは恋愛に溺れる普通の女の子で、必死に生きようとしている点に魅力がある。ただ周囲に流されやすく、自己犠牲的なところが欠点でもあるので、一概に“良い人”とは言えないかも」「合理的で、言いにくいことを代わりにはっきり言うシュイ・タは、シェン・テのお助けキャラ(笑)。周りの人が言うほど冷たくてひどい人ではないと思います」と分析し、「どちらの人物にも共感できる部分があるので、感情移入しながら演じられそう」と意気込みを述べた。
初めてタッグを組む演出の白井晃の印象について、葵は「手がける作品の幅がとても広く、ご自身の世界を広げ続けている方というイメージです。作品の多様さはもちろん、多彩なキャストと作品を作られていて、常に新しい“扉”を開き続けていらっしゃる。ご一緒することで私自身の世界も大きく広がれば良いなと思います」と瞳を輝かせる。
またシェン・テが一目惚れする元パイロットの青年ヤン・スンを演じるのは、木村達成。2019年にミュージカル「ロミオ&ジュリエット」で木村と共演した葵は「この5年間、木村さんの活躍を拝見してきたので、再共演できてうれしい。お互いどのように5年間を歩んできたのか、お芝居を通じて感じられると思うので楽しみです」と笑顔を浮かべた。
取材会では作品のテーマにちなみ、葵が“幸せ”を感じる瞬間について話す場面も。葵は「お仕事をやりきって、達成感を感じながら家でお酒やご飯を楽しみつつ、アニメを観ているとすごく幸せ(笑)。あとは家族と会えるときはいつもうれしいですね」と明かし、「『セツアンの善人』のお稽古が始まったら必死になってしまうだろうから、幸せを感じる余裕があるかわかりません。でも振り返って『あのときあの作品に出られて幸せだったな』と思える舞台になる気がしています」と言葉に力を込めた。
「セツアンの善人」は、10月16日から11月4日まで世田谷パブリックシアター、9・10日に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールで上演される。
セツアンの善人
2024年10月16日(水)〜11月4日(月・振休) ※公演終了
東京都 世田谷パブリックシアター
2024年11月9日(土)・10日(日) ※公演終了
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
スタッフ
作:ベルトルト・ブレヒト
音楽:パウル・デッサウ
翻訳:酒寄進一
上演台本・演出:白井晃
訳詞・音楽監督:国広和毅
出演
演奏:磯部舞子(東京公演) / 島津由美 / 熊谷太輔 / 加藤優美(兵庫公演)
※東京公演では、高校生以下・U24の割引チケットあり。
※一部公演で視覚障害者のための舞台説明会および音声ガイド貸出、聴覚障害者のための字幕タブレット貸出あり。
※聞こえにくい方のための音声サポート(要申込)あり。
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