これは一つの家族の物語…上村聡史演出「My Boy Jack」東京で開幕

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上村聡史が演出を手がける「My Boy Jack」が昨日10月7日に東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて開幕した。

「My Boy Jack」より。(撮影:岡千里)

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「My Boy Jack」より。(撮影:岡千里)

「My Boy Jack」より。(撮影:岡千里)[拡大]

「My Boy Jack」は、「ジャングル・ブック」で知られるノーベル文学賞受賞作家のラドヤード・キプリングが、第一次世界大戦中に書いた詩。その詩をデイヴィッド・ヘイグが戯曲化し、1997年にイギリス・ロンドンで舞台版が初演された。

「My Boy Jack」より。(撮影:岡千里)

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第一次世界大戦下、健康な身体があるなら戦地へ行くべしと理想を語る父ラドヤードは、ひどい近視のために入隊できない息子のジャックを、人脈を使って軍にねじ込んだ。しかし日が経つにつれて母親と姉、そして父さえも、不安に苛まれていき……。

「My Boy Jack」より。(撮影:岡千里)

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開幕に際し眞島秀和は「『My Boy Jack』は、一つの家族の物語です。時間を経て日々変化していく家族を垣間見ることができる作品になっていて、それは演劇や映画が持つ魅力だと思っています。僕が演じるラドヤードは、早くに長女を亡くし、劇中では戦争で息子を失います。作品の難易度の高さから、最初は固い人物だと思っていたラドヤードですが、稽古を重ねていく中で、抗えないものがあったり、家族に対する愛情が深い父親なのだと感じ、実はとてもシンプルな話なのだと気づきました」と手応えを語る。

「My Boy Jack」より。(撮影:岡千里)

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倉科カナは「難易度が高く、理論的な戯曲なので、立体的にすることの難しさを感じましたし、国や価値観が異なる中で、私にとって初めての母の役。大きな子供を戦争に送り出す女性が想像できなくて、上村さんに託した部分も大きかったです」と述べつつ「いまの時代にこの戯曲を上演する意義を感じて、キャスト、スタッフ一同、精魂を込めて作ったので、まずは楽しんで頂いて。観終わった後にどう感じたか、感想をお待ちしています」と語る。

「My Boy Jack」より。(撮影:岡千里)

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前田旺志郎は「この作品にとって、“戦争”は重要なテーマですが、僕のなかで一番大きいのは“家族”です。ずっと一緒にいるようで、なんでも素直に言えるかといえばそうではない。一番近くにいる存在でも、すごく遠い部分もある。それが家族だと『My Boy Jack』を通して感じています」と述べ、夏子は「上村さんは、濃縮還元のように大切なことが詰まった演出をしてくださるので、稽古初日からここまであっという間でした。初めて劇場に入った時に、真っ黒な板の上に少ない小道具、役者としては試されるような気持ちにもなりましたが、芝居に没頭して観劇して頂ける空間になっていると思います。ぜひ劇場で、生でご覧ください」と観客にメッセージを送った。

上演時間は休憩を含む約2時間55分。東京公演は10月22日まで。本公演はそのあと28・29日に福岡・キャナルシティ劇場、11月3日から5日まで兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール、11日・12日に愛知・東海市芸術劇場 大ホールで行われる。

眞島秀和 コメント

「My Boy Jack」は、一つの家族の物語です。時間を経て日々変化していく家族を垣間見ることができる作品になっていて、それは演劇や映画が持つ魅力だと思っています。僕が演じるラドヤードは、早くに長女を亡くし、劇中では戦争で息子を失います。作品の難易度の高さから、最初は固い人物だと思っていたラドヤードですが、稽古を重ねていく中で、抗えないものがあったり、家族に対する愛情が深い父親なのだと感じ、実はとてもシンプルな話なのだと気づきました。本番を迎えて、父親として、妻や子供たちに対する愛情の持ち方は、回を終えていくごとに深くなっていくのだと思います。充実した稽古を経て、この作品の魅力をお客様に届けられる段階になり、あとは毎ステージを真剣勝負で重ねていくだけです。かなり見応えのある舞台なので、お楽しみ頂ければと思います。

倉科カナ コメント

難易度が高く、理論的な戯曲なので、立体的にすることの難しさを感じましたし、国や価値観が異なる中で、私にとって初めての母の役。大きな子供を戦争に送り出す女性が想像できなくて、上村さんに託した部分も大きかったです。ラドヤードは、戦争や名誉、栄光など、目に見えない漠然としたものを言葉にして、国も家族のように捉えている人。戦争が始まってもいない時期に、世間体を気にしてジョンを入隊させようとしますが、失うことの痛みをあまり理解していません。私が演じるキャリーは、人の痛みといった感覚に訴えることが多く、葛藤していたものが突然出てきたり、感情があちこちに行く女性です。家族の捉え方が異なり、対極の価値観を持つ2人のやりとりは魅力的で、お客様にどのように伝わるのか興味があります。いまの時代にこの戯曲を上演する意義を感じて、キャスト、スタッフ一同、精魂を込めて作ったので、まずは楽しんで頂いて。観終わった後にどう感じたか、感想をお待ちしています。

前田旺志郎 コメント

この作品にとって、“戦争”は重要なテーマですが、僕のなかで一番大きいのは“家族”です。ずっと一緒にいるようで、なんでも素直に言えるかといえばそうではない。一番近くにいる存在でも、すごく遠い部分もある。それが家族だと「My Boy Jack」を通して感じています。稽古前、ジョンは父親に対して反発心を抱いているのでは?と思っていましたが、ラドヤードのことは嫌いではないし、リスペクトも持っていて、フランクに話しができる。一見、仲がよさそうな普通の家族ですが、心の奥底で「これは本当の自分じゃない」とジョンは思っているんです。ただ、自分が理想とするものが本当のこととも限らないですし、そんな複雑さを持っているキャラクターなので、僕の中でも正解が見つかっていません。すごく難しいけれど、面白い部分だと思っています。キプリング家の4人と、ご自身の家族と重ね合わせて考える瞬間があれば、ジョンを演じている僕としては、とても嬉しいです。

夏子 コメント

イギリスのウィットに富んだ会話やセリフの応酬など、舞台ならではの魅力が詰まっていて、観る方によって視点が変わる作品です。劇中で描かれているのは、普遍的でどの家庭にも起こりうる出来事。家族を愛しているからこそ、エルシーは両親やジョンにストレートな物言いで接します。家庭環境に翻弄される部分はジョンと同じですが、自らの人生を歩む力を持っている人だと思います。上村さんは、濃縮還元のように大切なことが詰まった演出をしてくださるので、稽古初日からここまであっという間でした。初めて劇場に入った時に、真っ黒な板の上に少ない小道具、役者としては試されるような気持ちにもなりましたが、芝居に没頭して観劇して頂ける空間になっていると思います。ぜひ劇場で、生でご覧ください。

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「My Boy Jack」

2023年10月7日(土)~22日(日)
東京都 紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA

2023年10月28日(土)・29日(日)
福岡県 キャナルシティ劇場

2023年11月3日(金・祝)~5日(日)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

2023年11月11日(土)・12日(日)
愛知県 東海市芸術劇場 大ホール

作:デイヴィッド・ヘイグ
翻訳:小田島則子
演出:上村聡史
出演:眞島秀和倉科カナ前田旺志郎夏子佐川和正土屋佑壱小林大介

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兵庫県立芸術文化センター @gcenter_hyogo

【開幕コメント&舞台写真到着!】
11/3~11/5「My Boy Jack」
https://t.co/CgHYgEiuHX
東京公演開幕!
出演者のコメントと舞台写真が届きました!
これはイギリスのとある家族の物語。いつの世も親しい人を想う気持ちは変わらずそこにあります。
アフタートークも開催します!ぜひご来場ください。 https://t.co/jo89n7mEQ8

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