中村鷹之資「繋げていきたい」、五世中村富十郎の当たり役「船弁慶」にかける思い

「二月大歌舞伎」の第2部「新歌舞伎十八番の内『船弁慶』」に出演する中村鷹之資の取材が本日1月12日に東京都内で行われた。

本演目は五世中村富十郎十三回忌追善狂言として、五世富十郎の長男である鷹之資、中村扇雀、尾上松緑、中村又五郎の出演で上演される。「船弁慶」は踊りの名手として知られた五世富十郎が得意とした演目の1つで、鷹之資が前半では静御前の哀愁の舞を、後半では平知盛の霊の迫力を体現する踊り分けが見どころとなる。

鷹之資は公演に向けて、追善公演が行えることに感謝を示し、「父の生涯の当たり役であった『船弁慶』をさせていただけるということが嬉しく、本当にありがたいことだと感じております。昨年、自身の勉強会『翔之會』でこの役を勤めさせていただいてから、まさかこんなに早くまた勤めさせていただけるとは思っておりませんでした。ご出演いただける諸先輩方を始め皆様に感謝し、父を偲んで、一日一日を大切にひと月勤められればと思っております」と言い、1月3日の命日に「無事にひと月勤められるよう、ただただ見守ってくださいと父にお願いしました」と明かす。

五世富十郎に対して「芸に対する謙虚さ、真摯な姿勢をずっと持ち続けていて、舞台に向かっていく真剣さは幼い頃の自分も感じるほどのものでした。何事にも正直なところは自分も受け継いでいるように感じます」と振り返る鷹之資。「『船弁慶』は父が何十年もかけて研究し追い求めていった作品、私も一生をかけて自分の『船弁慶』を作っていきたいです」と言葉に力を込める。

今回、東京・歌舞伎座では2009年以来の「船弁慶」上演となる。鷹之資は「『船弁慶』という作品が新しくなった歌舞伎座では初めて上演されます。この作品がまた歌舞伎座でかかることが嬉しく、父が紡いできたものを自分も受け継いで繋げていきたいと思っています。父が愛したこの素晴らしい作品をぜひお客様に肌で感じていただきたいです」と意気込んだ。

公演は2月2日から25日まで。