市川猿之助、4月の出演作「天一坊大岡政談」「森の石松」に向けた意気込み語る

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「四月大歌舞伎」第1部「通し狂言 天一坊大岡政談 紀州平野村お三住居の場より大岡役宅奥殿の場まで」、猿之助と愉快な仲間たち 第2回公演「森の石松」に出演する市川猿之助の取材会が、本日3月18日に東京都内で行われた。

市川猿之助

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「四月大歌舞伎」チラシ

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猿之助は、東京・歌舞伎座にて4月2日から27日まで上演される「天一坊大岡政談」、東京・六本木トリコロールシアターにて4月13日から21日まで上演される「森の石松」の2作品に出演。「天一坊大岡政談」では、天一坊を初役で勤め、大岡越前守役の尾上松緑、山内伊賀亮役の片岡愛之助らと共演する。「森の石松」は、猿之助が主宰する演劇プロジェクト・プロデュースする猿之助と愉快な仲間たちの第2弾。現在歌舞伎座で上演中の「新・三国志」も手がける横内謙介が脚本を担い、猿之助が演出を務める。

後列左から市川猿之助、石橋正高、横内謙介。前列左から松原海児、穴井豪、下川真矢、市瀬秀和。

後列左から市川猿之助、石橋正高、横内謙介。前列左から松原海児、穴井豪、下川真矢、市瀬秀和。[拡大]

取材会には猿之助に加え、横内、「森の石松」の出演者である市瀬秀和、石橋正高、下川真矢、穴井豪、松原海児が出席した。猿之助は「天一坊大岡政談」で天一坊を演じることに「悪を演じるのは善よりも面白い」とニヤリと笑いつつ、「悪に魅力がないと、大岡越前守の善も際立たない。松緑さんに負けないよう、立ち向かいたいですね」と続けた。

市川猿之助

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さらに見どころを「顔合わせの妙ですね。(猿之助、松緑、愛之助の3人は)同年代なのですが、意外と共演する機会が少なくて。裁き裁かれ、だましだまされという内容で、僕は松緑さんに裁かれちゃうわけですが、役者同士の丁々発止のぶつかり合いを観てほしいですね」と語る。また天一坊は、猿之助の伯父である市川猿翁も1972年に演じていた。このことについて、「伯父が演じたときは、ふざけ倒していたと聞いています。(当時、大岡越前守を演じた十三世片岡)仁左衛門さんも激怒していたようです(笑)」と触れ、周囲の笑いを誘った。

横内謙介

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また「森の石松」について、猿之助が「本当に学生サークルのノリというか……あれよあれよという間に妄想が実現した」と述べると、横内は「去年の秋に猿之助さんから(公演をやりたいと)電話があって。でもそのときは妄想の段階で、劇場も抑えられていなかったんですが、私が知っている劇場がちょうどこの時期に空いているということで、上演に至りました。気がついたらチラシもできていて、脚本には私の名前が(笑)。(『森の石松』の台本は)『新・三国志』の初日が空いてから書きました。私の人生でも、こんなに急いで書いた台本は初めてです」と述べる。記者から執筆期間を問われると「実質5日くらい(笑)。ただ構想自体は30年前からあって。温めてきたものを、ここで使うしかないなと出しました。本作は、ある映画をモチーフに、『森の石松』を劇中劇として上演する、という入れ子構造になっています。あんまり詳しくは言わぬが花ですが、猿之助さんからは『(自分の)出番は少なくおいしくね』って言われています(笑)」と明かした。

市川猿之助

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横内の発言を隣で笑いながら聞いていた猿之助は、「森の石松」の見どころを「『新・三国志』に続き、石橋正次さんに出演していただくのですが、石橋さんが『夜明けの停車場』を歌う中で、大衆演劇の座長役の僕が踊る、というのが1つの見せ場ですね。また、毎回日替わりゲストが登場します。人脈はあるので(笑)、あっと驚く人を招きます」とほほ笑んだ。

記者から“演出家”としての猿之助の姿について問われると、市瀬は「指示を的確に言ってくださるので、わかりやすい」、石橋正高は「わからないことがあったら何でも教えてくださるし、教え方もうまい。ただ求める次元が高すぎて、教えてもらったことをやるのが難しい」、下川は「実際に見本を見せてくださる。曖昧なところがなく、どういう“画”を求められているかがわかりやすい」とコメント。また穴井は「早い、的確、奇想天外」、松原は「稽古場では優しく、怖い部分はない」と話す。横内は「ご自身が名優だから、役者としての存在感がまず際立ってしまいますが、演出家としてこんなに空間や音楽をわかっていらっしゃる方はいないな、と。また最新テクノロジーがどのように使われているかもよくご存知。それを歌舞伎的な技法と組み合わせることで、新しいものを生み出されている」絶賛した。

猿之助は「役者が役を習うのは当たり前ですが、僕が伯父から学んだのは、人の動かし方だったり、判断能力といった演出力。若手には、そういった部分を見て学んでもらって、自分で判断できるようになってほしい。早く僕を楽にさせてほしいですね(笑)。だって、連日稽古で一番最後まで残って、一番疲れた頃に初日が開くんですよ。その重責から開放されたい(笑)」と冗談交じりに述べながら、若手陣に温かい視線を送る。また猿之助と愉快な仲間たちのメンバーの条件について「芝居が好き、情熱がある、そして利害関係がない。最後のは、打算で付き合っていない、ということですね。『水滸伝』じゃないですけど、志を同じくする人が集う、自由な団体です。メンバーに定員もなければ、入会金もないです(笑)」と話した。

最後に記者から、猿之助と愉快な仲間たちの第3弾の構想を聞かれると、猿之助は「また横内さん書いて!」と横内に振る。これに対し、横内が「猿之助さんでミュージカルがやりたい」と答えると、猿之助は少し表情を曇らせる。そんな猿之助に横内が「(ミュージカル)お好きでしょう?」と聞くと、猿之助は「好きだけど歌えない……でも次はミュージカルです!」と宣言し、周囲を笑いで包んだ。

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「四月大歌舞伎」

2022年4月2日(土)~27日(水)
東京都 歌舞伎座

第1部

「通し狂言 天一坊大岡政談 紀州平野村お三住居の場より大岡役宅奥殿の場まで」

作:河竹黙阿弥

出演
大岡越前守:尾上松緑
山内伊賀亮:片岡愛之助
池田大助:坂東亀蔵
平石治右衛門:中村歌昇
下男久助:坂東巳之助
下女お霜:坂東新悟
近習金吾:市川男寅
近習新蔵:中村鷹之資
嫡子忠右衛門:尾上左近
藤井左京:市川青虎
名主甚右衛門:市川寿猿
お三:市川笑三郎
伊賀亮女房おさみ:市川笑也
赤川大膳:市川猿弥
僧天忠:市川男女蔵
吉田三五郎:中村松江
大岡妻小沢:市川門之助
天一坊:市川猿之助

第2部

一、「江戸絵両国八景 荒川の佐吉」

作:真山青果
演出:真山美保
補綴・演出:齋藤雅文

出演
荒川の佐吉:松本幸四郎
丸総の女房お新:中村魁春
お八重:片岡孝太郎
極楽徳兵衛:中村亀鶴
大工辰五郎:尾上右近
櫓下の源次:大谷廣太郎
あごの権六:中村吉之丞
茶屋女房おかつ:中村歌女之丞
白熊の忠助:嵐橘三郎
鍾馗の仁兵衛:松本錦吾
隅田の清五郎:市川高麗蔵
成川郷右衛門:中村梅玉
相模屋政五郎:松本白鸚

二、「義経千本桜 所作事 時鳥花有里」

出演
源義経:中村梅玉
鷲尾三郎:中村鴈治郎
白拍子園原:中村壱太郎
白拍子帚木:中村種之助
白拍子伏屋:中村米吉
白拍子雲井:中村虎之介
白拍子三芳野:中村扇雀
傀儡師輝吉:中村又五郎

第3部

一、「ぢいさんばあさん」

原作:森鷗外
作・演出:宇野信夫

出演
美濃部伊織:片岡仁左衛門
下嶋甚右衛門:中村歌六
宮重久右衛門:中村隼人
宮重久弥:中村橋之助
久弥妻きく:片岡千之助
戸谷主税:片岡松之助
石井民之進:片岡亀蔵
山田恵助:河原崎権十郎
柳原小兵衛:坂東秀調
伊織妻るん:坂東玉三郎

二、「お祭り」

出演
芸者:坂東玉三郎
若い者:中村福之助、中村歌之助

猿之助と愉快な仲間たち 第2回公演「森の石松」

2022年4月13日(水)~21日(木)
東京都 六本木トリコロールシアター

脚本:横内謙介
演出:市川猿之助
出演:市瀬秀和、石橋正高、下川真矢、穴井豪、松原海児 / 市川猿之助、石橋正次 ほか

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※初出時、人名に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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