「Home,I'mDarling」開幕、1950年代を愛する主婦を演じる鈴木京香「がんばるぞぉ！」

「Home,I'mDarling～愛しのマイホーム～」が、昨日10月20日に東京・シアタークリエで開幕。ステージナタリーでは、初日公演の模様をレポートする。

「Home, I'm Darling」は、イギリスの劇作家ローラ・ウェイドによる戯曲。本作は2018年にイギリス・ナショナルシアターで初演、翌2019年にウェストエンドで上演され、2019年度のローレンス・オリヴィエ賞でベスト・ニュー・コメディ賞を受賞した。日本初演となる今回は、白井晃が演出を担当。出演者には鈴木京香、高橋克実、江口のりこ、青木さやか、袴田吉彦、銀粉蝶が名を連ねた。

劇中では現代のロンドン近郊を舞台に、1950年代のライフスタイルを愛する専業主婦のジュディ（鈴木）と夫のジョニー（高橋）を中心とした物語が展開。ジュディは3年前に職を失って以来、心機一転、愛する夫のために完璧な主婦になることを決意していた。その生活を維持するために出費がかさみ、家計は火の車であることをジョニーはまったく知らない。ある日ジュディは、夫の新しい上司アレックス（江口）を自宅に招き、1950年代風のもてなしでジョニーの昇進を手助けしようとする。しかし若いアレックスとジュディの話はかみ合わず、ジョニーの昇進は別の社員に奪われ……。

幕が上がるとまず、1950年代をイメージしたカラフルなインテリアが観客の目に飛び込んでくる。楽しげな音楽が流れる中、鈴木扮するジュディはキッチンで朝食の準備をし、高橋扮するジョニーは「Ideal Home」というポスターがかかった寝室で朝の身支度をしている。やがて朝食のテーブルについた夫婦は仲むつまじい様子を見せるが、「身の毛がよだつほど幸せ！」と笑顔で口にする姿は、これから2人に降りかかる困難を予感させた。

場面転換中は、俳優たちが音楽に合わせて軽快なダンスやステップを披露し、物語に華を添える。また舞台上には丸みを帯びたテレビや、レトロなデザインの冷蔵庫などが設置され、家の住人が1950年代に並々ならぬこだわりを持っていることを感じさせた。女性が生きにくかった古い時代にあこがれる妻と、仕事がうまくいっていない夫は、家庭崩壊の危機に直面したことで、秘めていた思いをさらけ出していく。

ジュディ役の鈴木は美しいドレスのフレアスカートを揺らし、軽やかに舞台上を動き回る。鈴木は夢見るような語り口でジュディをコミカルに演じながら、ふとした瞬間に見せる思いつめた表情から、空想上の1950年代に閉じこもって現実から目を背けようとする彼女の切実さを浮かび上がらせた。ジョニー役の高橋は、鈴木とテンポの良いかけ合いを繰り広げて観客を笑わせる。また困ったような笑顔を浮かべ、妻思いの好人物だが押しの弱い夫像を描き出した。さらにアレックス役の江口は、シャープなシルエットのパンツスーツを着て颯爽と登場。冷静な口調で1950年代の問題点を指摘し、アレックスをジュディと対照的な人物として立ち上げた。

このたび、初日を迎えたキャストたちからコメントが到着。江口は「面白くするぞぉ！と思っています」と意気込み、続く高橋は「楽しくするぞぉ！と思っています（笑）」とコメント。さらに鈴木は「『楽しかったね』と帰っていっていただける舞台になるように……がんばるぞぉ！」と思いを語った。

上演時間は25分の休憩を含む約2時間55分。東京公演は11月7日まで行われ、その後28日まで兵庫・大阪・愛知・山形・岩手・宮城を巡演する。