「こつこつプロジェクト ─ディベロップメント─」第2期の1st試演会が7月から8月にかけて行われた。
「こつこつプロジェクト ─ディベロップメント─」は、東京・新国立劇場演劇芸術監督の小川絵梨子が立ち上げた、作品創造プロジェクト。1年間、3・4カ月ごとに試演を重ね、上演作品がどの方向に育っていくかを見極めていく。今年4月に始動した第2期には
モーリス・パニッチ作「7ストーリーズ」を演出する福山は、「4月から月に3、4日、翻訳の調整をしながら徹底した脚本解釈と読み込みをしていますが、一つ一つの台詞に一言一句、全員で向かい合うことで、既にそれぞれの役者の持つ多様性が役に現れつつあり、5人の出演者ではなく、そこには13人の『新しい人間』が存在しています。『もっと時間が……』のない域まで行くのがとても楽しみです」と期待を寄せる。
ソフォクレスの原作をもとにした「テーバイ」に挑む岩船は「芸術ジャンルの中で演劇は発案から観客の目に届くまでに時間がかかるジャンルだと思うが、それでも創造のプロセスの特性上、刻々と変化する時代状況に即応できる柔軟性は持ちにくい、しかし今回の企画ではその時間がかかる演劇の自明性を逆手にとって、存分に今日を考える機会になった」と手応えを述べ、さらに三好十郎の「夜の道づれ」を演出する柳沼は「三好作品の大きなテーゼ『今をいかに人間らしく生きるのか』。2ndはその命題の源泉である『生きづらさ』を、いかにして現代の観客と共有できるのかを演出的に検証したいと考えています」と意気込みを語った。
「こつこつプロジェクト ─ディベロップメント─」第2期では、10月から12月にかけて2nd試演会、来年2月ごろに3rd試演会が行われる予定だ。
福山桜子コメント
稽古が好きです。地球上に存在していなかった「新しい人間」を生み出す作業は、想像と創造の面白みが詰まっています。ですが時間はいくらあっても足りない。本番前は必ず「もっと時間があれば……」という思いが浮かびます。しかし、こつプロでは1年かけて稽古ができるので、出演者5人のうち4人が「三役」演じる翻訳物にトライしてみました。三つの役を生きるのは通常の役作りに比べて当然3倍の時間が必要であり、また、瞬時に切り替える稽古が必要になる。翻訳物に必要な、文化背景も含めて落とし込む時間や、日本語として成立したリアルな会話の追求する時間も必要です。こつプロでは、その稽古をする時間がある。とても贅沢。4月から月に3、4日、翻訳の調整をしながら徹底した脚本解釈と読み込みをしていますが、一つ一つの台詞に一言一句、全員で向かい合うことで、既にそれぞれの役者の持つ多様性が役に現れつつあり、5人の出演者ではなく、そこには13人の「新しい人間」が存在しています。「もっと時間が……」のない域まで行くのがとても楽しみです。
船岩祐太コメント
我々「テーバイ」チームは1stでは、ソフォクレスの原作を中心に新たに上演するに相応しいギリシャ悲劇の台本作成を目的とした稽古を行った。紀元前に書かれた古典を読み直す事は、古くから伝わる物語の中に今日を発見する作業だ。芸術ジャンルの中で演劇は発案から観客の目に届くまでに時間がかかるジャンルだと思うが、それでも創造のプロセスの特性上、刻々と変化する時代状況に即応できる柔軟性は持ちにくい、しかし今回の企画ではその時間がかかる演劇の自明性を逆手にとって、存分に今日を考える機会になった。また俳優と単語の一つ一つを追求する作業を経てできた「台詞」達は実に意味深長な響きを得る事が出来たのではないかと思う。
柳沼昭徳コメント
「歩く」という基本的な行動を稽古場で行いながら、三好十郎ならではともいうべき長尺の会話や思弁をどう関連・分離させつつ、舞台表現に仕立ててゆくのか。1stではその可能性を検証しました。14日間、本読みや立ち稽古もさることながら、一般的に演出の役割とされがちな作品の文脈づけといった礎を、参加された俳優たちとの多くの対話のなかで掘り下げられたことは、時間と予算の制約の多い日常の「稽古」では得られない豊かさと発見がありました。三好作品の大きなテーゼ「今をいかに人間らしく生きるのか」。2ndはその命題の源泉である「生きづらさ」を、いかにして現代の観客と共有できるのかを演出的に検証したいと考えています。
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