全国共同制作オペラ「團伊玖磨 / 歌劇『夕鶴』(新演出)」の記者会見が、本日9月28日に東京・東京芸術劇場にて行われた。会見には演出を手がける
本公演は、團伊玖磨による歌劇「夕鶴」を、岡田の新演出で立ち上げるもの。本作に向けて岡田は「オペラの演出というのは何をすることなのかを見つけたいと思っています」と言い、その理由として「オペラでは物語や登場人物の描写、内面を音楽がすべて表していて、演出がそこに何かをする必要はないと思っています。では代わりに何をすればいいのか。それを今回のクリエーションを通して見つけられたら」と話す。また今回のコンセプトとして「オペラを含めた演劇の上演は観客に対して行われるもの。つまり現在の観客に突きつけたいと考えたとき、僕は、この『夕鶴』という作品が持っているポテンシャルをできるだけむき出しにして突きつけたい、それにはつうに変わってもらおうと考えたんです。『夕鶴』は、イノセントな存在であったつうが、資本主義にズブズブになっていく与ひょうたちによって資本主義に絡め取られていく物語。しかしつうをイノセントな存在、つまり資本主義というシステムの前にいる状態ではなく、ポスト資本主義にいる存在として描き、資本主義を乗り越えた存在であるつうが、我々にその問題を突きつけてくる、という形で今回は作品を立ち上げたいと思っています」と説明した。
鈴木は「指揮者が2人いるオペラプロジェクトも珍しいので、今回はそれを生かした作品作りにしたい」と述べつつ、「岡田さんの仕事ぶりは何か決まったことをやるというより、チーム全体で作っていく形。みんなの思う『夕鶴』がここから立ち上がっていくのではないでしょうか」と期待を述べる。辻は「『夕鶴』は團伊玖磨先生がご存命の間、作曲家の意志のもとで何度も上演された作品。それを今回、21世紀版として新しい試みで上演するのはとてもチャレンジ精神のあることだなと。しかも奇をてらったものではなく、現在の私たちにすんなりと入ってくるものになるのではないかと思います。ご覧になる方には、登場人物の4人を通して社会の縮図が見えてくるのでは」と語った。
続けてキャストがあいさつ。つう役の小林は「いつかつう役を演じたかった」と言い、これまでさまざまなプロダクションの「夕鶴」を観てきたと話す。「でも、これまで膨らませてきたイメージを1回すべてなくし、ゼロから作り上げていかないといけないなと思っています。これまで先輩方がされてきた『夕鶴』を踏まえて、現代の私たちが新しい視点で観た『夕鶴』の本質をどう届けていけるか。岡田さんのもと、このメンバーでしかできない『夕鶴』をお届けできることを楽しみにしています」と熱い思いを語った。与儀は「岡田さんは動きをつけるだけでなくディスカッションでクリエーションを進めていく」と稽古の様子を明かし、「自分が演じる与ひょうだけでなく、ほかの役にも興味が湧いてきて、毎回驚きや発見がいっぱいです。2人のマエストロの音楽解釈と、岡田さんの提案に何とか食らいついて、良い舞台をお届けしたい」と意気込みを語った。
ダンサーとステージングで参加する岡本は「『夕鶴』にはもともとダンスのシーンはないのですが、岡田さんとお話をする中でなるほどな、と。ダンサーはおそらく、つうやキャストの皆さんが表現できないところ、つかみどころがないようなところを担うことになるのではないかと思います。また、子供たちへのステージングも担当しているのですが、岡田さんとイメージを共有していたことがどんどん実際に立ち上がっていく様にワクワクしています。岡田さんの演出には私たちを夢中にさせてくれるところがありますので、皆さんと一緒にクリエーションをさらに深めていければ」と笑顔で語った。
全国共同制作オペラ「團伊玖磨 / 歌劇『夕鶴』(新演出)」は10月30日に東京・東京芸術劇場 コンサートホール、来年1月30日に愛知・刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール、2月5日に熊本・熊本県立劇場 演劇ホールで上演される。
全国共同制作オペラ「團伊玖磨 / 歌劇『夕鶴』(新演出)」
2021年10月30日(土)
東京都 東京芸術劇場 コンサートホール
2022年1月30日(日)
愛知県 刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
2022年2月5日(土)
熊本県 熊本県立劇場 演劇ホール
指揮:辻博之(東京公演)、鈴木優人(愛知・熊本公演)
演出:
キャスト
つう:小林沙羅(ソプラノ)
与ひょう:与儀巧(テノール)
運ず:寺田功治(バリトン)
惣ど:三戸大久(バスバリトン)
ダンス:
管弦楽:ザ・オペラ・バンド(東京公演)、刈谷市総合文化センター管弦楽団(愛知公演)、九州交響楽団(熊本公演)
子供たち:世田谷ジュニア合唱団(東京公演)、アイリス少年少女合唱団(愛知公演)、NHK熊本児童合唱団(熊本公演)
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