第13回小田島雄志・翻訳戯曲賞の贈呈式が、本日4月23日に東京・あうるすぽっとの公式YouTubeチャンネルで生配信された。
小田島雄志・翻訳戯曲賞は、海外戯曲の優れた翻訳上演を顕彰するため、翻訳者及び上演団体に贈呈される賞。今回は李ボラム作、
高野之夫豊島区長の挨拶のあと、本戯曲賞の実行委員で、翻訳家の小田島恒志が贈呈理由を説明。まず、沈による「少年Bが住む家」翻訳について「候補作の中でずば抜けていた。犯罪加害者の家庭という、特殊な状況でのヒリヒリした空気感が、非常に自然な日本語で書かれていて、翻訳家として嫉妬も覚えました」と語った。また、
続いて、受賞者のスピーチで沈は「外国人の受賞が初めてと聞き、光栄です。『少年Bが住む家』は、これからもこの仕事を続けていける、と勇気をもらった作品。日本語のネイティブではない翻訳者として、翻訳に楽しさよりもつらさを感じていたこともありましたが、こういった大きな賞を受賞できたことは、励みになります。がんばって続けていけば、また素晴らしい作品に出会い、もっと良い翻訳者になれるのではないかと希望を持つようになりました」と喜びを語った。
浅田は「メアリ・スチュアート」の上演が森の提案だったと語り、「戯曲を一読して、今やらねばならない作品だと感じました。人物造形が深く描かれ、心を動かされるような、ありとあらゆる群像がうごめいていて……森さんに『すぐ上演しましょう』とお伝えし、キャスティング、スタッフィングに取りかかりました」と上演決定の経緯を明かした。
会場では、浅田が森のコメントを代読。森は「冒険的な試みに、前のめりに参加してくれたすべてのキャスト、スタッフの皆さん、熱情あふれる素晴らしい翻訳を私たちに遺してくださった、演劇集団 円の安西徹雄さんに、改めて敬意を表したい」と謝辞を述べ、「このたびの賞が、世田谷パブリックシアターにもたらされたということが、私にとっては大きな喜びです。シラーが描いた、400年前のイギリスの権力闘争、その醜さや空しさは、驚くほど現代と重なるものでした。今の私たちの姿を静かに見つめ直せる場として、今後も世田谷パブリックシアターが機能し続けることを願ってやみません」とコメントした。
一方、鵜山は2009年に行われた「シェイクスピア歴史劇」シリーズの初回稽古を振り返り、「『この先どうなるんだろう』と思いながら読み合わせを始めたら、33人の出演者の個性的な声が聞こえてきて、『大丈夫だな』と確信したことを今でも思い出します。手前味噌ではありますが、日本の現代演劇の蓄積をその場で実感することができた」と話す。また、本シリーズを翻訳した小田島雄志について「僕の頭の中のシェイクスピアは、小田島雄志さんの顔にかつらを被せたようなイメージで(笑)。1970年代からずっと、翻訳を通じてずっと寄り添っていただいた。ですので、小田島先生にも『おめでとうございます』『ありがとうございます』の気持ち」と笑顔を見せた。
なお、本日配信された内容を一部編集したアーカイブ版が、同チャンネルで後日公開される。公開については続報を待とう。
関連する特集・インタビュー
第13回小田島雄志・翻訳戯曲賞
・沈池娟(「少年Bが住む家」の翻訳に対して)
・世田谷パブリックシアター(「メアリ・スチュアート」の上演に対して)
特別賞
・「シェイクスピア歴史劇」シリーズ(2009年10月「ヘンリー六世・三部作」から2020年10月「リチャード二世」に至る「シェイクスピア歴史劇」シリーズの上演に対して)
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那須佐代子 @sayokonasu
新国立劇場のシェイクスピアシリーズがいただきました!
小田島雄志・翻訳戯曲賞贈呈式で沈池娟・鵜山仁ら謝辞述べる、森新太郎のコメントも https://t.co/x8PA8S3rRn