十月大歌舞伎「京人形」で中村七之助「芝翫のおじと会うのは京人形の箱を開けたとき」

「十月大歌舞伎」の取材会が昨日10月7日に東京・歌舞伎座で行われた。

取材会には「十月大歌舞伎」第1部「銘作左小刀 京人形」に出演する中村七之助がスーツ姿で登壇。記者たちの質問に答えた。

七之助が出演する「銘作左小刀 京人形」は、名工左甚五郎を題材にした華やかな舞踊劇。花魁の小車太夫が忘れられない彫物師・左甚五郎は、生き写しの京人形を作り、眺めていた。するとある日、京人形が動き出す。最初は男のような立ち居振る舞いをする京人形だったが、太夫の鏡を懐に入れられると、女らしく動き出し……。

七之助は作品の見どころについて「やはり華やかで明るい舞台です。最後に面白い立廻りもありますし、それぞれの役の衣装も華やかでいろいろな役が出ますので、内容もわかりやすく、初めてご覧になる方にもわかりやすいと思います」と説明。また、木彫りの人形である京人形の精を勤めることについては「本当に難しい」と告白したうえで、「毎日さまざまな演じ方を試していて、昨日は木からだんだん人間になるようにしてみました。今日は若干いつもより木を多めでやりました。まだまだいろいろなことを試してみたいと思います」と役への取り組みを語った。

歌舞伎座は8月から公演再開を果たしたが、「10月公演の今現在まで公演が続けられていることは本当に素晴らしいことだなと思います。正直、8月は無事に千秋楽が迎えられるとは思っていませんでしたが、千秋楽を迎えたときには、本当にみんなでその喜びを噛み締めましたね」と振り返る。

また、歌舞伎座の徹底した感染症対策に触れ、「1人も陽性者を出さずにここまで公演を続けているということで、今は自信を持って劇場に来てください、と言うことができます」と胸を張る。「八月花形歌舞伎」では舞台関係者に微熱が発覚したことから、自身が出演する第3部「義経千本桜 吉野山」が一部公演中止となった。その経験から「コロナに感染していなくても、微熱すら出せないのだ」と認識したと言い、「体調管理はとても気を付けています。楽屋での挨拶もありませんし、そもそも楽屋内でもほかの共演者との接触を減らしているので、今月だと（中村）芝翫のおじと会うのは、上演中に舞台上で京人形の箱を開けたときに初めて『おはようございます』という感じです（笑）。ご挨拶は本当に染みついたものですので、いまだになんだか不思議な気持ちです」と話す。

七之助は去る9月27日に、「中村勘九郎 中村七之助 歌舞伎生配信特別公演」に出演。同作は中村屋一門にとって7月以来となる配信公演で、東京・浅草寺 五重塔の特設舞台で「連獅子」が披露された。配信公演に対する実感を「私は生の舞台が好きですが、やはりこういった時世になり、配信ということも視野に入れて、両立していかなければいけないのかなと思いました」と言う七之助。だが、「家に帰ってチャットを見返したら、本当に泣きそうになりました。生の舞台だとそういったことはできませんが、今思ったことをチャットで書き込めるというのは、とても良いことだと、やってよかったなと思いました」としみじみと語り、会見は終了した。

「十月大歌舞伎」は10月27日まで。第1部には七之助のほかに、中村芝翫、市川門之助、坂東新悟、中村福之助、中村松江が出演。そのほか、第2部では「双蝶々曲輪日記 角力場」、第3部では「梶原平三誉石切 鶴ヶ岡八幡社頭の場」、第4部では坂東玉三郎による「映像×舞踊 特別公演」が上演される。