「紅天女」は、1976年にスタートしたマンガ「ガラスの仮面」の劇中劇。大女優・月影千草のみが主役を演じることができる“幻の名作”として登場し、北島マヤと姫川亜弓が「紅天女」の主役の座を競い合う物語が展開する。
歌劇「紅天女」では原作・脚本・監修を美内が務め、作曲を寺嶋民哉、総監督を郡愛子、演出を馬場紀雄、指揮を園田隆一郎が担当。阿古夜×紅天女役は小林沙羅と
美内と20年来の知己だという総監督の郡は、1995年頃、ある舞踏家の「『紅天女』を踊りたい」という申し出をきっかけに美内が詩を書き、寺嶋が「紅天女」をテーマにした楽曲を作ったことを振り返りながら、「2017年の『ガラスの仮面』原画展で、そのCDが復刻された。そのとき美内さんに『オペラにするしかないでしょ』と言ったら『それもそうよね』と」とオペラ化の経緯を明かす。またタイトルに冠した“スーパーオペラ”については「今までになかった新しいオペラの誕生ということで、スーパーオペラと付けさせていただきました」と宣言した。
美内は「ガラスの仮面」40巻で詳しく「紅天女」の物語を描きながら結末を描いていないことに触れ、「全部見せるのはよくないのではと、わざと封印した」と話す。「紅天女」の台本を20数年前に書き上げていたと言う美内は、「地震や災害に関係するセリフをいっぱい書いていましたが、日本のあちこちで災害が起こる現状で、それをそのまま出していいのかと考えてしまって……でも、今回の歌劇『紅天女』で全部書きました。マンガが出る前にネタばらしになってしまうのでドキドキしますが、歌劇を観ていただいて、物語をマンガでも読んでいただけたら」と、「紅天女」のストーリーがラストまでわかるという旨の発言が。さらに美内は「マンガでは多少変わるところがあると思いますが、歌劇でラストまでほぼ見せます」と述べ、オペラ版ではマンガより一足早く「紅天女」の全貌が明かされることがわかった。
阿古夜 / 紅天女役を務める小林は「『ガラスの仮面』は私にとって大事な作品」と“原作愛”を語り、台本を読んだ感想を「今までは『ガラスの仮面』の中の作品として『紅天女』をとらえていましたが、『紅天女』は劇中劇の枠を超えて新しい古典になると確信しました」と話す。阿古夜と紅天女の両方を演じる難しさについては、「1人2役なのかと思いきやそうではなく、勾玉の陰陽のようにくっついている。台本を読んで、『ガラスの仮面』がとても長く続き、でも誰が紅天女役をやるか月影先生が決められない理由がわかりました」と所感を述べた。
もう1人の阿古夜 / 紅天女役の笠松は、15歳から「ガラスの仮面」のファンだと言う。劇団四季出身で、普段は演劇やミュージカルに出演している笠松は「今回は、言ってみれば畑違いではありますが」と前置きしつつ、「私は『ガラスの仮面』と出会った15歳で声楽を始めたので、愛してきたものが1つになったように感じます。紅天女はとても難しくてプレッシャーを感じますが、歌の力を借りて演じることができる。畑違いの私だからできる表現を目指して励みます」と言葉に力を込めた。
美内はオペラの2チーム編成がマンガとシンクロしていることについて「びっくりしました! 笠松さんと小林さんのお2人が並んだ写真を見て『え、どっちがマヤ、亜弓!?』って」と、勘違いしてしまったことを笑い交じりに明かす。さらに「ガラスの仮面」50巻の進捗については「描き下ろしのような状態で進めているものですから、単行本で出すときは『これ以上描き変えないぞ』というところまで煮詰めるんです。でも描き進めていますので、お待ちください」と期待を煽った。
日本オペラ協会公演 スーパーオペラ 美内すずえ原作『ガラスの仮面』より歌劇「紅天女」 新作初演
2020年1月11日(土)~15日(水)
東京都 Bunkamura オーチャードホール
原作・脚本・監修:
作曲:寺嶋民哉
総監督:郡愛子
指揮:園田隆一郎
演出:馬場紀雄
特別演出振付:梅若実玄祥
キャスト
阿古夜 / 紅天女:小林沙羅、
仏師・一真:山本康寛、海道弘昭
帝:杉尾真吾、山田大智
伊賀の局:丹呉由利子、長島由佳
楠木正義:岡昭宏、金沢平
藤原照房:渡辺康、前川健生
長老:三浦克次、中村靖
お豊:松原広美、きのしたひろこ
楠木正勝:斎木智弥、曽我雄一
こだま:飯嶋幸子、栗林瑛利子
しじま:古澤真紀子、杉山由紀
お頭:普久原武学、龍進一郎
お滝:鈴木美也子、佐藤恵利
久蔵(旅芸人):馬場大輝、望月一平
権左(旅芸人):嶋田言一、脇坂和
クズマ:照屋篤紀、清水実
合唱:日本オペラ協会
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
石笛:横澤和也
二十五弦筝:中井智弥
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