三浦基が最新作を語る、「太宰治のイメージから“グッドバイ”する作品に」

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地点の最新作「グッド・バイ」が、12月13日から16日まで京都・京都芸術センター、12月20日から27日に東京・吉祥寺シアターにて上演される。それに先駆け、本日12月3日に吉祥寺シアターにて、演出を手がける地点主宰の三浦基が合同取材に応じた。

三浦基

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本作は太宰治の遺作にして未完の小説「グッド・バイ」をモチーフに、晩年の太宰作品をコラージする地点の新作。空間現代が音楽を手がけ、舞台美術を杉山至、衣装をコレット・ウシャールが担当する。まず三浦が企画意図について説明。「太宰治の小説を取り上げるのは3度目になります。『トカトントンと』では子役、『駈込ミ訴ヘ』ではオペラ歌手と、太宰作品では毎回、外側のエキスを入れてきましたが、今回は空間現代とやることに。空間現代とは6作目になりますが、空間現代と吉祥寺シアターで作品を上演することは初めてなので、すごく楽しみです」と思いを語る。

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作品選びについては「ライフワークとしてチェーホフやブレヒト、イェリネクなどヨーロッパやロシアの翻訳劇を中心にしていますが、日本の作家では太宰や松原俊太郎を除いては、新聞だったり大日本帝国憲法をモチーフにしてきました。今回企画を考えるうえで、お客さんの反応はやっぱり翻訳ものより日本の作家の作品のほうがいいし、それなら日本の作家でやってみようということになったのですが、やってみたい劇作家が……正直、いないんです。で、小説家から考えることにしたのですが、企画会議で挙がってきたのが太宰だった。そこで改めて読んでみたら、ユーモア小説というか戦争や天皇、キリストというようなテーマになることがまるで出てこなくて、昔付き合った女たちとただただ居酒屋に行き、呑んでばっかりいる“何も書いてない”作品だなと(笑)。未完だから好きにできるという思いもあり、『グッド・バイ』にしました」と冗談を交えながら語る。

三浦にとって太宰は「ゆかりの作家」だと言い、「思春期を太宰の小説と共に過ごしていますし、太宰の文庫だけはずっと持ち続けて来た身近な存在」と語る。また「戦中戦後を通して作品を書き続けてきたという点で、太宰はトップに上がる作家だろうという評価はしています。それと、“青春”をまともに扱った作家だとも思っていて。右左上下関係なく、『自分がなぜここにいるのか』という根本の問題に向き合った作家。そういう作家だからこそ太宰は今でも人気だし、嫌われ者でもあるのだと思います(笑)」と続ける。さらに「これまでもほかの作品を作りながら『太宰だったらこれをどう見るのかな』と考えながら創作してきた」と太宰から大きな影響を受けていることを明かした。

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具体的な創作については「『グッド・バイ』を入り口に、戦後から死ぬまでの晩年の作品を中心にコラージュして作っています」と三浦。「全集を開きつつ、例えば“愛、戦争、酒、東京”など、あるキーワードで一括検索するんです。そうやって集まってきた文章を少しずつ寄せ集めて作品にしていく。太宰作品は、著作権フリーで青空文庫に全部上がってるんですよね。だから稽古中に『このセリフはちょっと違うものにしてみたい』となったときに、俳優がさっとスマホで検索して、“それなりのセリフ”をさっとしゃべるんです(笑)。太宰は没後70年になるそうですが、作家の言葉をありがたがって取り扱うのとは別の距離感で今、接している。その感覚は面白いです」と創作の様子を語った。

また三浦は太宰を「津軽出身でありながら非常に東京的な作家」と語り、「戦中から敗戦にいたるまで、東京を内側から俯瞰している作家なのでは。その点で、東京から京都に拠点を移した地点と、京都にライブハウスを構えた空間現代という、東京を通過してきた2つの団体が太宰をやるということ、さらに吉祥寺という太宰のゆかりのある土地でそれが上演されることは非常にアクチュアルで面白いと思う」と、空間現代との取り組みについても言及する。空間現代には「壮大なテーマを扱うのではなく、軽妙なカフェバーみたいな感じの音楽、アンニュイなけだるい感じの音楽を発注しています」と述べ、「空間現代は真の協働者というか、面白く作業ができる相手。今回はコンサートを聴きに来るようなつもりで来られてもいいのではないでしょうか」と提案する。さらに衣装のコレット・ウシャールと舞台美術の杉山には「新潮日本文学アルバム」を資料として提示したと言い、その白黒写真からイメージしたシンプルな黒と白の世界観が、衣装と舞台美術のベースとなる。

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三浦は、太宰と演劇の親和性についても語り、「太宰は太宰治という架空の人物、さらには本名の津島修治自身さえをも“演じる”ことで、世界を見つめようとしていた作家なのではないか」と分析。そのうえで「誰もが太宰治であり太宰治ではないというような感覚が持てるようになると、太宰治という固有名詞が持っているイメージから我々も“グッドバイ”できるのではないかと。なので今作の隠れテーマとして、『さよなら太宰』ということがあります。太宰を神格化することから“グッドバイ”して、我々の身近なものとして太宰を捉え直す。宗教とか天皇といった高尚な思想で死ぬのでも、『漠然とした不安』で死ぬのでもなく、大きな問題は何もないけれど、生きることに力尽きて、目の前に酒しかないというような、そういうぼやっとした状態で死んでしまった作家も日本にいたのだと。そういう形で太宰を捉えられないかと考えています」と作品の核を語った。

最後に三浦は「年末に吉祥寺で上演するということが大切」と強調し、「内容的には酒瓶をずっと掲げているような作品ですし(笑)、音楽劇でもあるので、忘年会のようなつもりで観に来ていただけたら」と笑顔を見せた。なお24日終演後には、空間現代によるミニライブも開催される。

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地点「グッド・バイ」

2018年12月13日(木)~16日(日)
京都府 京都芸術センター 講堂

2018年12月20日(木)~27日(木)
東京都 吉祥寺シアター

原作:太宰治
演出:三浦基
音楽:空間現代
出演:安部聡子石田大小河原康二窪田史恵小林洋平田中祐気、黒澤あすか

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読者の反応

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大久保ゆう @bsbakery

「太宰作品は、著作権フリーで青空文庫に全部上がってるんですよね。だから稽古中に『このセリフはちょっと違うものにしてみたい』となったときに、俳優がさっとスマホで検索して、“それなりのセリフ”をさっとしゃべるんです(笑)。」
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